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ミクソリディア旋法の協奏曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ミクソリディア旋法の協奏曲Concerto in modo misolidio)は、オットリーノ・レスピーギが作曲したピアノ協奏曲

概要

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レスピーギの教え子で後に妻となるエルザ・オリヴィエーリ=サンジャコモグレゴリオ聖歌を学んでおり、これがきっかけとなってレスピーギは昇階曲の神秘性に魅せられる。この音楽の旋律の可能性を素早く理解した彼は、より幅広い聴衆が理解できるようにこれを当代の様式に作り変えようとしたのであった。作曲は1925年の夏に驚くべき速さで進められてただちに出版社に持ち込まれた[1]。レスピーギは過去の仕事に再び手を加えることを極度に嫌っており、本作にも修正が加えられることはなかった[1]。作曲者本人としては大変な自信作であり、他の自作が忘れ去られたとしても本作は生き残るであろうと考えていたという[2]

初演は1925年12月31日ニューヨークカーネギーホールにおいて行われた。ピアノ独奏は作曲者自身、ウィレム・メンゲルベルク指揮ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏であった[3]。これがレスピーギのアメリカデビューであった[2]。聴衆からは温かく迎えられたものの、オーリン・ダウンズは楽曲の出来栄えに関して懸念を表明している。作曲者自身の独奏、ハインツ・フーガーがタクトを握ったアムステルダムコンセルトヘボウベルリン(1926年11月11日)での演奏、並びにカルロ・ゼッキがソロを弾きベルナルディーノ・モリナーリが指揮したローマ(1927年4月10日)の演奏の評判は芳しくなく、作曲者の自信とは裏腹に本作はその後数十年の間忘れられることになる。

レスピーギのピアノ演奏は独学で習得したものであり、本作についても専門家ではない自らの演奏を念頭に作曲したと述べている。それゆえ演奏には「非ピアニスティック」な書法に由来する困難さが伴うと指摘されることもある[1]

楽曲冒頭にはモットーとして詩篇47篇から「Omnes gentes plaudite manibus」(もろもろの民よ、手を打ち)が引用されている[1]

演奏時間

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約39分[4]

楽器編成

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ピアノ独奏、フルート2、ピッコロオーボエ2、コーラングレクラリネット2(BとA)、ホルン4(F)、トランペット2(B)、トロンボーン3、テューバティンパニハープ弦五部

楽曲構成

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第1楽章

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Moderato

この楽章にはグレゴリオ聖歌から『Viri Galilaei』(ガリラヤ人たちよ)が引用されている[1]。オーケストラが短く変ホ音を奏したのに続き、ピアノが聖歌の旋律を朗々と歌い上げる(譜例1)。

譜例1


 \relative c'' {
  \new PianoStaff <<
   \new Staff { \key aes \major \tempo "Moderato" \time 3/2 \partial 16
    r16 r1\fermata <es es,>4-> ^\markup { \italic { a fantasia } } <es es,>->
    <es aes, es>8 <aes aes,> <g g,> <aes aes,> <bes bes,> <aes aes,> <c c,> <bes bes,> <bes bes,>2 \bar ""
    \times 2/3 { <bes es, bes>4 <bes es, bes> <bes es, bes> }
    <bes es, bes>16[ <c es, c> <bes es, bes> <aes es aes,>] <aes es aes,>8. <bes es, bes>16 <aes es aes,>4 \bar ""
   }
   \new Dynamics {
    s16 s1 s2-\ff
   }
   \new Staff { \key aes \major \time 3/2 \clef bass
    r16 r1\fermata es,,4-> es-> \acciaccatura <aes, aes,>8 <c' aes es> aes g aes bes aes c bes bes2 \bar ""
    \acciaccatura <aes, aes,>8 \times 2/3 { <des' es, des>4 <des es, des> <des es, des> }
    <des es, des>16[ <es es,> <des es, des> <c es, c>] <c es, c>8. <des es, des>16 <c es, c>4 \bar ""
   }
  >>
 }

