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ムカシゼミ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ムカシゼミ科
生息年代: 200–0 Ma[1]
WHITE (1845, Pl.4),
Tettigarcta tomentosa 図版
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 半翅目(カメムシ目) Hemiptera
上科 : セミ上科 Cicadoidea
: ムカシゼミ科 Tettigarctidae
学名
Tettigarctidae
Distant, 1905
[1][2][3]
タイプ属
Tettigarcta White[2]
シノニム
  • Cicadoprosbolidae Evans, 1956
  • Protabanidae Hong, 1982[1][2][3]
和名
ムカシゼミ科[4][5]

チカメゼミ科[6]

亜科

ムカシゼミ科[4][5](ムカシゼミか、Tettigarctidae)はセミ上科に属するのひとつ。複数の化石種と2種の現生種が含まれる[1][2][3]チカメゼミ科[6]とも呼ばれる。

概要

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本科はセミ科姉妹群であり、セミ科とともにセミ上科を構成する[1][2][3]。大きな前胸背板英語版が後方に伸長し中胸背英語版の大部分を覆うこと、前翅RP脈が翅の基部近くから生じること、鼓膜を欠くことなどが、セミ科と異なる本科の特徴となる[2][7]

本科は中生代に栄えた分類群で[1][2][3][7]、既知の最古の化石記録はおよそ2億年前のものである[1]ジュラ紀から白亜紀にかけてとくに繁栄し、体サイズなどの形態もかなり多様化していたと見られる[1]新生代の化石記録は少ない。化石記録は北半球からのものを主とするが[2]南半球からも少数の化石が得られている[1][3][7]。20以上の化石種が知られるが、現生するのはオーストラリアおよびタスマニアに分布する Tettigarcta属の2種のみであり、これらは遺存的な分類群と見なされる[1]

分類

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本科のタイプ属 Tettigarcta ははじめセミ科に分類されていたが[8]W.L. Distant によって独立のとされ、E.E. Becker-Migdisova によって独立の科として認められた[1][2]分類体系によっては本科を科として認めずにセミ科または Tibicinidae[注釈 1]亜科とするも場合もあるが、現在では本科とセミ科をセミ上科の二大系統とする分類体系がひろく認められており、現生種を対象とした分子系統解析の結果もこれを支持している[2]

下位分類

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本科は、翅脈相によって Cicadoprosbolinae亜科と Tettigarctinae亜科の2亜科に分けられる[1][2]。本科の下位分類にかんしては Shcherbakov (2008) に詳しいが、2008年以降も新種記載が相次いでいる[3]。ここでは MOULDS (2018) による化石種の目録を紹介する。現生種にかんしては後述する。

亜科 Cicadoprosbolinae[3]
学名 年代 (Ma) 地質時代 産地
'Liassocicada' ignota (Brodie, 1845) Turutanoviini 209-201 三畳紀末(レーティアン イングランド
Diphtheropsis incerta Martynov, 1937 Cicadoprosbolini 201–164 ジュラ紀前/中期 タジキスタン
Shuraboprosbole plachutai Becker-Mig., 1949 Turutanoviini 201–164 ジュラ紀前/中期 タジキスタン
Cicadoprosbole sogutensis Becker-Mig., 1947 Cicadoprosbolini 199–191 ジュラ紀前期(シネムーリアン キルギスタン
Diphtheropsis sp. Cicadoprosbolini 199–191 ジュラ紀前期(シネムーリアン) キルギスタン
Paraprosbole rotruda Whalley, 1985 Turutanoviini 197–191 ジュラ紀前期(後期シネムーリアン) イングランド、Stonebarrow
Turutanovia sp. Turutanoviini 183–174 ジュラ紀前期(トアルシアン ロシアシベリア南部
Shuraboprosbole sp. Turutanoviini 174–170 ジュラ紀中期(アーレニアン ロシア、シベリア南部
Turutanovia sp. Turutanoviini 174–164 ジュラ紀中期 モンゴル中央部
Hirtaprosbole erromera Liu, Yao & Ren, 2016 ?Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国内モンゴル自治区Daohugou
Macrotettigarcta obesa Chen & Wang, 2016 Cicadoprosbolini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Maculaprosbole zhengi Zheng, Chen & Wang, 2016 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Sanmai kongi Chen, Zhang & B.Wang, 2016 ?Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Sanmai mengi Chen, Zhang & B.Wang, 2016 ?Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Sanmai xuni Chen, Zhang & B.Wang, 2016 ?Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Shuraboprosbole daohugouensis W. & Z., 2009 Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Shuraboprosbole media B.Wang & Zhang, 2009 Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Shuraboprosbole minuta B.Wang & Zhang, 2009 Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Tianyuprosbole zhengi Chen et al., 2014 ?Turutanoviini 166–157 ジュラ紀中/後期 中国、内モンゴル自治区、Daohugou
Turutanovia karatavica Becker-Mig., 1949 Turutanoviini 164–152 ジュラ紀後期(オックスフォーディアンキンメリッジアン カザフスタン
Elkinda hecatoneura Shcherbakov, 1988 Cicadoprosbolini 140–129 白亜紀前期(バランギニアンオーテリビアン ロシア、外バイカル、Undurga
Shaanxiarcta perrara (Zhang, 1993)

