ヘキサカルボニルバナジウム
ヘキサカルボニルバナジウム | |
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hexacarbonylvanadium(0) | |
別称 バナジウムカルボニル バナジウムヘキサカルボニル | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 20644-87-5 |
特性 | |
化学式 | C6O6V |
モル質量 | 219.00 g/mol |
外観 | 青緑色結晶 黄色固体 |
融点 |
分解 |
沸点 |
50 °C, 15 mmHg(昇華) |
水への溶解度 | 不溶 |
その他の溶媒への溶解度 | ヘキサンに 5 g/L ジクロロメタンに難溶 |
構造 | |
結晶構造 | 斜方晶 |
配位構造 | 八面体形 |
双極子モーメント | 0 D |
危険性 | |
主な危険性 | CO |
関連する物質 | |
関連物質 | ヘキサカルボニルクロム テトラカルボニルニッケル 塩化バナジウム(III) |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
ヘキサカルボニルバナジウム (英: hexacarbonylvanadium)、またはバナジウムカルボニル (英: vanadium carbonyl) とは、化学式が V(CO)6 と表される金属カルボニルである。反応性が高く、理論的、学術的に注目すべき性質を持つ。ホモレプティックな金属カルボニルでは珍しく、常磁性かつ単離が可能である。Mx(CO)y と表されるほとんどの金属カルボニルが18電子則に従うのに対し、V(CO)6 が持つ価電子は17個である[1]。
合成
[編集]古典的な手法において V(CO)6 は、[V(CO)6]- を中間体として経由する二段階反応で合成される。まず VCl3 を200気圧の一酸化炭素のもと、160 °Cにおいて金属ナトリウムにより還元する。この還元反応の溶媒は通常ジグリムが用いられる。ジグリムは、クラウンエーテルと同様にナトリウム塩を可溶化させる。
この反応を低圧で行う方法も開発されている[2]。
反応
[編集]V(CO)6 は、熱的に弱いバナジウム錯体への前駆体として重要である。まずモノアニオン [V(CO)6]- へ還元してさまざまな V(-1) 化合物へ誘導できる。また、ホスフィンによる置換反応も容易であり、このときの生成物はしばしば不均化を起こす。
V(CO)6 は、シクロペンタジエニルアニオンと反応して橙色の錯体 (C5H5)V(CO)4(融点136 °C)を与える。イオン性に乏しい多くの有機金属化合物のように、このハーフサンドイッチ型錯体は揮発性である。かつては C5H5- の供給源として、C5H5HgCl が用いられた。
構造
[編集]V(CO)6 の構造は八面体形である。高分解能X線結晶構造解析によると、4個のエカトリアル位の配位子との結合距離が2.005(2) Å、2個のアキシャル位の配位子との結合距離が1.993(2) Åとなっておりわずかに歪んでいる。このゆがみはヤーン・テラー効果によるものといわれる。
脚注
[編集]- ^ C. Elschenbroich, A. Salzer ”Organometallics : A Concise Introduction” (2nd Ed) (1992) from Wiley-VCH: Weinheim. ISBN 3-527-28165-7
- ^ Liu, X.; Ellis, J. E.; "Hexacarbonylvanadate(1−) and Hexacarbonylvanadium(0)" Inorganic Syntheses 2004, 34, 96-103. ISBN 0-471-64750-0
参考となる文献
[編集]- Original synthesis: Calderazzo, F.; Ercoli, R., "Synthesis of V(CO)6 and Hexacarbonyl Vanadates" Chimica e l'Industria 1962, volume 44, 990-6.