ラポール
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ラポール(英: rapport)は、臨床心理学の用語、セラピストとクライエントとの間の心的状態を表す。
元はオーストリアの精神科医であるフランツ・アントン・メスメルが「動物磁気」に感応したクライエントとの間に生じた関係を表現するために用いた語である。その後、セラピストとクライエントの間で相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり感情の交流を行える関係が成立している状態を表す語として用いられるようになった。カウンセリングや心理療法をどのような立場から行う場合であっても、ラポールは共通した基本的な前提条件として重視されている。
ラポールの類義語として治療同盟がある。両者ともにラポールが構築される場合、患者と医師が治療に対しての前向きな感情を抱いている場合に言われやすい。文脈によってこれらの言葉は悪い関係や、単なる患者と医者の結びつきのみを指す時もある。
ラポールは催眠療法[1]、神経言語プログラミングでも用いられ[2]、転移関係の一部と考えられる[3]。精神分析では患者の強いラポール体験はよくないとされる[1]。なぜなら、患者が自己管理できなくなるからである[1]。ラポールによって患者を治療者へ依存状態にすれば治療の選択肢は広がるが、その利点を活かせなければ悪化する[1]。社会福祉では1951年に新生活保護法が施行されてから相手を納得させ、生活保護率を引き下げる面接技術として用いられてきた[4]。
脚注
[編集]- ^ a b c d 河野良和、柴田出、成瀬悟策(著)、成瀬悟策(編)「座談会/催眠療法の現状と展望」『現代のエスプリ 催眠療法』第297号、至文堂、1992年4月、29頁、ASIN 478435297X。
- ^ 木村佳世子『図解 NLP コーチング術』秀和システム、2007年4月16日、28-31頁。ISBN 978-4-7980-1634-4。
- ^ 東啓悟「メンタライゼーションの観点から見た初期の治療同盟」『臨床心理学研究』第18号、東京国際大学大学院臨床心理学研究科、2020年3月31日、1-9頁、ISSN 2432-373X。
- ^ 中村優一 著「新生活保護法施行以来の処遇の変貌」、日本社会事業大学救貧制度研究会 編『日本の救貧制度』勁草書房、1960年1月、363-366頁。ISBN 4-326-60019-5。
参考文献
[編集]- 坂野雄二 編『臨床心理学キーワード』有斐閣〈有斐閣双書〉、2000年。ISBN 4-641-05869-5。
- 岡田尊司『マインド・コントロール』(増補改訂版)文藝春秋、2016年、101頁。ISBN 978-4-16-661074-7。