コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ヤマハ・SYシリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

SYシリーズ(エスワイシリーズ)はヤマハシンセサイザーの機種の型番・商品名。1970年代、同社はSY-1、SY-2などSYを冠したアナログシンセサイザーを発売していた時期があるが、ここでは1980年代末から1990年代前半にかけて同社が発売したデジタルシンセサイザーについて記述する。

概要

[編集]

このシリーズの特徴は一部の機種を除きPCM音源(AWM2音源)とFM音源(AFM音源)のハイブリッド音源(RCM音源)を搭載し、両者をかけ合わせることで、音色を作りかえられるという点である。但し、膨大なパラメーターの操作が必要となため音色作成の難易度は高い。音楽業界では、シンセサイザーシーケンサーなどを組み合わせて1台で楽曲制作を完結できるようにした製品をワークステーションと言うが、SYシリーズもワークステーションとして設計されており、エフェクターや、一部の機種を除きデジタルフィルターも内蔵していた。更にシーケンサーも内蔵した。SYシリーズ登場前の1980年代には1億円以上する大型ワークステーションのシンクラヴィア等が幅を利かせていたが、SYシリーズ等の数十万円程度で買えるコンパクトなワークステーションが登場したことで業界全体としてワークステーションの普及とダウンサイジングが進んで行った。モジュールタイプ(鍵盤のない音源だけのタイプ)はTGシリーズと名付けられ、こちらも省スペースの用途で普及した。SYシリーズはハイエンド製品としてのコストパフォーマンスは非常に高かったが、シンクラヴィアと違ってサンプリングハードディスクレコーディングが不可能であったり、シーケンサーの機能に制約があるなど、性能的には一部劣っていた。この課題の解決は21世紀におけるDAWの成熟と普及を待つことになる。

AFM音源

[編集]

SYシリーズで特筆すべきAFM音源部分は、DXシリーズのFM音源より大幅に強化された。DXシリーズのオペレータはサイン波だけであったが、AFM音源ではサイン波以外に数種類の波形を選ぶことができた。フィードバックループがあるオペレータはDXでは1個だけだったが、AFM音源では3個になっている。オペレータの接続バリエーションであるアルゴリズムでは、たすき掛けのような複雑なものも装備された。さらに出力はレゾナンス付きのデジタルローパスフィルターを通り、フィルターカットオフをアナログシンセと同様、エンベロープジェネレータやLFOで変調することができた。さらにPCM波形でオペレータを変調することができた。この場合のキャリアとなるオペレータは0Hz固定に設定する必要があった。DXと同じ6オペレータであったが、これらの機能により非常に複雑な音作りが可能であった。しかし、機能をフル活用するには膨大なパラメータの手動設定が必要になるなど、利便性の面で欠点は多かった。そもそもPCM波形でオペレータを変調しても、変調が掛かりすぎてノイズだらけになる傾向があった。AFM音源は、DXシリーズから改良が続けられてきたヤマハのFM音源の最高峰と言える。しかし、広い自由度の中で実用的なパラメータの組み合わせは僅かであった。

後継機種

[編集]

94年には音色合成より伴奏データ作成を主眼に置いたWシリーズが発売され、それに移行したとも考えられるが、Wシリーズの発売後もSY99、SY85、SY35は継続販売されていた。直系の後継機種といえるのは、98年発売のハイブリッド音源を搭載するEXシリーズで、これらの発売に伴い製造中止となった。しかし、AFM音源はコスト高で利用者においても活用し切れず、プリセット中心のシンセの利用形態が広まった事もあって、これらの後継機種には搭載されなかった。

