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ヤコビの虚数変換式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヤコビの虚数変換式(Jacobi's imaginary transformation)は、楕円テータ関数に関する以下のような恒等式である[1]

この恒等式の日本語の呼称は定まっておらず、ヤコビの虚数変換式、ヤコビのモジュラー変換式、あるいは単にヤコビ変換式とも呼ばれる。テータ関数は二変数の関数であるが、第二変数を純虚数の定数として第一変数に着目すれば「虚数変換式」という呼称が的を射て、第一変数を定数として第二変数に着目すれば「モジュラー変換式」という呼称が的を射る。

公式に関する注意点

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  • の定義は一意ではなく、いくつかの流儀があり文献によって異なるので注意が必要である[2](主として、の定義の違いが混乱を生んでいる)。この記事での定義は、D.Mumfordに従った[3]次のようなものである[2][4]
  • 「岩波数学公式集Ⅲ」p.48.では誤った式が書かれているので注意せよ。

楕円関数の虚数変換

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ヤコビの楕円関数はテータ関数の比により表される。楕円関数の周期をとすると

テータ関数の虚数変換式により

となり、楕円関数の虚数変数を得る。

証明

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の虚数変換式の両辺の比をして恒等的にであることを証明する。テータ関数の二重周期性により

であるから、の関数として二重周期を持つ。また、テータ関数は極を持たず、零点は

であるから、の関数として複素平面全体で有界である。したがって、リウヴィルの定理によりには依存しない。

分子のが奇数の項は正負で打ち消しあうから偶数のに改める。

先に示したようにに依存しないので

であり、にも依存しない定数である。その値は

である。

出典

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  1. ^ 梅村浩著「楕円関数論」東京大学出版会、2000年、ISBN 978-4130613033、pp.154-156, 357-358.
  2. ^ a b 梅村著「楕円関数論」p.118.
  3. ^ D.Mumford, Tata lectures on theta I and II, Birkhauser, Boston, 1983, ISBN 978-0817645724, ISBN 978-0817645694.
  4. ^ 森口繁一・宇田川銈久・一松信共著「岩波数学公式集Ⅲ」(新装版)1986年、ISBN 978-4000055093、p.46.