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マダラサソリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マダラサソリ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモガタ綱 Arachnida
: サソリ目 Scorpiones
亜目 : ゲンセイサソリ亜目 Neoscorpionina
下目 : オレイタサソリ下目 Orthosternina
小目 : ウシコロシサソリ小目 Buthida
上科 : ウシコロシサソリ上科 Buthoidea
: ウシコロシサソリ科 Buthidae
: ナミハカリサソリ属 Isometrus
: マダラナミハカリサソリ I. maculatus
学名
Isometrus maculatus
和名
マダラナミハカリサソリ

マダラサソリ(斑蠍、学名 Isometrus maculatus)は、クモガタ綱サソリ目ウシコロシサソリ科に属するサソリである。

別名マダラナミハカリサソリ。日本に産するサソリ2種のうちの1つで、人に対する危険は少ないが外来生物法により特定外来生物に指定されている。

概説

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日本に分布するサソリとしてヤエヤマサソリ(Liocheles australasiae)と共に、「マダラサソリ」として広く知られている。日本では宮古諸島及び八重山諸島、小笠原諸島に分布している。

特徴

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中型種で、大きさは50mm前後だが雌雄差があり、オスは後腹部と触肢が長く、体長がメスより大きくなる。体色は黄色で、黒色の斑模様が入る。[1][2]

尾節の先端に毒針を持つ。刺されると赤く腫れ、わずかに疼痛がある[2]が、毒性は弱く、治療を要した事例はない[3]

分布

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世界中の熱帯及び温帯地域に広く分布する種類。詳しくは以下の通り。

カメルーンカメルーンケニアマダガスカルモーリシャス諸島モザンビークレユニオンセントヘレナセーシェル諸島ソマリアタンザニア中国インドネシア日本フィリピンシンガポールスリランカスペインケイマン諸島キューバセントビンセント及びグレナディーン諸島アメリカオーストラリアクック諸島ポリネシアキリバスブラジルチリイースター島    

マダラサソリ

  

日本では宮古諸島のほぼ全域、八重山諸島のほぼ全域、小笠原諸島の一部に分布する。具体的には以下の通り。

島名 文献
父島(絶滅) 高島, 1949
母島(絶滅) 高島, 1943
硫黄島 久保, 2001
宮古島 下謝名, 1972
伊良部島 河合, 2021a
宮古島市下地島 河合, 2021a
石垣島 高島, 1948
西表島 横塚, 2011
新城(上地)島 山崎ら, 2016
波照間島 河合, 2020b
与那国島 村松, 2007


まれに、荷物などに紛れて本土の港湾などで発見された例がある。


小笠原諸島の個体群については比較的近年(1930年代初頭頃)サイパン方面から非意図的に移入されたとされている。先島諸島の個体群に関しては非常に古くから分布していると考えられる。一番大本の原産地はおそらくスリランカであると言われているが反論もある。

扱い

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本種は在来種だが、本種を含むウシコロシサソリ科の全種が外来生物法により特定外来生物に指定されている[4]ため、法律上は特定外来生物となる。

生態

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開けた場所にある樹や皮倒木の下、石の下などに生息する[1][2]。人家周辺でも見られ、家屋内に侵入することもある[5]

日本蠍研究所 河合上総により宮古諸島での詳しい生息環境について調査されている。[6]

生殖

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メスは精子を蓄えておくことが出来る貯精嚢を持っているので一回の交接で複数回の出産が可能である。1回の出産数は十数匹。野生採取個体が採取後交接することなく15匹程を3回(計45匹程)出産した記録もある。この繁殖力の高さが分布域拡大の要因の一つであることは明白である。

毒性

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サソリは毒性が恐ろしいと必要以上に警戒されるが、この種の場合、刺された例を聞くことすらほとんどない。刺された場合にも軽く痛みを感じる程度であり、時間と共に痛みは和らいでいく。

なお、これは毒を持たないという意味ではなく、人間など大型の動物に対する毒性がごく弱いことを意味するだけである。サソリの毒は大型の天敵に対する防護にも使われるがあくまで二次利用であり、元々は餌となる昆虫等を確実に捕殺するためのものである。

類似の種など

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ヤエヤマサソリ

日本のサソリとしてはもう1種、ヤエヤマサソリがあり、先島諸島(宮古列島及び八重山列島)と沖縄諸島に分布する。しかし全体に扁平で、鋏は短く、体色が暗褐色なので、区別はたやすい。

脚注

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  1. ^ a b 森谷清樹「セミナー室 動物毒の化学と生物 1 日本の有毒節足動物」『化学と生物』第24巻第9号、公益社団法人日本農芸化学会、1986年9月25日、618-624頁、doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.24.618 
  2. ^ a b c ◆お知らせ◆特定外来生物「キョクトウサソリ科」の「マダラサソリ」が清水区で発見されました!”. しずおかみんなの「しぜんたんけんてちょう」. 静岡市環境局環境創造課 (2018年8月29日). 2018年11月7日閲覧。
  3. ^ 梅谷献二 (2002年). “蠍/虫の雑学”. 研究ジャーナル 25巻5号. 公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会. 2018年11月7日閲覧。
  4. ^ 特定外来生物の解説:キョクトウサソリ科の全種”. 環境省. 2018年11月7日閲覧。
  5. ^ 衛環研ニュース 2006年12月 第13号” (PDF). 沖縄県. 2018年11月7日閲覧。
  6. ^ Kawai, Kazusa (2021-02-10). “Habitat characteristics of two scorpion species, Liocheles australasiae (Fabricius, 1775) and Isometrus maculatus (De Geer, 1778) in Miyako Islands, Japan”. Euscorpius 2021 (331): 1–17. ISSN 1536-9307. https://mds.marshall.edu/euscorpius/vol2021/iss331/1. 