その後、2016年MONTAGEが発売されることで、ヤマハ製のFM音源搭載のハイブリッドシンセが久々に世に現れることとなった。

シリーズのモデル

[編集]
SY99
1991年発売。SYシリーズの最高峰モデル。76鍵、32音ポリフォニック。RCM音源を搭載している。PCM音源部は8MBのWAVE ROMで、267種類の波形を収録している。0.5MBのバッテリーバックアップされたスタティックRAMを標準装備(最大拡張時3MB)。サンプラーTX16Wの波形を読み込むことも可能である。FM音源部は6オペレーター、45アルゴリズム。最大27,000音、10ソング記録可能な16トラックシーケンサーを搭載。2系統最大4種類のエフェクトを同時使用可能。マスターキーボード機能も搭載。希望小売価格は420,000円(税別)[1]。なお、多数の基板を搭載しているため重量が19.6kg[2]もあり、頻繁な持ち運びは難しい。それどころか、単純に位置を動かすだけでも苦労するほどの重さである。別売りカードで波形を拡張可能[3]。本体添付のデモソングはチック・コリアが作成したデモソング冒頭の"Hi, I am Chick Corea. This is YAMAHA, S-Y Ninty Nine."というPCM音声ファイルを0.5MBのスタティックRAMにロードするため、フロッピーディスクで供給された。SY99はバブル期の集大成のような全部入りの仕様を備えたワークステーションであり、"King of Synthesizer"と言われていた。access結成前の浅倉大介が開発に携わり、浅倉自身もメインキーボードとして楽曲制作で多用した。
SY99 SOUND DISK
  • SD9901 EUROPEAN DANCE
  • SD9902 ANALOG SYNTH
  • SD9903 ORCHESTRAL INSTRUMENTS
  • SD9904 FILM COMPOSER
SOUND SOURCE UNLIMITED SOUND DISK for SY99
  • SY9501 GUITAR & BASS I
  • SY9502 GUITAR & BASS II
  • SY9503 ORCHESTRAL I
  • SY9504 ORCHESTRAL II
  • SY9505 SYNTHS I
  • SY9506 SYNTHS II
  • SY9507 ETHNIC
  • SY9508 DRUMS
  • SY9509 CLAVIERS
  • SY9510 BRASS & REEDS
  • SY901 RADICAL FILM TEXTURES
  • SY902 VECTOR EMULATIONS
  • SY903 SUPER R&B
  • SY904 ROCK,POP,ROLL
  • SY971 POP/ROCK/R&B
  • SY972 ATMOSPHERIC & FILM
SY77
SY77
1989年発売。デジタルシンセサイザーのSYシリーズの最初のモデル。61鍵、32音ポリフォニック。PCM音源部は4MBのWAVE ROMで、112種類の波形を収録している。最大16,000音記録可能な16トラックシーケンサーを搭載。希望小売価格は300,000円(税別)。3Uサイズにした、モジュール版TG77もある。別売りカードで波形を拡張可能。SY99同様にフロッピーディスクドライブを搭載している[4]。またSY77は、当時の音楽シーンを揺るがしたほどの実力だった。
SY77/TG77 VOICE DATA CARD 音色カード 各64ボイス収録
  • VC7701 SHOFUKU ACT1
  • VC7702 SHOFUKU ACT2
  • VC7703 R&D TOKYO SELECTION VOL.1 STUDIO PLAYER
  • VC7704 R&D TOKYO SELECTION VOL.2 90's POP SOURCE
  • VC7705 JSPA EDITION VOL.1 春夏秋冬
  • VC7706 JSPA EDITION VOL.2 最新流行音色
  • VC7707 R&D TOKYO SELECTION VOL.3 SYNTH ETHNIC
  • VC7708 R&D TOKYO SELECTION VOL.4 SUPER PAD
SY77 VOICE DISK
  • VD77 SPECIAL SELECTION from TG77
SY77 DISK&BOOK
  • DB-01 SOUND COLLAGE/AMERICAN STYLE
  • DB-02 SOUND COLLAGE/BRITISH STYLE
SY77/TG77 SOUND CARD SET 波形カード+音色カード 各波形+64ボイス収録
  • S7701 SAX1
  • S7702 DRUMS1
  • S7704 BRASS SECTION
  • S7705 STRINGS SECTION
  • S7731 SYN WAVE1
  • S7732 SYN WAVE2
  • S7751 ROCK&POP
