マッチレース
マッチレース(Match Race)とは英語由来の外来語で、一対一で勝敗を争う形式の競走である。日本語だと「一騎討ち」とも表現される。
英語に於いては元の意味の一対一形式の試合に使われるが、日本においては、この意味の他に、三者以上で行われる競走の場合でも、先頭の二者が抜け出して、抜きつ抜かれつを繰り返すレース展開になった場合を指していうこともある。
競馬におけるマッチレース
[編集]競馬の競走におけるマッチレースという言葉は、現在使われている意味合い(抜け出した上位2頭の拮抗)で使われることもあるが、おもに原義の一対一形式の競走を意味する。近現代においてはおもに臨時のイベントとして催されるもので、企画に賛同した馬主同士が協定条件下で2頭の馬を競わせるものである。出走予定馬の除外などによって2頭立てとなる場合もあるが、この場合マッチレースとは呼ばれない。
マッチレース形式の競走は、馬主自身が騎手も兼任していた競馬の黎明期から存在し、純粋にどちらの馬が強いかを競うものであった。古来この形態こそが競馬だという風潮があり、18世紀あたりまではこの形態が競馬の主流であった。その後時代の遷り変わりによって少しずつ衰退し、現代ではほとんど見られなくなったが、一部ではイベントとして開催されている。
日本国内の競馬においては、戦前などではマッチレースが行われていた事例もあるものの、現在では原則として2頭立てで競走が成立しないため、よほどの例外をのぞいて施行されていない。
日本国外の例としては、アメリカの各競馬場が20世紀中ごろまでしばしば開催していた。強豪馬同士の対決を売りとしたマッチレースは集客力があり、なかには2歳馬同士のマッチレースなども開催されていた。しかし1975年のラフィアンが故障・予後不良となったマッチレース以来強豪馬同士のマッチレースは自粛傾向にあり、現代ではほとんど見られなくなっている。
おもなマッチレース
[編集]それぞれ、上の段から、開催日、開催された国名、競馬場名、賞金。○は優勝した馬、●は敗北した馬。
- 1799年3月25日 イギリス ニューマーケット競馬場 3,000ギニー
- ○ハンブルトニアン(18世紀末の最強馬)
- ●ダイアモンド
- 1851年5月13日 イギリス ヨーク競馬場 距離2マイル 1,000ポンド
- ○ザフライングダッチマン(1849年ダービー、セントレジャー優勝馬 6歳)
- ●ヴォルティジュール(1850年ダービー、セントレジャー優勝馬 5歳)
- 着差:1馬身
- 1920年10月12日 アメリカ ケニルワースパーク競馬場 距離10f 85,000ドル
- ○マンノウォー(「ビッグレッド」、21戦20勝のアメリカの至宝)
- ●サーバートン(アメリカの初代三冠馬)
- 着差:6馬身
- 1923年10月20日 アメリカ ベルモントパーク競馬場 距離12f 85,000ドル
- ○ゼヴ(1923年ケンタッキーダービー優勝馬)
- ●パパイラス(1923年ダービー優勝馬)
- 着差:5馬身
- 1938年11月1日 アメリカ ピムリコ競馬場 距離9.5f 15,000ドル
- 「世紀の対決」と呼ばれた、西海岸と東海岸それぞれの最強馬による対決。このマッチレースの模様は映画『シービスケット』の中でも描かれている。
- ○シービスケット(無冠)
- ●ウォーアドミラル(アメリカの4頭目の三冠馬)
- 着差:4馬身
- 1942年9月19日 アメリカ ナラガンセットパーク競馬場 距離9.5f 25,000ドル
- ○アルサブ(1942年プリークネスステークス優勝馬 4歳)
- ●ワーラウェイ(アメリカの5頭目の三冠馬)
- 着差:ハナ差
- 1947年9月27日 アメリカ ベルモントパーク競馬場 距離10f 100,000ドル
- ○アームド(無冠)
- ●アソールト(アメリカの7頭目の三冠馬)
- 着差:4/5馬身
- 1956年8月31日 アメリカ ワシントンパーク競馬場 距離10f 100,000ドル
- ○ナシュア(東海岸の王者)
- ●スワップス(西海岸の王者)
- 着差:6馬身1/2
- 1972年6月17日 アメリカ ハリウッドパーク競馬場 距離9f 250,000ドル
- ○コンヴィニアンス(5歳牝馬)
- ●タイプキャスト(7歳牝馬、天皇賞・秋優勝馬プリテイキャストの母)
- 着差:アタマ差
- 1974年7月20日 アメリカ ハリウッドパーク競馬場 距離10f 350,000ドル
- ○クリスエヴァート
- ●ミスマスケット
- 着差:50馬身
- 1975年7月6日 アメリカ ベルモントパーク競馬場 距離10f 225,000ドル
- ○フーリッシュプレジャー(1975年ケンタッキーダービー優勝馬)
- ●ラフィアン(1975年ニューヨーク牝馬三冠馬、無敗)
- 着差:無し(ラフィアンが競走中止したため)
- 2001年3月18日 アメリカ フリーホールド競馬場 距離4f
- 89連敗中の人気馬ジッピーチッピー(サラブレッド)とスタンダードブレッドの非公式戦
- パディーズレディーは速歩(ペース)のうえ繋駕車を引く、ジッピーチッピーは20馬身後方からのスタート
- ○ジッピーチッピー(対サラ100戦0勝の人気馬)
- ●パディーズレディー(繋駕速歩競走用競走馬)
- 着差:クビ差
ヨット競技におけるマッチレース
[編集]ヨットの場合は、レース海域に2個から数個のブイ(マークと呼ばれる)を浮かべ、それらを定められた順序で回る。勝敗は、最終マークと、レースを監視・審判するコミッティ・ボートを結んだ線を先に越えたほうが勝ちとなる。この形式を採用する代表的なヨットレースとしてはアメリカスカップが有名。