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ミヤマゼンゴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミヤマゼンゴ
長野県八ヶ岳 2022年8月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : キキョウ類 Campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: エゾノシシウド属 Coelopleurum
: ミヤマゼンゴ C. multisectum
学名
Coelopleurum multisectum (Maxim.) Kitag. (1937)[1]
シノニム
  • Angelica multisecta Maxim. (1886)[2]
和名
ミヤマゼンゴ(深山前胡)[3]

ミヤマゼンゴ(深山前胡、学名: Coelopleurum multisectum)は、セリ科エゾノシシウド属多年草高山植物[3][4][5][6][7]。別名、ミヤマゼンコともいう[3][4][7]

特徴

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根茎は径1cmになり、垂直に伸びる。は直立し、中空でやや太く、上部で分枝して、高さは40-60cmになる。茎に縦稜が多数あり、上部では微毛が密生する。茎につくは1-3個あり、2-5回3出羽状複葉で、小葉の終裂片は小さく、小葉は長卵形から卵形で、長さ1-3cm、幅-20mm、先は鋭くとがり、縁に鋸歯があり、毛は生えない。葉柄の下部または全部が葉鞘となって袋状にふくらみ、ときに赤みをおびる[3][4][5][6][7]

花期は7-8月。枝先に径8-15cmの複散形花序をつけ、白色のを多数密につける。歯片は不明瞭。花の径は2.5-3mm、花弁は5個で、先はとがり内側に曲がる。複散形花序の下の総苞片は無いかときに1-2個あり、花柄は30-40個あり、長さ2-5cm、多くの稜があり、細毛が密生する。小花序の下の小総苞片は5-12個あり、線形から披針状長楕円形で、長さ2-10mm、幅0.3-1mm、ふつう単純であるがまれに羽状に分裂する。小花柄は30個ほどあり、長さ2-6mm、ほとんど無毛。雄蕊は5個あり、花柱は2個ある。果実は長さ4.5-5mmの楕円形、2個の分果からなり、分果に3個の背隆条があり、コルク質になって太く隆起し、無毛。油管は分果の表面側の各背溝下に各1個、分果が接しあう合生面に2個ある。染色体数は未算定[3][4][5][6][7]

分布と生育環境

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日本固有種[8]。本州の中部地方に分布し、亜高山帯から高山帯の砂礫地や草地に生育する[3][5][6][7][9]タイプ標本の採集地は、富士山白山御嶽山[2][3][4][9]

名前の由来

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和名ミヤマゼンゴは、「深山前胡」の意で、深山に生える前胡の意味[7]。「みやまぜんご」は牧野富太郎 (1907) による命名である[10]。漢名の「zh:前胡」は、セリ科カワラボウフウ属 Peucedanum のこと[11]

種小名(種形容語)multisectum は、「多くの切れこみのある」「多数に全裂した」の意味[12]

種の保全状況評価

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国(環境省)のレッドデータブックレッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[13]。石川県-準絶滅危惧(NT)。

ギャラリー

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分類

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本種と同属のものに、エゾノシシウド Coelopleurum gmelinii (DC.) Ledeb. (1844)[14]がある。茎は高さ1-1.5mになり、葉は1-2回羽状複葉、小葉に重鋸歯がある。葉柄の下部または全部が袋状にふくらむ。果実は長楕円形の分果になり、油管は多数ある。日本では東北地方、北海道に分布し、海岸に生育する[15]

また、同属に、エゾヤマゼンゴ C. rupestre (Koidz.) T.Yamaz. (1994)[16]がある。茎は高さ30-60cmになり、葉は1-2回羽状複葉、葉の表面にしわが多い。葉柄の中部以下が袋状にふくらむ。葉の裏面脈状に毛が生え、果実は楕円形の分果になり、短毛が生える。北海道に分布する。それに対し、本種の葉には毛が生えず、分果にも毛がない。本州の中部地方に分布する[3][4]。なお、YList[17]ではエゾヤマゼンゴをエゾノシシウド属の独立種としている[16]が、同種をエゾノシシウドの変種[9]または本種の変種 var. trichocarpum[8]もしくは品種 f. trichocarpum[6]とする見解もある。

さらに、茎や葉に短い軟毛が多く、北海道に分布するものを、ウスゲミヤマゼンゴ C. multisectum (Maxim.) Kitag. f. epichnoum Kitag. (1967)[18]と区分することがある[3][6]

脚注

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  1. ^ ミヤマゼンゴ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b ミヤマゼンゴ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d e f g h i 『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』p.350
  4. ^ a b c d e f 『原色新日本高山植物図鑑(I)』pp.168-169
  5. ^ a b c d 『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』pp.21-23
  6. ^ a b c d e f 鈴木浩司 (2017)「セリ科」『改訂新版 日本の野生植物 5』p.394
  7. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1253
  8. ^ a b 『日本の固有植物』p.99
  9. ^ a b c 『山溪カラー名鑑 日本の高山植物』pp.301-302
  10. ^ 牧野富太郎、みやまぜんご(新稱), The botanical magazine, 『植物学雑誌』, Vol.21, No.240, p.21, (1907).
  11. ^ Peucedanum L., 前胡属 qian hu shu, Flora of China
  12. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1503
  13. ^ ミヤマゼンゴ。日本のレッドデータ検索システム、2022年11月27日閲覧
  14. ^ エゾノシシウド 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. ^ 鈴木浩司 (2017)「セリ科」『改訂新版 日本の野生植物 5』pp.394-395
  16. ^ a b エゾヤマゼンゴ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  17. ^ YList「BG Plants 和名−学名インデックス」
  18. ^ 別名、ウスゲミヤマゼンゴ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献

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  • 清水建美著『原色新日本高山植物図鑑(I)』、1982年、保育社
  • 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』、1984年、保育社
  • 豊国秀夫編『山溪カラー名鑑 日本の高山植物』、1988年、山と溪谷社
  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 清水建美編・解説、門田裕一改訂版監修、木原浩写真『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』、2014年、山と溪谷社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム
  • 牧野富太郎、みやまぜんご(新稱), The botanical magazine, 『植物学雑誌』, Vol.21, No.240, p.21, (1907).

外部リンク

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