コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ヤッコエイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤッコエイ
保全状況評価[1]
DATA DEFICIENT
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
: トビエイ目 Myliobatiformes
: アカエイ科 Dasyatidae
: ヤッコエイ属 Neotrygon
: ヤッコエイ N. yakkoei
学名
Neotrygon yakkoei
Hata & Motomura, 2024
英名
Japanese Bluespotted maskray

ヤッコエイ(奴鱏、Neotrygon yakkoei)は、アカエイ科に属するエイの一種。

体色は黒色に縁取られた白から青みがかった淡色斑がある。両眼間隔域に広がる特徴的な模様のため、本種を含むヤッコエイ属は、英語でMaskrayとも呼ばれる。最大体盤幅(Disc width)は約42cm。ペットとしてTaeniura lymmaと区別されずに取引されるが、ヤッコエイの方が大きく体盤が菱形であるのに対し、T. lymmaは色彩が鮮やかで体盤が丸いことで区別できる[2]。寿命は最大18年と推定される。餌は魚介類。天敵はシュモクザメやシャチ[3]。主に東南アジアや台湾、日本では日本海、太平洋沿岸、島嶼域で見られる。様々な寄生虫が知られている。

分類

[編集]

これまで,日本産のヤッコエイとされていたものは同属のNeotrygon kuhliiやNeotrygon orientalisであるとされていたが,それらとは,形態的・遺伝的に異なるとされた.また,台湾から南シナ海に分布するNeotrygon varidensとも形態的・遺伝的に異なることが明らかとなった.日本をタイプ産地とする名義種は知られていなかったため,本種は新種となった.

分布

[編集]

現在のところ,日本のみに生息するとされており,北海道から八重山諸島まで記録がある。

形態

[編集]
尾には白黒の縞模様がある。

体盤は直径約42cm、長さ70cmになる[4]。体色は、背面は暗緑色で青い斑点が散らばり、腹面は白である。吻は短く、体盤に沿って緩く尖る[5]。明るい体色は警告色として機能する。尾長は体盤の約2倍で基部に2本の毒棘があり、その内1本は大きい。眼は明るい黄色で、周囲を見渡せるような位置にある。噴水孔は眼のすぐ後ろ[6]

生態

[編集]
エビが主な餌。

単独か小さな群れで生活する。多くの底生エイは砂に潜る習性を持つが、この種は捕食者から隠れる時を除いてそのような行動を行わない[6]

浅瀬で摂食するため餌の多様性は乏しいが、甲殻類・小魚・貝・多毛類などを食べる。獲物を鰭で押さえ込む行動が知られる。歯は餌を噛み潰す歯板に変化している[6]

無胎盤性胎生。胚は母体から分泌される子宮乳によって育つ。産仔数7で稚魚は15-33cm[7]。染色体は32対[5]

捕食者

[編集]
シャチは天敵の一つ

毒棘と警告色のため多くの生物は捕食を避けるが、シュモクザメは天敵の一つ。シャチも天敵で、特に若魚を好む[7][8]。シュモクザメはエイが弱るまで頭で海底に押さえつける[9]。シャチは砂中に隠れたエイを掘り起こし、空中に放り投げる。さらに、裏向きにされたエイは擬死状態になるため、シャチはエイに噛み付いてひっくり返し、エイの抵抗を防ぐ[10]

寄生虫

[編集]

様々な寄生虫が報告されている[11]

学名
条虫 Cephalobothriidae Cephalobothrium longisegmentumTylocephalum kuhli
Mixodigmatidae Trygonicola macroporus
Onchobothriidae Acanthobothrium bengalensAcanthobothrium confusumAcanthobothrium herdmaniAcanthobothrium pingtanensis
Phyllobothriidae Echeneibothrium trygonisPhyllobothrium ptychocephalumRhinebothrium shipleyiScalithrium shipleyiScalithrium trygonis
単生虫 Monocotylidae Dendromonocotyle kuhliiHeterocotyle chinensisMonocotyle kuhliiMonocotyle tritestis
吸虫 Bucephalidae Prosorhynchus clavatum
Didymozoidae Didymozoid larva

人との関わり

[編集]

観賞魚として取引されるが、性成熟時には一般的な家庭用水槽で扱えるサイズを超える[6]。肉は地域市場で燻製・塩漬け・干物などの形で利用されるが[1]、小さいため安価である[5]底引き網・三枚網・魚罠などで大量に漁獲されている。長さ約30cmの毒棘を持ち、毒液にはセロトニン5'-ヌクレオチダーゼホスホジエステラーゼが含まれる[12]

保護状況

[編集]

ジャワ海ではトロール漁やかけまわし漁で大量に漁獲されている。漁獲されるサメ・エイのうち2番目に重要な種であり、2006-2007年には1艘あたり約700kg漁獲されていた[1]

出典

[編集]
  1. ^ a b c "Neotrygon orientalis". IUCN Red List of Threatened Species. Version 3.1. International Union for Conservation of Nature. 2020.
  2. ^ (Randall 2005, p. 18)
  3. ^ Jacobsen, I. P.; Bennett, M. B. (2010). “Age and growth of Neotrygon picta, Neotrygon annotata and Neotrygon kuhlii from north-east Australia, with notes on their reproductive biology”. Journal of Fish Biology 77 (10): 2405–22. doi:10.1111/j.1095-8649.2010.02829.x. PMID 21155791. 
  4. ^ Species Fact Sheet-- Rays”. Shark Bay Ecosystem Research Project. December 18, 2011閲覧。
  5. ^ a b c Neotrygon kuhlii- Blue-spotted stingray (Müller & Henle, 1841)”. FishBase (2010年). December 30, 2011閲覧。
  6. ^ a b c d Blue Spot Stingray”. John G. Shedd Aquarium. December 18, 2011閲覧。
  7. ^ a b Bester, Cathleen (November 11, 2011). “Blue Spotted Stingray”. Ichthyology Department, Florida Museum of Natural History. 2012年3月22日閲覧。
  8. ^ Pablico, Grace Tolentino (June 23, 2006). “Predator Summary — Neotrygon Kuhlii”. FishBase. December 27, 2011閲覧。
  9. ^ Hammerhead Shark”. Aquatic Community (2006年). December 31, 2011閲覧。
  10. ^ How Whales Eat Sharks (television production). National Geographic TV. 31 December 2011.
  11. ^ Host-parasite Database”. Natural History Museum (November 13, 2011). 2012年3月22日閲覧。
  12. ^ Auerbach, M.D., Paul S. (April 20, 2009). “The Tragic Death of Steve Irwin”. Divers Alert Network. December 31, 2011閲覧。

参考文献

[編集]

外部リンク

[編集]
映像外部リンク
Blue spotted stingray swimming YouTube
Hand feeding a blue spotted stingrayYouTube
How Whales Eat Sharks National Geographic