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プリオサウルス類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
プリオサウルス類
Pliosauroidea
生息年代: ヘッタンギアン - チューロニアン, Hettangian–Turonian
Liopleurodon ferox の組立骨格。テュービンゲン・古生物学研究所
地質時代
前期ジュラ紀 - 後期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
階級なし : 双弓類 Diapsida
階級なし : 鰭竜類 Sauropterygia
: 首長竜目 Plesiosauria
亜目 : プリオサウルス亜目 Pliosauroidea
学名
Pliosauroidea
Welles1943
和名
プリオサウルス類
下位分類群

本文参照

プリオサウルス類(プリオサウルスるい、プリオサウルス亜目学名Pliosauroidea )はジュラ紀の最初期から後期白亜紀の初めまで生息していた首長竜絶滅群。大型の頭部とがっしりした歯の生えた上下顎を持ち「短頚型首長竜」として知られるワニ類のような首の短い形態を含むタラッソフォネア英語版が有名である。より原始的な非タラッソフォネアのプリオサウルス類は比較的長い首と小さい頭部を持つ。元来このグループにはプリオサウルス科英語版のみが含まれていたが、現在ではさらにいくつかの属や科が含まれ、どれだけの属・科が含まれるかやその詳細は用いられた分類方法により変化する。

その特筆すべき特徴は、短い首・長大化した頭部・前と比較して大型の後であり、長頚型プレシオサウルス類の特徴とは正反対となる。彼らは肉食でありその長くて強力な上下顎には多くの鋭い円錐形の歯を備えていた。全長は 4 〜 10 m 、またはそれ以上に達した[1][2]。獲物にはおそらく、魚類サメ類魚竜恐竜・他の首長竜などが含まれる。

今までの所最大種はクロノサウルスプリオサウルスの1種 ( Pliosaurus macromerus ) であり、他のよく知られた属にはロマレオサウルスPeloneustesMacroplata などがいる[3]。化石記録はアフリカオーストラリア中国ヨーロッパ北アメリカ南アメリカなどから発見されている。

最も初期(前期ジュラ紀やおそらくは三畳紀の最後期:レーティアン)の原始的なプリオサウルス類は外見的に長頚型プレシオサウルス類に非常に似ており、実際にプレシオサウルス科英語版に含まれていたこともあった。

名称

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Liopleurodon ferox

"Pliosauroidea" という分類名は1943年にサミュエル・ポール・ウェルズ (Samuel Paul Welles) によって命名された。これはこのグループを代表するプリオサウルス ( Pliosaurus ) の属名から適用されており、その属名はギリシャ語πλείων(pleion:さらに・より)とσαῦρος(sauros:トカゲ)から「よりトカゲに近い」を意味する。Pliosaurus という名は1841年リチャード・オーウェンによって作られたものであり、そのワニ類に似た歯からオーウェンはこの動物がプレシオサウルス類とワニ類(当時はトカゲ類の一つと考えられていた)をつなぐ中間段階に相当すると考えたためその名をつけた。

分類

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首長竜の中には小型の頭部と長い頚部をもつ『長頚型』のものと大型の頭部と短い頚部をもつ『短頚型』の2つの型があり、旧来の分類では前者の型を持つものが「プレシオサウルス類」、後者の型が「プリオサウルス類」として、首長竜進化の初期から分化した2大系統として亜目や上科の分類階級を与えられていた[4]。しかし近年の研究によって長頚型から短頚型が進化したり短頚型から長頚型が現れたりしたことが明らかとなり、これらの『型』が系統を直接現しているのではないことが判明している[5]

分類体系

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Macroplata
Kronosaurus
Simolestes vorax
Attenborosaurus

ここで提示されている分類体系は、明記されていない限り主として Hilary F. Ketchum と Roger B. J. Benson によって2011年に発表された首長竜の分岐分析を基としている[6]

系統発生

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メアリー・アニングによって発見された "Plesiosaurus" macrocephalus 化石の複製。パリ・国立自然史博物館

