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レモネードダイエット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レモネードダイエットの一種、マスタークレンズで使用する食材

レモネードダイエット(Lemonade Diet)、マスタークレンズ(Master Cleanse)、またはレモンデトックス(Lemon Detox)として知られる健康法は、ジュース・ファスト(ジュース断食)と呼ばれる断食、半断食法の一種である。栄養源としてレモネードのみを飲用し、食事はとらず、毎朝の塩水の大量飲用、ハーブティーの飲用などを行う。

この健康法の支持者は、デトックス効果があり、余分な体脂肪を落とす痩身法であるとする。この方法は、一時的な体重の減少以外には、デトックス効果を含めいかなる効果も科学的な証拠はない。短期的な実践と長期的な実践では、異なった害がある。短期的には、飢餓感、吐き気めまい脱水症があり、長期的には筋肉量の低下として現れる[1][2]

起源

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アメリカ人のスタンリー・バロー(Stanley Burroughs)が考案した方法で、1940年代に初版を著し、1976年に改訂版を執筆した「The Master Cleanser」と「Healing for the Age of Enlightenment」が起源と考えられている[3][4]。元々は潰瘍の治療法として考案されたものである[5]

方法

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レモネードメープルシロップカイエンペッパーを加えたものを飲用し、食事はとらない。これに整腸作用を目的としたハーブティーや、毎朝1リットルの生理食塩水を飲用する腸内洗浄法であるとされるソルトウォーターフラッシュ(Salt Water Flush、ソルトウオーターバッシングとも)を組み合わせて行う[6][7][8][9]

批評

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栄養学者のジェーン・クラーク(Jane Clark)は、この方法には必要な栄養素が欠けていることを指摘している。すなわち、タンパク質ビタミンミネラルの不足である。推定エネルギー必要量に不足するカロリーを含めたこれらの栄養素の欠乏により、個人差はあるものの頭痛やその他の様々な症状が短期的に現れ、長期的にはより大きな害をもたらす可能性があるとしている[10]。2004年にマスタークレンズの改訂に係わったピーター・グリックマン(Peter Glickman)は、初期のつらさと8日目以降の落ち着いた心境を語っているが、単に飢餓の初期症状ではないかと指摘されている[5]。オーストラリア栄養士協会(Dietitians Association of Australia)は、最悪の痩身法として2011年から2013年の3年間、この方法を選出している[11][12][13]

痩身方法としては非常に一時的で、中止すると容易にリバウンドが発生して体重が戻ってしまう。栄養士のケリー・グラスマン(Keri Glassman)は、この種の方法は中止した後に体重が増える「保証書付き」の痩身法であるとしている[14](事例:デトックスを目的として2013年に行った歌手のイ・ヒョリは、この方法では体重が戻ってしまうことを指摘している[15][16])。成功例としてビヨンセが知られているが[2][17]、この方法で減量したドリームガールズの撮影中ビヨンセは強い飢餓感を感じて苛立ち、撮影が完了すると興奮してクリスピー・クリーム・ドーナツ1ダースを食べたと語り、体重も程なく元に戻っている[18][19]

日本では2015年ごろから流行し[20]、その道のプロが記事を執筆するとしている生活情報サイトAll Aboutで、エステティシャン・ダイエット商材販売会社社長の土井千春が推奨する記事を書いていた。2016年にNHKがその危険性を特集、NHKの取材に筑波大学徳田安春客員教授は、「これだけ大量の水分と塩分をとった場合、胃と腸が急激に膨れるので耐えきれず吐いてしまう。場合によっては、胃と食道のあいだの粘膜が切れて大量に出血し、吐き出してショック状態に陥ることもありえます。もしその人の心臓や腎臓、肝臓の機能が落ちていた場合は、心不全や呼吸不全、腎不全、あるいはおなかに水がたまる、全身がむくんでしまうといった副作用のおそれがある」と指摘した。NHKの報道の後、All Aboutの記事は削除された。[21][22]

影響

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大韓民国では、2014年の果物消費にこの方法を含むデトックス目的が影響を与えたとみられており、ロッテマートのレモンの売り上げは前年比180.1%となった[23]

