ジュール・ミシュレ
ジュール・ミシュレ(Jules Michelet、1798年8月21日 - 1874年2月9日)は、19世紀フランスの歴史家。「ルネサンス」の造語者。
生涯
[編集]パリのトラシ街 (fr, 現在のパリ2区) 生まれ。印刷業者の父の仕事を手伝いながら勉強に励んだ。リセ・シャルルマーニュ(現在のパリ4区)を経て、1819年に文学博士となり、1821年にアグレガシオンに通り、1827年に高等師範学校の歴史学教授となる。ヴィーコの歴史論・哲学の影響を受けた。1830年の七月革命を境として、王党カトリック的立場を離れ、自由主義に転じた。1831年、国立古文書館の歴史部長。1834年、ソルボンヌ大学教授としてギゾーの講座の代行者。1838年からコレージュ・ド・フランスで教授[1]となり教鞭をとった。これ以降、民主主義的・反教権的になり、保守化した当時の支配者ルイ・フィリップや、体制側のギゾー批判を行った。
1848年に二月革命が起きると熱狂的に支持した。1852年、ナポレオン3世への宣誓を拒否し、コレージュ・ド・フランスの教授の地位を追われた。晩年は隠棲し、博物誌シリーズなどを著述。
その歴史記述の手法は、過去を生き生きと再現し、つまびらかに描写することにあった。また、国家・政府や人物を、倫理の象徴のように思わせるところにも特徴があった(その点に、ロラン・バルトは着目する)。歴史の中での民衆の動きを捉え、アナール学派にも影響を与えているとされる。なお、『フランス史』第7巻(1855年)においてフランスのルネサンス(フランソワ1世以降)について記述しており、これが「ルネサンス」という用語を学問的に使用した最初の例とされる。イエール (ヴァール県)で死去し、パリのペール・ラシェーズ墓地に葬られた。
著作
[編集]- ローマ史(1831)
- フランス史(1833-1843)
- 『ジャンヌ・ダルク』(中公文庫、改版)は「フランス史 中世」の一章
- ルネサンス以降「十六世紀史」(1855-1867)- 論創社 7巻予定(2019年-)
- 19世紀(1872-1873)3巻
- フランス革命史(1847-1853)7巻
- 民衆(1846年)みすず書房
- 博物誌 鳥(1856年)思潮社→ちくま学芸文庫
- 博物誌 虫(1857年)思潮社→ちくま学芸文庫
- 女(1860年)藤原書店
- 海(1861年)藤原書店
- 山(1868年)藤原書店
- 魔女(1870年) 現代思潮社→岩波文庫(上下)
- 映画『哀しみのベラドンナ』(1973年)の原作にもなった。以下は主に編訳
- 『愛』 現代思潮社(上下)→中公文庫(改版)
- 『世界史入門 ヴィーコから「アナール」へ』 藤原書店
- 『人類の聖書 多神教的世界観の探求』 藤原書店
- 『全体史の誕生 若き日の日記と書簡』 藤原書店
- 『学生よ 1848年革命前夜の講義録』 藤原書店(新版刊)
- 『民衆と情熱』 藤原書店(全2巻)。日記
- 『万物の宴 すべての生命体はひとつ』藤原書店
研究・評伝
[編集]- ロラン・バルト『ミシュレ』 藤本治訳、みすず書房、1974年、新装版2002年
- リュシアン・フェーヴル『ミシュレとルネサンス』「歴史」の創始者についての講義録』
- 大野一道『ミシュレ伝 自然と歴史への愛』藤原書店、1998年
- 大野一道『「民衆」の発見 ミシュレからペギーへ』藤原書店、2011年。続編
- ヴェルナー・ケーギ『ミシュレとグリム』 西澤龍生訳、論創社、2004年
- 立川孝一『歴史家ミシュレの誕生』藤原書店、2019年