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ベルゲン・ライトレール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ベルゲン・ライトレール
シンボルマーク
ベルゲン・ライトレール(2019年撮影)
ベルゲン・ライトレール(2019年撮影)
基本情報
ノルウェーの旗ノルウェー
所在地 ベルゲン
種類 路面電車ライトレール
路線網 2系統(2023年現在)[1][2]
開業 2010年[3]
所有者 ベイバーネン[4]
運営者 タイド・バス・オグ・バーネノルウェー語版[4][5]
使用車両 バリオバーン[2][6][7]
路線諸元
軌間 1,435 mm
電化区間 全区間
電化方式 直流750 V
架空電車線方式[6]
路線図
テンプレートを表示

ベルゲン・ライトレールノルウェー語: Bybanen英語: Bergen Light Rail)は、ノルウェーの都市・ベルゲンに存在する路面電車ライトレール)。2010年に開通した路線で、2023年現在はヴェストラン県自治体英語版の100 %子会社であるベイバーネン(Bybanen AS)が施設や車両を所有し、同自治体が設立した公共交通運営組織のシスノルウェー語版から委託される形でタイド・バス・オグ・バーネノルウェー語版(Tide Buss og Bane)が列車の運営や施設管理を行っている[4][5]

歴史

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ノルウェーの都市・ベルゲンには、かつて1897年に開通した路面電車路線(ベルゲン市電ノルウェー語版英語版)が存在した。最盛期には4系統が存在したが、第二次世界大戦後はモータリーゼーションの進展やウルリケントンネルノルウェー語版の開通によるベルゲン線の利便性向上により利用客は減少の一途を辿り、1965年1月31日をもって廃止された[8][9][10][7]

その後、1970年代のベルゲンではオスロ地下鉄の開発や成功に触発された大規模な地下鉄網や通勤列車の延伸などが提案されたが実現せず、都市部の公共交通機関の主力は長らく路線バストロリーバスであった。だが、自動車道や自動車用トンネルの整備が進む一方で各地の自動車の混雑悪化や公共交通機関の利便性低下が問題視されるようになり、1990年代以降公共交通機関の改善・拡充の一環として路面電車の再導入が検討されるようになった。そして2000年、ベルゲン市議会によってベルゲン市内中心部とベルゲン空港を始めとした郊外地域を結ぶ路面電車(ライトレール)の建設案が可決され、続く2002年にノルウェー国会によってこの路面電車建設を含めたベルゲンの交通網の予算案が承認された[注釈 1][8][9][11][12]

これを受け、既存の路線バス運営組織との協議、ベルゲンの各地域への建設費用の配分決定などの工程を経て、2008年1月に第1段階(Byggetrinn 1)となる全長9.5 kmの路線の建設が開始された。そして路線の管理組織の設立、運営組織の決定などが並行して行われた後、ベルゲン・ライトレール最初の路線となる1号線は2010年6月22日に開通した[9][11][13]

その後、第2段階(Byggetrinn 2)として2013年6月に、第3段階(Byggetrinn 3)として2016年8月2017年4月にそれぞれ延伸が行われており、2023年現在1号線は全長20.4 kmの路線を有している[注釈 2]。このライトレール開通の影響は大きく、路線バス網の再編も含めた効果による公共交通機関の利用客数の増加や、それに伴う自動車の通行量減少が確認されている[1][2][11][15]

このライトレールの需要増加を背景として2014年に第4段階(Byggetrinn 4)の建設が認可され、2018年から建設が行われた後、1号線から分岐しフィリングスダーレンノルウェー語版(Fyllingsdalen)まで向かう全長9 kmの2号線として2022年11月21日から営業運転を開始している。この区間の大半は地下区間、もしくは山岳トンネル区間となっている他、ハウケランド病院駅ノルウェー語版(Haukeland sjukehus)はノルウェーの路面電車で初の地下駅となっている[1][2][16][17][18]

路線・施設

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前述の通り、ベルゲン・ライトレールは2023年現在1号線・2号線の2つの系統で運用されており、各系統は以下の電停・駅を経由する。路線には1・2号線共にトンネルが多く存在するのが特徴となっている[9][1][2][19][20]

車両基地はコクスタッドフラーテン電停ノルウェー語版(Kokstadflaten)付近に存在し、ライトレールで使用される車両や事業用車両が配置されている。2016年まではクロンスタッド電停ノルウェー語版(Kronstad)付近にノルウェー国鉄の車庫跡を用いたものが存在したが、コクスタッド電停付近の車両基地が完成して以降は留置線の役割のみを果たしている[21][22]

写真 電停名 停車系統 接続交通機関 開通年月 備考・参考
1号線 2号線
Byparken 路線バス 2010年6月22日
Kaigaten 2022年11月21日
Nonneseter 鉄道(ベルゲン線) 2010年6月22日 ベルゲン駅と接続
Bergen busstasjon 路線バス
Nygård
Florida
Danmarks plass
Fløen 2022年11月21日
Haukeland sjukehus 路線バス 地下駅
Kronstad 2010年6月22日
Brann stadion
Wergeland
Sletten 路線バス
Slettebakken
Fantoft
Paradis 路線バス
Hop
Nesttun terminal 路線バス
Nesttun sentrum 2013年6月22日
Skjoldskiftet 路線バス
Mårdalen
Skjold 路線バス
Lagunen 路線バス
Råstølen 路線バス 2016年8月15日
Sandslivegen 路線バス
Sandslimarka
Kokstad
Birkelandsskiftet terminal 路線バス
Kokstadflaten 2017年4月22日
Bergen Lufthavn ベルゲン空港と接続
Mindemyren 2022年11月21日
Kristianborg 路線バス
Fyllingsdalen terminal 路線バス