参考文献

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  • 河合上総, 2020 ヤエヤマサソリとマダラサソリ (クモ綱サソリ目)の波照間島からの記録. Fauna Ryukyuana, 56:9-11.
  • Kawai, K. 2021a Habitat characteristics of two scorpion species, Liocheles australasiae (Fabricius, 1775) and Isometrus maculatus (De Geer, 1778) in Miyako Islands, Japan. Euscorpius, No. 331: 1-17.
  • De Geer,1778 Mémoires pour servir à l'histoire des Insectes: bibliothèque du muséum d'histoire naturelle cinquième mémoire. Des scorpions et fauxscorpions. Stockholm, vol. 7.
  • Barceloux,2008 Medical Toxicology of Natural Substances: Foods, Fungi, Medicinal Herbs, Plants, and Venomous Animals., Hoboken, John Wiley & Sons.
  • Encyclopedia of Life,2016.
  • Fauna Europaea,2013.
  • Freitas&Vasconcelos,2008 Scorpion fauna of the island of Fernando de Noronha, Brazil: first record of Tityus stigmurus (Thorell, 1877) (Arachnida, Buthidae). Biota Neotropica. 8 (2).
  • Gerlach&Marusik,2010 Arachnida and Myriapoda of the Seychelles Islands., Manchester, UK: Siri Scientific Press.
  • Hounsome,2012 Terrestrial Invertebrates (Other Than Insects) of the Cayman Islands. The Cayman Islands: Natural History and Biogeography. Springer Science & Business Media.
  • D. Kaltsas, I. Stathi, V. Fet,2008 Scorpions of the Eastern Mediterranean. Advances in Arachnology and Developmental Biology. Monographs, 12.
  • Koh J, Gopalakrishnakone P, Hun K,1990 A Colour Guide to Dangerous Animals. Kent Ridge, Singapore: Singapore University Press, Ridge Books.
  • Legendre,1972 The Arachnids of Madagascar. (Les Arachnids de Madagascar.). In: Biogeography and Ecology in Madagascar. Dordrecht, Netherlands: Springer Science & Business Media.
  • Lourenço&Cloudsley,2012 Introduction and adaptation of Isometrus maculatus (De Geer, 1778) (Scorpiones, Buthidae) in arid and desert formations. Newsletter of the British Aarchnological Society, 125.
  • Lourenço,2013 A new species of Babycurus Karsch, 1886 from northern Cameroon (Scorpiones: Buthidae). Arthropada Selecta, 22 (4).
  • Simmons et. al.,1944 a Geography of Disease and Sanitation. William Heineman Ltd.
  • St Helena National Trust, 2013  Isometrus maculatus. Bugs on the Brink - Our Inverterbrates.
  • Teruel,2009 Morphology, ecology and distribution of Isometrus maculatus (DeGeer 1778) in Cuba (Scorpiones: Buthidae). (Morfología, ecología y distribución de Isometrus maculatus (Degeer 1778) en Cuba (Scorpiones: Buthidae). Boletin de la S.E.A. 173-179.
  • The Cook Islands Natural Heritage Trust,2007 Isometrus maculatus, Spotted Scorpion Species Page.
  • Vachon,1972 Observations on the scorpions belonging to the genus Isometrus H. et E.

  (Buthidae) with respect to the species Isometrus maculatus (Geer) occurring on Easter

  Island. (Remarques sur les scorpions appartenant au genre Isometrus H. et E.   

  (Buthidae) a propos de l'espece Isometrus maculatus (Geer) habitant l'Ile de Paques.

  Cahiers du Pacifique.

  • Yates,1993 Isometrus maculatus (De Geer), Lesser Brown Scorpion.

  Urban Knowledge Master, Extension Entomology & UH-CTAHR

  Integrated Pest Management Program, Hawaii, University of Hawaii.

  • 岩川友太郎,1906 本邦産の蝎類, 動物学雑誌, 18.
  • 久保快哉, 2001 硫黄島訪問記. やどりが, 2001: 67.
  • 下謝名松栄, 1972 琉球列島の蛛形類の分布. 遺伝, 26: 100–106.
  • 高島春雄, 1943 日本産全蠍目及脚鬚目. Acta Arachnologica, 8: 13.
  • 高島春雄,1945東亞地域に於ける全蠍目, Acta Arachnologica, 9.
  • 高島春雄, 1948 南方諸地域に於ける脚鬚目概説. Acta Arachnologica, 10: 111.
  • 高島春雄, 1949 舊日本産蠍目目録. Acta Arachnologica, 11: 34.
  • 村松稔, 2007. ハビル館だより. アヤミハビル館, 2007年1月第3週号.
  • 山崎仁也, 松村雅史, 吉田和久, 力身恭二, 目黒賢児, 2016 鳩間島・新城

(上地)島・黒島の動物相(FAUNA)-昆虫相を中心に, 鳩間島・新城島・黒島総合調査報告2016.  

 Pp.76,  沖縄県立博物館・美術館,沖縄.

  • 横塚眞己人,2011. 西表島フィールド図鑑 改訂新版. Pp. 240. 実業之日本社.

外部リンク

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