レートピシ
レートピシ(ロシア語: летопись、ウクライナ語: літопис、ベラルーシ語: летапіс)とは、中世ルーシの文学ジャンルを指す言葉である。レートピシは各都市、国(ルーシの諸公国)、地方の歴史的出来事を年代順に記載したものであり[1] 、日本語文献においては年代記と訳される。レートピシという名称は、各年の出来事が、「в лето X …」 (X年に…)という言葉で書き始められるのが一般的であることに由来する(各年冒頭にロシア語: 「в году」という表記も用いられる。意味は同じ)。
年代記の形状
[編集]ルーシ(キエフ・ルーシとその諸公国)とロシア(帝政ロシア)の年代記の場合は、クロノグラフ(ru)あるいはクロニカ(ru)と呼ばれる、伝説、聖書、聖人伝、文学作品などを元に記述されたものと、レートピシと呼ばれる編年体の年代記がある[2]。なお他地域のものとしては、ビザンツ帝国における年代記はギリシア語: Χρόνος( 英語: Chronicle / クロニクル)と呼ばれ、西欧のものはラテン語: annālis(英語: Annals / アナリス)またはクロニクルと呼ばれる。
特徴
[編集]レートピシは、14 - 18世紀の写本が多く残されているが、それらは他の史料に拠って、正本から書き換えられている部分があると理解されている。レートピシのうちもっとも古いものは、ニジニ・ノヴゴロドの修道士ラヴレンチーによって、1377年に加筆・編纂されたと推測される『ラヴレンチー年代記』や[3] 、14世紀に編纂された『イパーチー年代記』(書名はコストロマのイパーチー修道院(ru)で発見されたことによる。)である。これらはより古い、12世紀にキエフで編纂されたレートピシである『過ぎし年月の物語(原初年代記)』を主要文献として編纂されている。また、レートピシは多くの都市で編纂されたため、ある出来事について排他的または優先的に記述したものや、方言的な、独自の言語的特徴(извод)が現れているものがある。
出典
[編集]- ^ Летопись // Современный толковый словарь русского языка Ефремовой
- ^ 栗生沢猛夫「ロシア中世の世界 : 年代記編纂の歴史から、とくに『絵入り年代記集成』について」『秋大史学』第63巻、秋田大学史学会、2017年3月、15-16頁、CRID 1390009225709400832、doi:10.20569/00005759、hdl:10295/00005759、ISSN 0386-894X。
- ^ ЛАВРЕНТЬЕВСКАЯ ЛЕТОПИСЬ // Большой Энциклопедический словарь
参考文献
[編集]- Летописи // Энциклопедический словарь Ф.А. Брокгауза и И.А. Ефрона