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ヘビノボラズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヘビノボラズ
実を付けたヘビノボラズ(愛知県春日井市にて、2014年1月1日撮影)
赤いをつけたヘビノボラズ Berberis sieboldii
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: キンポウゲ目 Ranunculales
: メギ科 Berberidaceae
: メギ属 Berberis
: ヘビノボラズ B. sieboldii
学名
Berberis sieboldii Miq.
和名
ヘビノボラズ

ヘビノボラズ(蛇上らず、学名Berberis sieboldii Miq.[1])は、メギ科メギ属分類される落葉低木の1[2]名(メギ属 Berberis)は、アラビア語名に由来する[3]種小名sieboldii)は、ドイツ医師博物学者出島の三学者の1人であるフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトに由来する[4]和名は、葉の縁に刺毛状の細かいのこぎり歯があり、には鋭い針状のがあることから「も登れない」という意味に由来する[5][6]。別名が、トリトマラズ、コガネエンジュ[5]

特徴

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樹高80 cmほどまで成長し、よく枝分かれし、樹形はほぼ球形[7]樹皮は暗灰色[7]。枝は赤褐色で稜があり、の付け根には葉が変形した単一または3分岐した長さ5-15 mm[2]の棘がある[5]。冬は広卵形で、淡褐色で数個の芽鱗に包まれる[7]は主に短枝の先に集まって互生する[7]葉身は長さ3-9 cm、幅1-2 cmの倒卵形-倒披針形で、先端はやや鋭く基部はやや細くなって葉柄状になり[7]、最大幅は先寄り[8]。葉の縁には小刺毛が密生し[5]、両面とも無毛で革質[7]。若葉に赤紫色の[8]斑紋がでるものがあるが、成長するにつれて消失する[7]。葉の裏は古くなると白色を帯びる[5]。5-6月に[2]短枝の先から総状花序の黄色のを散形状に[5]垂れ下げてつける[7]。花の直径は6 mmほど、花弁と広卵倒形の萼片は6個で[2]雄蕊は6個、雌蕊は1個で花柱は短い[2]。花序は葉よりも短い[7]果実は直径6 mmほどの球形-楕円形の液果で、10-11月に赤く熟す[7]種子は平らで、ややへこんだ卵形-長楕円形で表面が薄褐色-黒褐色で、一端が時にやや歪む[7]

分布・生育環境

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ハルリンドウなどと共に湿地付近に自生するヘビノボラズ

日本固有種[9]本州中部地方西南部から近畿地方にかけて)と九州宮崎県[10])のやや温暖地[8]に分布する[2][7]。東海丘陵要素植物群の1種とされている[11]

湿地付近などのやせ地に[8]やや稀に生育する[2][7]

利用

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材はベルベリンなどのアルカロイドを含み用にされる[7]。葉を煎じると、眼病のときの洗眼に役立ち、茎や根は胃腸に効くといわれる。木材は寄せ木細工の材料となる[6]生垣として利用される[7]

種の保全状況評価

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奈良県では、レッドリストで絶滅寸前種の指定を受けている[12]山梨県[13]長野県[14]宮崎県[10]では、絶滅危惧種IB類(EN)の指定を受けている。岐阜県では個体数が大幅に減少している生育地があり、絶滅危惧II類(VU)の指定を受けている[15]京都府では生息地の湿地周辺の環境遷移が進んで個体数が減少傾向にあり、絶滅危惧種の指定を受けている[16]愛知県では、丘陵地の開発や湿地周辺の森林化に伴う環境遷移により個体数は減少していて、準絶滅危惧(NT)の指定を受けている[9]三重県でも準絶滅危惧(NT)の指定を受けている[17]

近縁種

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ヒロハヘビノボラズ
広葉蛇上らす、学名:Berberis amurensis Rupr.ロシアアムール州中国東北部、朝鮮半島から日本(北海道、本州、四国、九州)にかけて分布する[18]。高さ3 m程まで成長し、葉の幅は1.5-3 cmでヘビノボラスよりも幅広い[18]
ホソバアカメギ
細葉赤目木、学名:Berberis sanguinea Franch.、中国西部に分布し、第二次世界大戦後に渡来して公園樹や庭木として利用されている[7]。秋に果実が青黒色に熟す[7]

脚注

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  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ヘビノボラズ”. 植物和名ー学名インデックス YList. 2024年11月22日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 林 (2011)、187頁
  3. ^ 岡部 (2004)、240頁
  4. ^ 岡部 (2004)、125頁
  5. ^ a b c d e f 牧野 (1982)、128頁
  6. ^ a b 瀧井康勝『366日 誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、330頁。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 太田 (2005)、142-143頁
  8. ^ a b c d 林 (2014)、139頁
  9. ^ a b ヘビノボラス” (PDF). レッドリストあいち2020. 愛知県. pp. 604. 2024年11月22日閲覧。
  10. ^ a b 2020年度改訂版レッドリスト” (PDF). 宮崎県. p. 8. 2024年11月22日閲覧。
  11. ^ 愛知 (2013)、11頁
  12. ^ 維管束植物レッドリスト(希少性の観点:絶滅種~情報不足種)” (PDF). 大切にしたい奈良県の野生動植物2016 改訂版. 奈良県. p. 14(56). 2024年11月22日閲覧。
  13. ^ 植物(3)” (PDF). 2018 山梨県レッドデータブック. 山梨県. p. 1. 2024年11月22日閲覧。
  14. ^ 長野県版レッドリスト(植物編)2014年・維管束植物” (PDF). 長野県. p. 7. 2024年11月22日閲覧。
  15. ^ ヘビノボラズ” (PDF). 岐阜県レッドデータブック(植物編)改訂版2類(1). 岐阜県. 2024年11月22日閲覧。
  16. ^ 京都府レッドデータブック2015・ヘビノボラズ”. 京都府. 2024年11月22日閲覧。
  17. ^ 12 維管束植物” (PDF). 三重県レッドデータブック2015~三重県の絶滅のおそれのある野生生物~. 三重県. pp. 32(625). 2024年11月22日閲覧。
  18. ^ a b 太田 (2005)、140-141頁

参考文献

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  • 愛知真木子、味岡ゆい、上野薫、寺井久慈、南基泰「東海丘陵要素植物群の無機窒素栄養に対する種特異性」(PDF)『湿地研究』第13巻、日本湿地学会、2013年。 
  • 太田和夫、勝山輝男高橋秀男、茂木透ほか『樹に咲く花 離弁花②』(2版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑4〉、2005年3月15日。ISBN 4635070042 
  • 岡部誠『木の名前 由来がわかる花木・庭木・街路樹445種』日東書院本社、2004年4月1日。ISBN 4528016419 
  • 林将之『樹木の葉 実物スキャンで見分ける1100種類』(山溪ハンディ図鑑14)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2014年4月15日。ISBN 978-4635070324 
  • 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 

関連項目

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外部リンク

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