脚注

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  1. ^ Jennifer Murray (2014年3月30日). “Master Cleanse pros & cons”. Livestrong.com. 2015年3月1日閲覧。
  2. ^ a b Michael Dansinger (2013年11月26日). “The Lemonade Diet/ Master Cleanse”. WebMD. 2015年3月1日閲覧。
  3. ^ スタンリー・バロー (1976). The Master Cleanser. Burroughs Books. pp. 16–22, 25. ISBN 0-9639262-0-9 
  4. ^ Peter Glickman (2011). Lose Weight, Have More Energy & Be Happier in 10 Days. Peter Glickman, Inc.. ISBN 0-9755722-5-3 
  5. ^ a b Melinda Beck (2014年3月5日). “フレッシュジュースはデトックスに効果あり?”. ウォール・ストリート・ジャーナル. 2015年2月16日閲覧。
  6. ^ Mike Olaski (2014年12月2日). “Master Cleanse and The Lemonade Diet”. The Master Cleanse. 2015年2月16日閲覧。
  7. ^ “毎朝塩水で腸内を洗浄 セレブも実践「レモネードダイエット」”. 女性セブン 2015年1月22日号 (小学館). (2015-01-08). http://www.news-postseven.com/archives/20150108_296960.html 2015年2月16日閲覧。. 
  8. ^ Thorin Klosowski(訳:的野裕子) (2015年1月19日). “流行のジュースクレンズ系断食は本当に効果があるのか?”. ライフハッカー. 2015年2月18日閲覧。
  9. ^ 土井千春 驚愕!3日間で2kg痩せるレモネードダイエットとは? All About インターネットアーカイブ 2016年9月30日
  10. ^ Jane Clarke (2006年1月24日). “The nutritionist's view”. タイムズ: p. 4. http://www.timesonline.co.uk/article/0,,7-2006236,00.html 2008年1月30日閲覧。 
  11. ^ 「レモン・デトックス食、身体には最悪」”. 日豪プレス (2012年1月8日). 2015年2月16日閲覧。
  12. ^ Sarah Berry (2013年1月10日). “Worst diets of 2012”. シドニー・モーニング・ヘラルド. 2015年2月16日閲覧。
  13. ^ Australian Women's Health (2014年1月8日). “Lemon Detox named worst diet of 2013”. Yahoo!7. 2015年2月16日閲覧。
  14. ^ “Do "Detox" Diets Work? Are They Safe?”. CBSニュース. (2008年4月23日). http://www.cbsnews.com/2102-500165_162-4036502.html 2015年3月1日閲覧。 
  15. ^ SBS E! 芸能ニュースチーム (2013年1月8日). “【記事】イ・ヒョリ、レモンデトックスの後記…「お腹ペコペコ~!」”. KNTV. 2015年2月16日閲覧。
  16. ^ キム・ヒョンギョン (2013年1月8日). “イ・ヒョリがダイエットに失敗!?”. 韓タメDaily. 2015年2月16日閲覧。
  17. ^ Rebecca Harrington (2013年11月4日). “Beyoncé’s Diets Are the Most Effective I Have Ever Tried”. ニューヨーク. 2015年3月1日閲覧。
  18. ^ Red Carpet Cleanses”. ピープル (2009年3月2日). 2015年3月1日閲覧。
  19. ^ Beyonce”. Star magazine(イギリス) (2008年12月30日). 2015年3月1日閲覧。
  20. ^ 便秘解消「塩水洗浄」は危険 紹介記事は次々に削除 J-castニュース 2017/2/10
  21. ^ News Up 塩水飲んでダイエット?あふれる“フェイク”健康情報 NHK NEWS WEB
  22. ^ 1リットルの塩水を一気に飲みする「塩水洗浄」なるものが流行る 当然体に害があり嘔吐する人まで ゴゴ通信 2017/02/07
  23. ^ ソ・ジンウ(毎日経済新聞) (2015年1月9日). “韓国にも毒素を抜くデトックスブーム到来、野菜・果物熱風”. O2CNI. 2015年2月16日閲覧。

関連項目

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