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マツカレハ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マツカレハ
マツカレハ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: チョウ目(鱗翅目) Lepidoptera
: カレハガ科 Lasiocampidae
亜科 : カレハガ亜科 Lasiocampinae
: Dendrolimus
: マツカレハ D. spectabilis
学名
Dendrolimus spectabilis
(Butler, 1877)
和名
マツカレハ

マツカレハ(学名:Dendrolimus spectabilis)は、チョウ目カレハガ科に属する昆虫である。幼虫マツケムシと呼ばれることがある[1]日本全国およびシベリア樺太朝鮮半島に分布する。

特徴

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成虫は通常年1回、6月から10月(最盛期は7月から8月)に出現する[1][2]。成虫は茶褐色で翅(はね)に白の斑紋があるが、個体差が大きく斑紋がないものもある[1]。その年に伸びた針葉に100から300の塊状の卵を産卵する[1]

産卵後約1週間でふ化し、集団でマツ類の針葉の片側だけを鋸歯状に食害する(食害を受けた葉は赤変する)[1]。幼虫は1回脱皮すると分散し、マツ類の基部まで食害するようになる[1]

寄生植物はアカマツクロマツチョウセンマツなどマツ属、カラマツである[2]

10月頃に針葉さらに樹幹から根際や樹皮の割れ間などに移動し、若齢幼虫として越冬する[1][2]。その後、3月から4月頃に再び針葉上に移って食害し、針葉上、枝、幹などで蛹化する[1]

老熟幼虫は、体長約60ミリで頭部は暗褐色、胴部は銀から黄褐色で、全体に黒色長毛があり、背中の一部に毒毛をもつ[1]

被害

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森林への被害

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時には大量発生し、食害により地域の森林が大規模に枯損するほどになることがある。

1919年以降、樺太でマツカレハの食害が顕著となり、4年間で8800万石が被害に遭った[3]

また、1924年には樺太の大泊湾一帯で大量発生。一夜にして数百町歩の森林が食い荒らされたとの記録も残る[4]

毛虫皮膚炎

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幼虫は全体に黒色長毛があるが[1]、背中の一部に黒藍色(藍黒色)の毒毛(毒針毛)をもち、刺されると激痛を生じ腫れ上がる[1][2]

防除

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新梢上の針葉の卵塊を見つけてつぶす物理的方法がある[1]。薬剤としてはスミパイン乳剤やDDVP乳剤などを使用する方法があるが、薬剤の効果は若齢幼虫で高く、老熟幼虫では効果が劣るとされる[1]

日本では伝統的にマツの幹の胸高付近に藁でできた「こも」を巻くこも巻きが行われてきたが[1]、害虫防除効果は僅かで、むしろ益虫に越冬場所を提供する効果が指摘され、益虫を集めて殺すことにならないよう、こもの処理には十分な配慮が必要とされた[5]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n マツカレハ”. 長野県林業総合センタ- ミニ技術情報. 2024年10月22日閲覧。
  2. ^ a b c d 公園・街路樹等病害虫・雑草管理暫定マニュアル”. 環境省. p. 12. 2024年10月21日閲覧。
  3. ^ 下川耿史 『環境史年表 明治・大正編(1868-1926)』p333 河出書房新社 2003年11月30日刊 全国書誌番号:20522067
  4. ^ 上野金太郎編『北洋材十年史』1970年 全国北洋材協同組合連合会 p.34 記録編
  5. ^ 新穂千賀子,中居裕美,村上諒,松村和典. “姫路城のマツのこも巻き調査(2002年-2007年)”. 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨. 2024年10月21日閲覧。