"Pliosauroidea" はステムによる分類群であり、ウェルズにより『Plesiosaurus dolichodeirus より Pliosaurus brachydeirus に近い全てのタクサ』と定義された。プリオサウルス科とロマレオサウルス科も同様にステムによる分類群である。プリオサウルス科は『Leptocleidus superstesPolycotylus latipinnisMeyerasaurus victor のいすれかよりも Pliosaurus brachydeirus に近い全てのタクサ』と定義され、ロマレオサウルス科は『Leptocleidus superstesPliosaurus brachydeirusPolycotylus latipinnis のいずれかよりも Meyerasaurus victor に近い全てのタクサ』と定義されている[10]。下記の分岐図は古生物学者の Hilary F. Ketchum と Roger B. J. Benson による2011年の分析に従い、種は省略して属まで表記したものである[6]

プリオサウルス類
ロマレオサウルス科

Anningasaura

"Plesiosaurus" macrocephalus

Archaeonectrus

Macroplata

Atychodracon

Eurycleidus

Rhomaleosaurus

Meyerasaurus

Maresaurus

Rhomaleosauridae
プリオサウルス科

Thalassiodracon

Hauffiosaurus

Attenborosaurus

BMNH R2439

Marmornectes

"Pliosaurus" andrewsi

OUMNH J.02247

Peloneustes

Simolestes

Liopleurodon

Pliosaurus

Megacephalosaurus[11]

Brachauchenius

Kronosaurus

Pliosauridae
Pliosauroidea

大型のプリオサウルス類

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2002年、非常に大型のプリオサウルス類の発見がメキシコからもたらされた。このプリオサウルス類は「アラムベッリの怪物 (Monster of Aramberri)」として知られるようになった。これはリオプレウロドンに属すると広く報告されたが、実際にはリオプレウロドンではない[12]。この標本はキンメリッジアンにあたるラ・カハ累層 (La Caja Formation) から産出した椎体の一部からなる[13]。1985年の年始に地質学の学生によって発見され、当初は Hahnel によって獣脚類恐竜であると誤同定されていた[14]。標本には元々歯がついた吻片が含まれていたが現在は失われている。

2006年の8月、オスロ大学の古生物学者がノルウェー産としては初めてのプリオサウルス類化石を発見した。この化石は「保存状態が非常によいだけでなく、保存部位の完全さもすばらしい」と記載された。この大型動物はプリオサウルス属の新種であると同定された。2008年の夏に、この巨大プリオサウルス類化石は北極圏にあるノルウェー領スヴァールバル諸島スピッツベルゲン島の永久凍土層から掘り出された[15]。発掘の様子は2009年アメリカのTV番組『ヒストリー』の特番 ("Predator X") として公開された。

2009年10月26日、今まで見つかった中で最大の物である可能性があるプリオサウルス類の発見が報告された。イギリス・ドーセット州ウェイマス近郊のジュラシック・コーストの崖から見つかった化石は約 2 m の頭蓋骨だった。古生物学者のリチャード・フォレストはBBCの取材に対して「なにか大きなものが出てきたという噂は聞いていたんだ。しかし実際に見てみると、なんというか、開いた口がふさがらなかった。ただただデカかったよ。」と述べた[16]。この標本は新種であると同定され、科学者たちは Pliosaurus kevani という学名を与えた[17]

2023年10月、ドーセット海岸でのこのプリオサウルス類頭骨の発見は「この種類としては今まで発見された中で最も完全な物の一つ」と評された[18]

