ラルド
ラルド(イタリア語: lardo)は豚の脂肪をさすイタリア語。また、豚の背脂を塩漬けまたは燻製にしたものもさすが[1]、本項ではこの部位およびこれを用いた加工食品について主に記載する。フランスではラール(フランス語: lard)といい、これも背脂に限定しない場合もある[2]。
脂肪に水を加え、加熱してから漉したもの[3]についてはラードの項を参照。なお、日本においては「ラルドはラードのイタリア語読み」と紹介されることがあるが[4][5]、本項で扱うラルドはあくまでもラルド(lardo)であり、ラード(英語: lard イタリア語では struttoという[3])とは明確に別のものである[5]。
歴史
[編集]語源はラテン語の lardum [6]。古代からギリシア、ローマでは食用に用いられた[7]。21世紀現在でも利用されている食材であり、例えばイタリア北部で生産が続けられているラルド・ディ・コロンナータはラルドの塩漬けであるが、2000年以上前のギリシャ人によって考案されたと言われている[8]。
部位と用法
[編集]この食材は豚の背の部分のうち、脂肪とゼラチンを含んだ皮の、すぐ下(内側)に位置する[9]。フランス料理においてはこの部位のうち、背に近い部位は lard dur (かたいラール)、逆に内側のほうは lard fondant (溶けるラール。ラードの製造に用いる)と呼び区別する[6]。
冒頭に示したように塩漬けまたは燻製にする場合、保存が効くようになる[10]。これを薄くカットしてそのまま、またはパンにのせて食す[11]。
以下に示すような調理法においても使用される。
- 肉をローストする際に表面に巻き、直接過熱されることを防ぐ目的に使用する。盛り付けの際には取り除かれる[12]。同様にオーブンする際に食材を覆う使い方もある[6]。
- 煮込みをする際に鍋に敷く[12]。
- かたくなるまでソテーし、煮込み料理の香り付けやサラダのトッピングに用いる[13]。
- 肉のかたまりに専用の器具(ラルデ針 lardoire)を用いてラルドを注入し、肉に脂肪分を加えることによりうまみと柔らかみを追加する。断面を美しくする効果もある。[13]
フランスではラルドン(フランス語: lardon)と呼ばれる、脂肪分の少ない赤身肉に差し込むために切り出したものもある(先述のラルデ針を使用する。背脂やベーコンの細切りをさす語)[13]。
ラルドの例
[編集]銘柄のついたラルドの例を以下に示す。
- ラルド・ディ・コロンナータ - IGP認定[14]。
脚注
[編集]- ^ 近藤, 合田 & 正戸 2013, p. 80。語義の2.より。一般的には先述のように脂身や脂肪のこと。部位も背脂に限定されない。
- ^ 日仏料理協会 2007, p. 333 例えば腹の部分はベーコンに利用されるように、純粋な脂身だけという形ではない。
- ^ a b 日仏料理協会 2007, p. 697
- ^ “イタリア産 ラルド”. 山方屋. 2013年12月8日閲覧。
- ^ a b “イタリアの味・ラルド”. 日本マーガリン工業会 . 2013年12月8日閲覧。
- ^ a b c 日仏料理協会 2007, p. 333
- ^ 日仏料理協会 2007, p. 546
- ^ 長本 n.d., 前段
- ^ 日仏料理協会 2007, pp. 547–548。この分類はパリ式カットによって定義付けられた部位と名称。
- ^ (日仏料理協会 2007, p. 193)および(日仏料理協会 2007, p. 267)を参照。
- ^ 長本 n.d., 後段
- ^ a b 日仏料理協会 2007, p. 492
- ^ a b c 日仏料理協会 2007, p. 706
- ^ “《参考》IGP” (PDF). 食肉加工品(生ハム、サラーメ等)DOP 一覧. イタリア貿易振興会. p. 2. 2013年7月10日閲覧。
参考文献
[編集]- 日仏料理協会 編『フランス 食の事典(普及版)』株式会社白水社、2007年。ISBN 978-4-560-09202-6。
- 近藤乃里子; 合田達子; 正戸あゆみ『イタリア料理基本用語 : 伊和・和伊・テーマ別』柴田書店、2013年。ISBN 9784388353439。
- 長本和子「ラルド Lardo」『長本和子のイタリア食材紀行』、i.c.t食文化企画有限会社、n.d. 。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- ウィキメディア・コモンズには、ラルド・ディ・コロンナータに関するカテゴリがあります。