車両

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バリオバーン(5車体連接車)
2010年撮影)

ベルゲン・ライトレールで使用されているのは、スイスシュタッドラー・レールが展開する路面電車車両のバリオバーンである。車内全体の床上高さが350 mmに抑えられた両運転台・両方向型の超低床電車で、ステンレス鋼製の車体設計にはモジュール構造が採用されている。車内は冷暖房が完備されている他、各所に車椅子ベビーカーが設置可能なフリースペースが存在する。開通以降2013年までに導入された20両は5車体連接車であったが、2015年に導入された8両は7車体連接車となり、5車体連接車についても2016年から新たに中間車体が挿入され7車体に変更されている。その後2022年の2号線開通に合わせて増備された6両も含め、2023年現在は34両が在籍する。主要諸元は以下の通り[9][2][6][16][7]

バリオバーン 主要諸元
編成 両数 運転台 最高速度 全長 全幅 全高 床上高さ 重量 着席定員 立席定員[注1 1] 主電動機出力 車両出力
5車体連接車 20両[注1 2] 両運転台 70km/h 32,370mm 2,650mm 3,500mm 350mm 41.8t 84人 128人 45kw 360kw
7車体連接車 14両 42,140mm 55.9t 98人 182人 540kw
注釈・参考
  1. ^ 数値は乗客密度4人/m2時。
  2. ^ 2016年以降7車体連接車へ改造。
[6][16]

今後の予定

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ベルゲン・ライトレールには今後延伸が検討されている路線として、第5段階(Byggetrinn 5)と位置付けられている、ベルゲン市内中心部から北部のオサネ(Åsane)まで向かう区間が存在する。路線の多くはトンネルを用いる事が検討されているが、2021年にベルゲン市議会で一部についてはブリッゲン(Bryggen)を経由する地上区間への変更が承認された他、同地区を含む一部区間では架線を設けず電車は充電池を用いて走行する事も決定している。開通は2035年を予定している[23][24][25][26]

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ ただし予算の都合により、路面電車建設を含めた一連のプロジェクトは計画されたものから縮小される事となった。
  2. ^ 1号線の全長を19.8 km、もしくは22 kmとする資料も存在する[14][11]

出典

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  1. ^ a b c d Infrastruktur”. Bybanen. 2023年2月6日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Erik Buch (2022年11月21日). “A second new tram line in Bergen/Norway”. Urban Transport Magazine. 2023年2月6日閲覧。
  3. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 11.
  4. ^ a b c Bybanen AS”. Bybanen. 2023年2月6日閲覧。
  5. ^ a b DSD kjøper buss- og bybaneselskapet Keolis i Norge”. Bergens Tidende (2022年9月6日). 2023年2月6日閲覧。
  6. ^ a b c d Low-floor LIGHT RAIL VEHICLE Variobahn Bybanen from Bergen in Norway”. Stadler Rail. 2023年2月6日閲覧。
  7. ^ a b c Jimmy Schmincke 2021, p. 7.
  8. ^ a b Jacobus Meulman (2000). “Lokalbaneplaner i Bergen i 1970-årene”. På Sporet 104: 28–35. 
  9. ^ a b c d e Bergen to open its new light rail system – Bybanen”. Intelleigent Transport (2010年6月30日). 2023年2月6日閲覧。
  10. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 6.
  11. ^ a b c d 伊藤雅 (20 February 2018). ベルゲンのライトレール導入による事前事後変化 (PDF) (Report). 運輸総合研究所. 2023年2月6日閲覧
  12. ^ Bjørn Andersen (1996). “Trikk i Bergen igjen”. Lokaltrafikk 27: 12-17. 
  13. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 10-13.
  14. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 20.
  15. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 15.
  16. ^ a b c Bergen opens second tram line”. LRTA (2022年11月21日). 2023年2月6日閲覧。
  17. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 46-50.
  18. ^ Bergen Light Rail”. SWECO. 2023年2月6日閲覧。
  19. ^ BERGEN”. UrbanRail.Net. 2023年2月6日閲覧。
  20. ^ Linjeoversikt”. Bybanen. 2023年2月6日閲覧。
  21. ^ Depot og verksted”. Bybanen. 2023年2月6日閲覧。
  22. ^ Jimmy Schminke (2009). “Bybanen i Bergen: Status midt i byggeperioden”. Lokaltrafikk 72: 20-30. 
  23. ^ Jimmy Schmincke 2021, p. 18.
  24. ^ Forsøk nummer fire: Nå har bystyret vedtatt bybanetraseen gjennom sentrum”. Bergens Tidende (2021年12月16日). 2023年2月6日閲覧。
  25. ^ Roger Valhammer bekrefter konstituert nytt byråd i Bergen - og sikrer Bybane over Bryggen.”. TV2 (2021年12月6日). 2023年2月6日閲覧。
  26. ^ Tidsplanen sprekker for Åsane-banen: Kan tidligst stå ferdig rundt 2035”. Bergens Tidende (2022年10月5日). 2023年2月6日閲覧。
  27. ^ Bergens Elektriske Sporvei”. 2023年2月6日閲覧。

参考資料

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  • Jimmy Schmincke (22 February 2021). 10 years of Bybanen (PDF) (Report). Nordic Light Rail Association. 2023年2月6日閲覧

外部リンク

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