(= Involuta perrara Zhang, 1993)

Cicadoprosbolini 133–129 白亜紀前期(オーテリビアン) 中国北部、山西省
?Turutanovia sp. Turutanoviini 133–125 白亜紀前期(オーテリビアン/バレミアン モンゴル西部
Hylaeoneura lignei Lameere & Severin, 1897 Cicadoprosbolini 129–125 白亜紀前期(バレミアン) ベルギーBernissart
Architettix compacta Hamilton, 1990 Architettigini 122–113 白亜紀前期(後期アプチアン ブラジル北東部


Paratettigarcta zealandica
Kaulfuss & Moulds, 2015[7]
亜科 Tettigarctinae[3]
学名 年代 (Ma) 地質時代 産地
Kisylia psylloides Martynov, 1937 Meunierini 201–174 ジュラ紀前期 キルギスタン
Liassocicada antecedens Brodie, 1953 Protabanini 183–182 ジュラ紀前期(前期トアルシアン) ドイツ
Liassocicada mueckei (Nel, 1996) Protabanini 183–182 ジュラ紀前期(前期トアルシアン) ドイツ
Protabanus chaoyangensis Hong, 1982 Protabanini 174–164 ジュラ紀中期 中国、遼寧省
Sunotettigarcta hebeiensis Hong, 1983 Protabanini 174–164 ジュラ紀中期 中国、河北省
Sunotettigarcta kudryashevae Shcherbakov, 2009 Protabanini 164–152 ジュラ紀後期(オックスフォーディアンキンメリッジアン カザフスタン
Magrebarcta africana (Nel et al., 1998)

(= Liassotettigarcta africana)

Protabanini 125–113 白亜紀前期(アプチアン) チュニジア
Tettagalma striata Menon, 2005 Protabanini 122–113 白亜紀前期(後期アプチアン) ブラジル北東部
Meuniera haupti Piton, 1936 Meunierini 59–56 暁新世サネティアン フランスMenat
Eotettigarcta scotica Zeuner, 1944 ?Protabanini 59–56 暁新世(サネティアン) スコットランドマル島
?Tettigarcta sp. ?Tettigarctini 48–41 始新世中期(ルテシアン ドイツ、Eckfeld Maar
Paratettigarcta zealandica Kaulfuss & Moulds, 2015 Tettigarctini 23–16 中新世前期 ニュージーランド、Hindon Maar

現生種

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ムカシゼミ科 現生種
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 半翅目(カメムシ目) Hemiptera
上科 : セミ上科 Cicadoidea
: ムカシゼミ科 Tettigarctidae
亜科 : Tettigarctinae
: Tettigarctini[1]
: Tettigarcta
: T. crinita
 および
T. tomentosa
学名
Tettigarcta crinita Distant, 1883

Tettigarcta tomentosa White, 1845[7]

上述のとおり、本科の現生種として知られるのは Tettigarcta属に属する2種のみである[1][2][7]。このうち、T. crinita はオーストラリア南東部に、T. tomentosa はタスマニアにそれぞれ分布する[7]。両種はたがいに非常に近縁であるとされる[2]。成虫は日中は樹皮下に隠れ、夕方や日没後に活動を始める。耐寒性を示し、冬にも見られるという[1]

成虫は頭の横幅が小さく[1][7]、体表に毛を多く有する[1][注釈 2]。雌雄ともに小さな発音膜英語: Tymbalを有するが、共鳴室や鼓膜器官を欠き、セミ科のようなによる種内コミュニケーションは行わない。音は生成しないものの、この発音膜は基質振動を生成し、振動によるコミュニケーションのために機能する[1][7][9][注釈 3]

脚注

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注釈

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  1. ^ チッチゼミ亜科 Tibicininae[4]としてセミ科の下位におくのが一般的である[2]
  2. ^ これらの形態的特徴は共有原始形質ではなく、Tettigarcta属のみが示す派生的な形質である可能性が指摘されている[1][7]
  3. ^ 基質振動を介したコミュニケーションは、本科にかぎらず多くの半翅目昆虫で見られる[10]

出典

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参考文献

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和文

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  • 石川, 良輔(編)『節足動物の多様性と系統』岩槻, 邦男; 馬渡, 峻輔(監修)、裳華房、2008年。 
  • 山崎, 柄根『学研の図鑑 世界の昆虫』朝比奈, 正二郎(監修)、学習研究社、1977年、99頁。 

英文

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  • Alt, Joscha A.; Lakes-Harlan, Reinhard (2018). “Sensing of Substrate Vibrations in the Adult Cicada Okanagana rimosa (Hemiptera: Cicadidae)”. Journal of Insect Science 18 (3). doi:10.1093/jisesa/iey029. 
  • MOULDS, M.S. (2005). “An appraisal of the higher classification of cicadas (Hemiptera: Cicadoidea) with special reference to the Australian fauna”. Records of the Australian Museum 57 (3): 375-446. doi:10.3853/j.0067-1975.57.2005.1447. ISSN 0067-1975. https://journals.australian.museum/moulds-2005-rec-aust-mus-573-375446/. 

外部リンク

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