出典

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  1. ^ zoom dinosaurs
  2. ^ Sea reptile is biggest on record. BBC News, February 27, 2008.
  3. ^ Espen M. Knutsen; Patrick S. Druckenmiller; Jørn H. Hurum (2012). “A new species of Pliosaurus (Sauropterygia: Plesiosauria) from the Middle Volgian of central Spitsbergen, Norway”. Norwegian Journal of Geology 92 (2–3): 235–258. ISSN 0029-196X.  Low resolusion pdf Archived 2012-12-02 at the Wayback Machine. High resolusion pdf[リンク切れ]
  4. ^ E.H.コルバート 『脊椎動物の進化』上 築地書館 1978 ISBN 4-8067-1095-4 p206
  5. ^ 佐藤たまき首長竜」『化石』第85巻、日本古生物学会、2009年、70頁、doi:10.14825/kaseki.85.0_69ISSN 2424-2632 
  6. ^ a b Hilary F. Ketchum and Roger B. J. Benson (2011). “A new pliosaurid (Sauropterygia, Plesiosauria) from the Oxford Clay Formation (Middle Jurassic, Callovian) of England: evidence for a gracile, longirostrine grade of Early-Middle Jurassic pliosaurids”. Special Papers in Palaeontology 86: 109–129. 
  7. ^ Sato, Tamaki; Wu, Xiao-Chun (2008). “A new Jurassic pliosaur from Melville Island, Canadian Arctic Archipelago”. Canadian Journal of Earth Sciences 45 (3): 303–320. Bibcode2008CaJES..45..303S. doi:10.1139/E08-003. hdl:2309/95302. 
  8. ^ Adam S. Smith and Gareth J. Dyke (2008). “The skull of the giant predatory pliosaur Rhomaleosaurus cramptoni: implications for plesiosaur phylogenetics”. Naturwissenschaften 95 (10): 975–980. Bibcode2008NW.....95..975S. doi:10.1007/s00114-008-0402-z. PMID 18523747. http://www.plesiosauria.com/pdf/smith&dyke_2008.pdf. 
  9. ^ Gasparini, Zulma (2009). “A New Oxfordian Pliosaurid (Plesiosauria, Pliosauridae) in the Caribbean Seaway”. Palaeontology 52 (3): 661–669. Bibcode2009Palgy..52..661G. doi:10.1111/j.1475-4983.2009.00871.x. オリジナルの2011-07-16時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110716060129/http://www.redciencia.cu/cdorigen/arca/paper/plio2009.pdf. 
  10. ^ Ketchum, H.F.; Benson, R.B.J. (2010). “Global interrelationships of Plesiosauria (Reptilia, Sauropterygia) and the pivotal role of taxon sampling in determining the outcome of phylogenetic analyses”. Biological Reviews of the Cambridge Philosophical Society 85 (2): 361–392. doi:10.1111/j.1469-185X.2009.00107.x. PMID 20002391. 
  11. ^ Schumacher, B. A.; Carpenter, K.; Everhart, M. J. (2013). “A new Cretaceous Pliosaurid (Reptilia, Plesiosauria) from the Carlile Shale (middle Turonian) of Russell County, Kansas”. Journal of Vertebrate Paleontology 33 (3): 613–628. Bibcode2013JVPal..33..613S. doi:10.1080/02724634.2013.722576. 
  12. ^ The Plesiosaur Site - Liopleurodon”. 2011年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年9月18日閲覧。
  13. ^ M.-C. Buchy, E. Frey, W. Stinnesbeck, J.-G. Lopez-Oliva (2003) "First occurrence of a gigantic pliosaurid plesiosaur in the late Jurassic (Kimmeridgian) of Mexico", Bull. Soc. geol. Fr., 174(3), pp. 271-278
  14. ^ Hahnel W. (1988) "Hallazgo de restos de dinosaurio en Aramberri, N.L., Mexico", Actas Fac. Cienc. Tierra UANL Linares, 3, 245-250.
  15. ^ Fox News: Predator X Was Most Fearsome Animal to Swim Oceans
  16. ^ Morelle, Rebecca (27 October 2009). “Colossal 'sea monster' unearthed”. BBC News. http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/8322629.stm 
  17. ^ Benson, Roger J. B.; Evans, Mark; Smith, Adam S.; Sassoon, Judyth; Moore-Faye, Scott; Ketchum, Hilary F.; Forrest, Richard (2013-05-13). “A Giant Pliosaurid Skull from the Late Jurassic of England”. PLOS ONE 8 (5): e65989. Bibcode2013PLoSO...865989B. doi:10.1371/journal.pone.0065989. PMC 3669260. PMID 23741520. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3669260/. 
  18. ^ “Pliosaur discovery: Huge sea monster emerges from Dorset cliffs” (英語). BBC News. (2023年12月10日). https://www.bbc.com/news/science-environment-67650247 2023年12月10日閲覧。 

外部リンク

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