マイケル・キンメル

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マイケル・キンメル
Michael S. Kimmel
マイケル・キンメル(2012年)
人物情報
生誕 (1951-02-26) 1951年2月26日(73歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ブルックリン
出身校 ヴァッサー大学 学士
ブラウン大学 修士
カリフォルニア大学バークレー校 博士
学問
研究分野 ジェンダー研究, 男性学, 男らしさ, 男性とフェミニズム英語版
研究機関 ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校
公式サイト
http://www.michaelkimmel.com/
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マイケル・スコット・キンメル: Michael S. Kimmel、1951年2月26日 - [1])は、ジェンダー研究を専門とするアメリカ合衆国の社会学者。特別教授としてニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に勤め、男性学学術誌 Men and Masculinities を立ち上げ、長年編集者を務めた[2]。性差別に反対する男性による組織であるNOMAS英語版のスポークスパーソンで[3]、長年フェミニストとして活動している[4]。また、ストーニーブルック校の男性と男らしさを研究する研究所を設立し、責任者を務めた[5]。2018年には以前の学生から匿名のセクシャル・ハラスメントの告発を受け[6]、大学側が事実関係の調査を行う前に引退した(後述[7]

略歴[編集]

キンメルは宗教的でないユダヤ系の家族に生まれ[8]、1972年にヴァッサー大学で学士を取得、1974年にブラウン大学で修士課程を修了、1981年にカリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した[9]

1982年から1986年までラトガーズ大学で助教授として務め、ニューヨーク大学で客員教授も務めた。1987年からニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で晩年まで務めた[9]。1992年から1994年は母校であるカリフォルニア大学バークレー校で客員教授を務めた。

研究[編集]

キンメルはジェンダー研究の一部である男性学の研究の第一人者として知られる[10][11]

男性ジェンダーについての多くの著作で知られており、代表的なものに、男性の社会的行動が少年から成人男性になる過程でホモソーシャル同調圧力などによって形成されることを研究した「Guyland英語版[11][12]、アメリカ合衆国における白人男性の怒りを研究した「Angry White Men」、マスキュリニティの歴史や事例などをまとめた百科事典Men and Masculinities: a Social,Cultural and Historical Encyclopedia[13]などがある。

1992年から1993年にかけて発刊された学術誌、Masculinitiesの創刊者で、後にMen and Masculinitiesと改められ、編集者を務めた[14]。2004年には、ニューヨーク・カーネギー財団による創造的な研究に対する奨学金の受賞者の一人に選ばれ、男性を対象としたコンテンツに現れる有害なマスキュリニティと政治的極右化の関係、ジェンダー化された倫理観についての研究を行った[15]

セクシャル・ハラスメントの告発と引退[編集]

2018年、アメリカ社会学会のジェシー・ベルナルド賞の受賞直前に、過去の学生によるキンメルに対する匿名のセクシャル・ハラスメントの告発がされた[16]。これを受けて、アメリカ社会学会はキンメルの声明を発表。その中で、賞の受賞決定を6ヶ月間延期することを希望した旨と、学会が正式な調査を行えるよう告発者に6ヶ月の間に公式な異議申し立てを行うように促した。The Chronicle of Higher Education紙のインタビューでは、アメリカ社会学会で長年役職を持つ女性社会学者が、キンメルについての似た噂は度々聞いたことがあると証言した[7]。大学による調査はキンメルが退職を発表したことで行われなかった。その後も、キンメルによる性差別同性愛差別デッドネーミングミスジェンダリングを含むトランス差別を指摘する実名での告発が行われた[7]

著作(一部抜粋)[編集]

著書[編集]

論文[編集]

外部リンク[編集]

ビデオ(日本語字幕)

脚注[編集]

  1. ^ Peacock, Scot (2002). Contemporary authors: new revision series. 99. Detroit, Mich.: Gale. p. 213. ISBN 978-0-7876-4608-0. https://archive.org/details/contemporaryauth0099unse/page/213 
  2. ^ Korgen, Kathleen Odell; White, Jonathan M.; White, Shelley (2011). Sociologists in Action: Sociology, Social Change, and Social Justice. Thousand Oaks, Calif.: Pine Forge Press. p. 175. ISBN 978-1-4129-8283-2 
  3. ^ Biography”. Stony Brook University. 2012年5月17日閲覧。
  4. ^ Hanna Rosin (2013年11月22日). “Even Madder Men”. New York Times. 2014年6月30日閲覧。
  5. ^ Center for the Study of Men and Masculinities”. Stony Brook. 2014年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月27日閲覧。
  6. ^ Ratcliffe, Rebecca (2018年8月15日). “Women's rights campaigner accused of sexual harassment”. The Guardian. https://www.theguardian.com/global-development/2018/aug/15/us-womens-rights-campaigner-accused-of-sexual-harassment 2018年8月15日閲覧。 
  7. ^ a b c Flaherty, Colleen (2018年8月10日). “Michael Kimmel's former student is putting a name and details to those harassment 'rumors'” (英語). Inside Higher Ed. https://www.insidehighered.com/news/2018/08/10/michael-kimmels-former-student-putting-name-and-details-those-harassment-rumors 2018年8月11日閲覧。 
  8. ^ Hugo Schwyzer, Raising Feminist Sons: A Conversation With Michael And Zachary Kimmel, September 12, 2012
  9. ^ a b "Curriculum Vitae" Archived 2011-06-29 at the Wayback Machine.. Stony Brook University. Retrieved May 17. 2012.
  10. ^ Bronner, Simon J., ed (2005). Manly Traditions: The Folk Roots of American Masculinities. Bloomington: Indiana University Press. pp. 38–39. ISBN 978-0-253-34613-1. https://books.google.com/books?id=XsM2Fb25DMQC&pg=PA38 
  11. ^ a b Yang, Wesley (2008年9月7日). “Nasty Boys”. The New York Times. 2020年10月23日閲覧。
  12. ^ GUYLAND”. 株式会社 日本外語協会. 2020年10月23日閲覧。
  13. ^ Best of Reference 2004: Superheroes of Reference”. New York Public Library. 2012年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月21日閲覧。
  14. ^ Transdisciplinary Perspectives on Genders and Sexualities”. New York University Press. 2012年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月17日閲覧。
  15. ^ Class of 2004 Carnegie Scholars Announced”. Carnegie Corporation of New York (2004年5月7日). 2012年9月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月21日閲覧。
  16. ^ Coston, Bethany M. (2018年8月9日). “Reclaiming my fear: I will no longer stay silent about Michael Kimmel”. Medium. 2018年8月15日閲覧。