SOUND SOURCE UNLIMITED SOUND DISK for SY77/TG77 各64ボイス+1デモ曲収録
  • SY701 ALCHEMY COLLECTION
  • SY702 PLATINUM COLLECTION
  • SY703 MANHATTAN COLLECTION
  • SY704 CALIFORNIA COLLECTION
  • SY705 ROCK&ROLL CLASSICS
  • SY706 ATMOSPHERIC TEXTURES
  • SY707 POP MUSIC COLLECTION
  • SY708 FILM TEXTURES
  • SY709 URBAN DANCE/POP
  • SY710 WAVESTATION IMPRESSIONS
  • SY711 PROGRESSIVE ANALOG TEXTURES
  • SY712 DUAL ELEMENT DRUMS&PERCUSSIONS
SY85
1992年発売。SYシリーズの最終モデル。PCM音源のみ搭載の機種。61鍵、30音ポリフォニック。8本のスライダーを利用して音色をリアルタイムに変化させることが可能。PCM音源のWAVE ROMは6MBで、244種類の波形を収録している。SY99同様、サンプラーTX16Wの波形を読み込むことも可能。同じくMIDIサンプル・ダンプ・スタンダード基準にも対応。希望小売価格は210,000(税別)[5]。別売RAMボードの他、汎用のSIMMでもメモリーの拡張ができる。8トラックシーケンサーを搭載[6]ソフトバレエがMILLION MIRRORSツアーでマスターキーボードとして使用していた。また小室哲哉も“篠原涼子 with t.komuro”『恋しさと せつなさと 心強さと』のPVで、P-500の上にセットしていた。
SY85 SOUND DATA DISK
  • SD8551 UK SOUND EXPRESSION
  • SD8552 USA SOUND EXPRESSION
SY85 VOICE CARD
  • VC8501 TOP40
  • VC8502 SUPER SYNTH
SY55
1990年発売。PCM音源のみ搭載の機種。61鍵、16音ポリフォニック。波形容量は2MBで、74種類の波形を収録している。8トラックシーケンサーを搭載[6]
SY55/TG55 VOICE DATA CARD 音色カード 各64ボイス収録
  • VC5501 ANALOG SYNTHESIZER 1
  • VC5502 DIGI SYNTHESIZER 1
  • VC5503 UK SOUND CHART
  • VC5504 USA SOUND CHART
SY55/TG55 SOUND CARD SET 波形カード+音色カード 各64ボイス収録
  • S5501 SAX 1
  • S5502 DRUMS 1
  • S5504 BRASS SECTION
  • S5531 SYN WAVE1
  • S5551 ROCK&POP
SOUND SOURCE UNLIMITED ROM CARD for SY55/TG55 音色カード 各128ボイス収録
  • TG501 SY77 IMPRESSIONS VOL.1
  • TG502 MODERN ARTIST SOUNDSCPES
  • TG503 MODERN ROCK CLASSICS
  • TG504 MODERN ANALOG SOUNDSCAPES
SY35
1992年発売。FM音源、PCM音源のハイブリッドモデル。61鍵、16音ポリフォニック。コルグWAVE STATIONと同じようにベクターコントローラーを持ち、リアルタイムに音色を変化させることが可能。SY22の音色を差し替えたリニューアルモデルで、SY22から波形メモリーが2倍に増やされている。シーケンサー非搭載[6]。希望小売価格は100,000円(税別)[5]
SY35 VOICE CARD 音色カード 各64ボイス+16マルチ収録
  • VC3501 POP STANDARDS
  • VC3502 SUPER SYNTH
SY22
1990年発売。FM音源、PCM音源のハイブリッドモデル。61鍵、16音ポリフォニック。SY35と同様にベクターコントローラーを持ち、リアルタイムに音色を変化させることが可能。シーケンサー非搭載[7]。デスクトップタイプのモジュール版TG33もある。
SY22 VOICE DATA CARD 音色カード 各64ボイス+16マルチ収録
  • VC2201 VECTOR1 バンド進化論
  • VC2202 VECTOR2 多録の友
  • VC2203 VECTOR3 生福
SOUND SOURCE UNLIMITED ROM CARD for SY22/TG33 音色カード 各128ボイス+マルチ収録
  • SY201 SY77 IMPRESSIONS
  • SY202 PROTEUS IMPRESSIONS
  • SY203 VECTOR ATMOSPHRES
  • SY204 ULTIMATE TOP40

脚注

[編集]

関連項目

[編集]