比較的長い冒頭のピアノ独奏部、及び管弦楽が加わり続く部分も譜例1を素材に展開される。やがて譜例2の新しい主題が出て、この主題を中心に進んでいく。

譜例2


\relative c'''' \new Staff \with { \remove "Time_signature_engraver" }  {
 \key c \major \tempo "Più moderato, espressivo" \time 3/2 \partial 2*5/2
  \ottava #1 <c g e c>4. <a e a,>8 <g d g,>4 \ottava #0 <e~ b~ e,~>2
  <e b e,>4 <c g c,>4( <d a d,>4. <a e a,>8) <g~ d~ g,~>2\> ( <g d g,> <a e a,>2.\!
}

管弦楽が譜例1を奏した後でピアノが急速なアルペッジョを奏で始めるが、ここで聞かれるカノン風の楽想が第3の主題といえる[1]。再び譜例1を中心とした進行に戻り、独奏ピアノのカデンツァに至る。カデンツァは静かに進んでいき、譜例2の回想から盛り上がり頂点を迎える。最後はピアノが鐘の音のような和音を淡々と続け、管弦楽が譜例1を響かせつつ静かに閉じられる[1]

第2楽章

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Lento

三部形式[1]。聖歌『Alléluia』(アレルヤ)が引用されている。ピアノの静かな和音の上で管弦楽が譜例3を奏でて開始する。

譜例3


\relative c \new Staff {
 \key des \major \tempo "Lento" \time 5/4 \clef bass
  es4_\markup { \dynamic p \italic espress. }( es8 aes bes16 des bes8 ges aes aes4-- ) \clef treble
  bes8( des es16 f des8 aes bes16 des c bes aes4.)
  bes8\cresc ( des\! es16 f des8 aes bes16 des c bes aes4.)
}

同じ旋律が繰り返された後ピアノが新しい素材を出し、オーケストラのコラールを挟んでピアノの急速な音型へと発展する。これを繰り返し、ピアノの独奏部、休止部を経て穏やかに推移する。やがて譜例3が再現されてクライマックスを形成するが、その終わりにピアノの独奏部が置かれてアタッカで終楽章へ接続される。

第3楽章

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Allegro energico.

パッサカリア。主題と18の変奏で構成される[1]。聖歌『Kyrie』(キリエ)が引用される。ピアノによる力強い主題の提示に開始する(譜例4)。

譜例4


 \relative c {
  \new PianoStaff <<
   \new Staff { \key aes \major \tempo "Allegro energico" \time 3/4 \clef bass
    es4-> es-> es16 des8 bes16 des8 es16 f es4-> es-> es16( aes) aes8-. aes4.-^ g16 es f es des8 es4-> es->
   }
   \new Dynamics {
    s2-\ff
   }
   \new Staff { \key aes \major \time 3/4 \clef bass
    <es, es,>4-> <es es,>-> <es es,>16 <des des,>8 <bes bes,>16
    <des des,>8 <es es,>16 <f f,> <es es,>4-> <es es,>->
    <es es,>16( <aes aes,>) <aes aes,>8-. <aes aes,>4.-^ <g g,>16 <es es,>
    <f f,> < es es,> <des des,>8 <es es,>4-> <es es,>->
   }
  >>
 }

冒頭の勢いを保ったまま進んでいくと、ピアノの高音でのグリッサンドが特徴的な変奏で静まっていく。やがて明るい調子に転じるが長くは続かず、キビキビとした変奏に戻っていく。自在なピアノ書法により再び明るい変奏が行われ、最後は金管楽器による堂々とした主題の再現を経て力強く全曲に終止符を打つ。

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i Concerto in Modo Misolidio for Piano and Orchestra, Three Preludes on Gregorian Themes”. NAXOS. 2019年10月12日閲覧。
  2. ^ a b Siepmann, Jeremy. Booklet for Respghi Piano Concerto in A minor, Concerto in modo misolidio. CHAN9285.
  3. ^ Concerto in modo misolidio BNF
  4. ^ ミクソリディア旋法の協奏曲 - オールミュージック. 2018年10月11日閲覧。

参考文献

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  • CD解説 RESPIGHI: Piano Concerto in A minor, Concerto in modo misolidio, CHANDOS, CHAN9285
  • CD解説 RESPIGHI: Concerto in Modo Misolidio for Piano and Orchestra / Three Preludes on Gregorian Themes, NAXOS, 8.220176
  • 楽譜 Respighi: Concerto in modo misolidio, Bote & Bock, Berlin, 1926

外部リンク

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