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ミーゼス応力(ミーゼスおうりょく、英: von Mises stress)とは、物体内部に生じる応力状態を単一の値で示すために用いられる相当応力の一つ。その名前はリヒャルト・フォン・ミーゼスに由来する。
本来、応力は3次2階対称テンソル場であり、その状態を正確に表すためには6つの値を記述しなければならない。しかし、それでは実際にどのように力がかかっているのか理解することが非常に難しくなる。そのため、応力状態をひとつの数値に代表させ、スカラー場として表し理解しやすくするためにミーゼス応力は用いられる。
ミーゼス応力は延性材料の破壊基準、および塑性変形に関係する力の基準としてよく用いられる[1]。
ミーゼス応力σMisesは主応力σ1、σ2、σ3を用いて次式で表される:
または、偏差応力テンソルの2次不変量J2 を用いて、
と表すこともできる[1]。
ミーゼス応力は等方応力(静水圧応力)状態においては 0 である。また、単軸引張状態[2]ではその引張応力に一致する[1]。
主応力空間[3]では、ミーゼス応力が一定の曲面は静水圧軸[4]からの距離が一定であるような円筒形状となる。
- ^ a b c 京谷孝史 著、非線形CAE協会 編『よくわかる連続体力学ノート』森北出版、2008年、61-62頁。ISBN 978-4-627-94811-2。
- ^ σ1 ≠0, σ2 =σ3 = 0 の応力状態
- ^ 3つの主応力を直交座標軸にとった空間
- ^ σ1 =σ2 =σ3の直線