ミミウイルス科

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ミミウイルス科
ミミウイルスの電子顕微鏡像
分類
レルム : ウァリドナウィリア Varidnaviria
: バンフォルドウイルス界 Bamfordvirae
: 巨大核質DNAウイルスNucleocytoviricota
: メガウイルス綱 Megaviricetes
: イミテルウイルス目 Imitervirales
: ミミウイルス科 Mimiviridae

ミミウイルス科 (Mimiviridae) はウイルスの分類における一科である。肉質虫を主な自然宿主とする。2014年現在、公式には二種二属が知られている[1][2]。ミミウイルス科は、アスファウイルス科イリドウイルス科フィコドナウイルス科英語版ポックスウイルス科Dinodnavirus[訳語疑問点]などと共に巨大核質DNAウイルスに分類される。

歴史[編集]

この科で最初に見付かった種、ミミウイルスは2003年に発見された[3]

分類[編集]

この科には未だ二種しか分類されていないが、未だ発見・分類されていない種が数多く存在するとされる[4][5]。例えば、Chrysochromulina ericina virus 01、Phaeocystis pouchetii virus 01、Pyramimonas orientalis virus 01[訳語疑問点]などがこの科に分類されるのではないかと考えられている。これらのウイルスは単離されたものの未だ詳しく調べられていない。

現状、下位分類として二つの属に分けられている[2][6]。一つ目の属はミミウイルス属と命名され、さらにA (ミミウイルスなど)、B (ムームーウイルス)、C (メガウイルス・キレンシス、 Courdo7、Courdo 11、Terra1など) の三つの系統に分けられている[7]。ミミウイルス科の大部分はミミウイルス属に属するものと見られる[6]。さまざまなミミウイルス科のヴィロファージは、ミミウイルスレポーターを用いて分離できる[7]。もうひとつはカフェテリアウイルス属英語版で、カフェテリア・レンベルゲンシスウイルス英語版がこれに分類される。すくなくとも17種がこの科に属するのではないかとされるが、ICTVが2014年までに公式に認めているのは二種だけである[2]

構造[編集]

ミミウイルス科のウイルスは丸い20面体の形状をもち、T=972からT=1141の間、およびT=1200の対称性を持つ。直径は 400 nm ほどで、長さは 125 nm ほどである。1200 kb ほどの大きさで線形かつセグメントに分かれないゲノムを持つ。ゲノム中に911個のORFがある[1]

構造 対称性 カプシド ゲノム配置
ゲノム分節
Mimivirus 20面体 T=972-1141 or T=1200 (H=19 +/- 1, K=19 +/- 1) 線形 非分節
Cafeteriavirus 20面体 線形 非分節

生活環[編集]

増殖形態は DNA strand displacement model[訳語疑問点]をとる。 DNA鋳型転写により転写される。肉質虫を主な自然宿主とする[1]

宿主 組織向性 侵入形態 放出形態
増殖サイト 集合サイト 伝達
ミミウイルス 動物プランクトン なし 不明 不明 不明 不明 受動拡散
カフェテリアウイルス 肉質虫 なし 不明 不明 不明 不明 受動拡散

分子生物学[編集]

レンチルウイルスのゲノムにはヴィロファージ (Sputnik 2) のゲノムが組込まれており、 transpoviron[訳語疑問点]と呼ばれる可動遺伝要素となっていることが報告されている。Transpoviron[訳語疑問点]は線形のDNA要素で、およそ7キロ塩基対の大きさ、6から8のタンパク質コーディング遺伝子を含み、そのうち二つはウィロファージ遺伝子と相同である。

臨床[編集]

ミミウイルス類と肺炎との関連が指摘されているが、どこまでの関連性があるかは現在不明である[8]。この科のウイルスでヒトから単離されたのは LBA 111 だけである[9]。ミミウイルス属と関節リウマチとの関連も示唆されている[10]

関連項目[編集]

参照文献[編集]

  1. ^ a b c Viral Zone”. ExPASy. 2015年6月15日閲覧。
  2. ^ a b c Virus Taxonomy: 2014 Release”. 2015年6月15日閲覧。
  3. ^ Suzan-Monti M, La Scola B, Raoult D (2006) Genomic and evolutionary aspects of Mimivirus. Virus Res 117(1):145-155
  4. ^ Ghedin E, Claverie JM (2005) Mimivirus relatives in the Sargasso sea. Virol J. 2:62
  5. ^ Monier A, Claverie JM, Ogata H (2008) Taxonomic distribution of large DNA viruses in the sea. Genome Biol. 9(7):R106.
  6. ^ a b Colson P, Fournous G, Diene SM, Raoult D (2013) Codon usage, amino acid usage, transfer RNA and amino-acyl-tRNA synthetases in mimiviruses. Intervirology 56(6):364-375. doi: 10.1159/000354557
  7. ^ a b Gaia M, Pagnier I, Campocasso A, Fournous G, Raoult D, La Scola B (2013) PLoS One 8(4):e61912. doi: 10.1371/journal.pone.0061912
  8. ^ Saadi H, Pagnier I, Colson P, Cherif JK, Beji M, Boughalmi M, Azza S, Armstrong N, Robert C, Fournous G, La Scola B, Raoult D (2013) First isolation of Mimivirus in a patient with pneumonia. Clin Infect Dis
  9. ^ Yoosuf N, Pagnier I, Fournous G, Robert C, La Scola B, Raoult D, Colson P (2013) Complete genome sequence of Courdo11 virus, a member of the family Mimiviridae. Virus Genes
  10. ^ Shah, N.; Hulsmeier, A. J.; Hochhold, N.; Neidhart, M.; Gay, S.; Hennet, T. (2013). “Exposure to Mimivirus Collagen Promotes Arthritis”. Journal of Virology 88 (2): 838–45. doi:10.1128/JVI.03141-13. PMC 3911627. PMID 24173233. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3911627/. 

外部リンク[編集]