コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

メタンチオール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メタンチオール
識別情報
CAS登録番号 74-93-1 チェック
PubChem 878
ChemSpider 855 チェック[chemspiders]
UNII 2X8406WW9I チェック
EC番号 200-822-1
国連/北米番号 1064
KEGG C00409 チェック
ChEBI
RTECS番号 PB4375000
3DMet B00105
特性
化学式 CH3SH
モル質量 48.11 g·mol−1
外観 無色の気体[1]
匂い 腐ったキャベツや卵のような匂い
密度 0.9 g/mL (液体 at 0°C)[1]
融点

-123℃

沸点

5.95℃

への溶解度 2%
溶解度 アルコール、エーテル
蒸気圧 1.7 atm (20°C)[1]
酸解離定数 pKa ~10.4
危険性
GHSピクトグラム 可燃性急性毒性(高毒性)経口・吸飲による有害性水生環境への有害性
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H220, H331, H410
Pフレーズ P210, P261, P271, P273, P304+340, P311, P321, P377, P381, P391, P403, P403+233, P405, P501
NFPA 704
4
4
1
爆発限界 3.9%-21.8%[1]
許容曝露限界 C 10 ppm (20 mg/m3)[1]
半数致死量 LD50 60.67 mg/kg (哺乳類)[2]
半数致死濃度 LC50 3.3 ppm (マウス, 2時間)
675 ppm (ラット, 4時間)[2]
関連する物質
関連物質 エタンチオール
硫化水素
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

メタンチオール (methanethiol) は化学式 CH3SH で表されるチオールの一種である。メチルメルカプタン (methyl mercaptan) とも呼ばれる。腐ったタマネギのにおいがする無色の気体である。天然にはある種の種実類チーズなどにも含まれ、ヒトや動物の血液、脳、およびその他の組織中にも存在する。動物のから放出される。また、口臭の悪臭の成分のひとつである。

発生源

[編集]

メタンチオールはなどで有機化合物が腐敗することによって生じ、コールタール原油、および一部地域の天然ガス中にも含まれる。

海の表層水でジメチルスルホニオプロピオナート (DMSP) が藻類によって代謝される際の一次生成物である。メタンチオールの海水中の存在量 (0.3nM) は硫酸イオン (28mM) よりもはるかに低いが、海洋バクテリア類が蛋白質の製造に使う硫黄は、主にDMSPを分解してメタンチオールとして取り込んでいるものとされている。好気条件および嫌気条件において、バクテリアはメタンチオールのジメチルスルフィド (DMS) への変換も行う。しかしながら海洋表層水に存在するDMSは、大部分が他の経路によって生成したものである。DMSとメタンチオールは、共に嫌気条件の沈降物中での微生物によるメタン生成経路で利用される。

メチオニンから乳酸菌Geotrichum candidumなどの一部の酵母キノコなどにより生成される。嗅覚閾値は0.02ppbと強く、チーズではごく微量のメタンチオールが香りを特徴づけるのに重要な役割を果たす。ジメチルジスルフィドジメチルトリスルフィド、S-メチルチオ酢酸などに容易に代謝されるが、これらの代謝生成物もチーズの香りとして重要である[3]

用途

[編集]

プラスチック工業や殺虫剤の原料として製造される。パルプの製造過程では木材の腐敗生成物として発生する。チオール類はごく少量でも非常に強い悪臭を示すため、無臭のガスに添加してそれらが漏れたことを感知しやすくする付臭剤に使われる。

事件

[編集]

2005年12月26日、ロシアのサンクトペテルブルクの小売商店マキシドム (Maksidom) において、メタンチオールとおぼしきガスがまかれるという事件が起こった[4]。商店には「クリスマスの間営業を妨害する」という内容の脅迫状が届けられた。同じチェーンの店でも、タイマーでガスを放出するよう設定されたガラス製の容器が発見された。

出典

[編集]
  1. ^ a b c d e f NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0425
  2. ^ a b Methyl mercaptan”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2024年12月21日閲覧。
  3. ^ 井上重治『微生物と香り ミクロの世界のアロマの力』フレグランスジャーナル社、2002年8月1日、109頁。ISBN 4-89479-057-2 
  4. ^ Gas Sickens 78 in Russia FOXNews.com 2005年12月26日配信 2007年2月22日閲覧。

関連項目

[編集]