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ミヤマモジズリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ミヤマモジズリ
埼玉県秩父地方 2023年8月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: ラン科 Orchidaceae
: Hemipilia
: ミヤマモジズリ
H. cucullata
学名
Hemipilia cucullata (L.) Y.Tang, H.Peng et T.Yukawa (2015)[1]
シノニム
  • Orchis cucullata L. (1753)[1]
  • Gymnadenia cucullata (L.) Rich. (1818)[2]
  • Neottianthe cucullata (L.) Schltr. (1919)[3]
  • Ponerorchis cucullata (L.) X.H.Jin, Schuit. et W.T.Jin (2014)[4]
和名
ミヤマモジズリ(深山文字摺)[5]

ミヤマモジズリ(深山文字摺、学名Hemipilia cucullata)は、ラン科 Hemipilia 属の地生または着生の多年草[5][6][7][8]

2015年に、Ying Tang らによる、東アジアのラン科チドリソウ亜科の系統と分類の研究の成果により、本種はミヤマモジズリ属 Neottianthe から、Hemipilia 属に組み替えられた[1][3][9]

特徴

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地下の偽球茎は球状に肥厚する。は直立し、高さ10-20cmになり、茎の上部に3-4個の線形の鱗片葉が互生してつく。根出葉は2個つき、葉身は長楕円形で、長さ3-6cm、幅1-2.5cm、対生し平開する[5][6][7][8]

花期は7-9月。は淡紅紫色で、茎先に多数が総状につき、花は一方にに偏ってつくか螺旋状につく。花の下方には小型で披針形の苞葉がつく[5][6][7][8]。3個の萼片は卵形、2個の側花弁は線形で[6][8][注釈 1]、長さ6-8mm[7]、5個が集まって前方に屈曲してかぶと状になる[6]唇弁は狭いくさび形で、長さ7-8mmになって前方に向き、基部は白色で紅紫色の斑紋があり、先端は淡紅紫色で3中裂し、表面に微突起がある。唇弁の距は長さ5-6mm、湾曲して前方に向く。蕊柱は長さ1mmになり、紅紫色になる。花粉塊は2個で淡黄色、短い柄がある[5][6][7][8]

分布と生育環境

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日本では、北海道、本州の中部地方以北、四国に分布し、疎林や林縁、湿った岩場に生育する[7][8]。世界では、千島列島サハリン朝鮮半島中国大陸ヒマラヤシベリア東ヨーロッパに広く分布する[7]

名前の由来

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和名のミヤマモジズリは、「深山文字摺」の意で、深山に生え、「文字摺」すなわち、ネジバナ Spiranthes sinensis var. amoena に似て花が螺旋状につくことからついた[5][6][7]牧野富太郎 (1940) は、『牧野日本植物圖鑑』において、「和名ハ深山もぢずりニシテ其花穂ノ状もぢずり卽ちねぢばなニ似タレバ云フ」としている[11]

種小名(種形容語)cucullata は、「僧帽形の」「頭巾状の」の意味[12]

種の保全状況評価

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国(環境省)のレッドデータブック、レッドリストの選定は無い。
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[13]

  • 岩手県-Bランク
  • 宮城県-絶滅危惧I類(CR+EN)
  • 山形県-絶滅(EX)
  • 栃木県-絶滅危惧II類(Bランク)
  • 群馬県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 埼玉県-絶滅危惧II類(VU)
  • 東京都-絶滅危惧II類(VU)
  • 神奈川県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 新潟県-地域個体群(LP)
  • 富山県-絶滅危惧II類
  • 石川県-絶滅危惧I類(CR+EN)
  • 山梨県-準絶滅危惧(NT)
  • 徳島県-絶滅危惧I類(CR)
  • 愛媛県-絶滅危惧IA類(CR)
  • 高知県-絶滅危惧IB類(EN)

ギャラリー

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脚注

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注釈

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  1. ^ 萼片および側花弁について、里見信生 (1982)「ラン科」『日本の野生植物 草本I単子葉類』および遊川知久 (2015)「ラン科」『改訂新版 日本の野生植物1』では、「萼片および側花弁は同形で同長,狭披針形をなし」とされている[10][7]が、中島睦子 (2012)『ラン科植物図譜』の詳細な植物図によると、背萼片、側萼片および側花弁の形状が大きく異なり、特に側花弁は幅が約0.4mm、長さが約5.2mmの線形であること[8]から、「3個の萼片は卵形、2個の側花弁は線形」とした[6][8]

出典

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  1. ^ a b c ミヤマモジズリ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ ミヤマモジズリ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b ミヤマモジズリ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ ミヤマモジズリ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.126
  6. ^ a b c d e f g h 『新分類牧野日本植物図鑑』p.247
  7. ^ a b c d e f g h i 遊川知久 (2015)「ラン科」『改訂新版 日本の野生植物1』p.216
  8. ^ a b c d e f g h 中島睦子 (2012)『ラン科植物図譜』p.70, p.316
  9. ^ Ying Tang, Tomohisa Yukawa, Richard M Bateman, Hong Jiang, and Hua Peng. “Phylogeny and classification of the East Asian Amitostigma alliance (Orchidaceae: Orchideae) based on six DNA markers” (英語). National Library of Medicine. 2023年10月18日閲覧。
  10. ^ 里見信生 (1982)「ラン科」『日本の野生植物 草本I単子葉類』p.201
  11. ^ 牧野富太郎 (1940)、「みやまもぢずり」、『牧野日本植物図鑑(初版・増補版)インターネット版』p.703
  12. ^ 『新分類牧野日本植物図鑑』p.1489
  13. ^ ミヤマモジズリ、日本のレッドデータ検索システム、2023年10月17日閲覧

参考文献

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外部リンク

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