ロマンス (ドヴォルザーク)
ロマンス ヘ短調 作品 11 (B. 39) は、アントニン・ドヴォルザークが作曲し1879年に出版された、ヴァイオリンと管弦楽のための単一楽章の作品である。
歴史
[編集]この曲は、当時プラハ仮劇場管弦楽団のコンサートマスターだったヨゼフ・マルクス(Josef Markus)の依頼で書かれた。マルクスはジョフィン宮殿で年1回開かれるオーケストラのコンサートで演奏しようとしており、実際に1877年12月9日に開かれたそのコンサートでアドルフ・チェフの指揮により初演された[1][2]。
ドヴォルザークは弦楽四重奏曲第5番の緩徐楽章 アンダンテ・コン・モート・クワジ・アレグレット(Andante con moto quasi allegretto)をこの作品の元とした。なお、この四重奏曲はまだ彼が広く知られていなかった1873年に作曲されたものであるが、ドヴォルザークの生存中は演奏も出版もされていない[1][3]。これは、同曲を献呈するつもりだったと見られるヴァイオリニスト・アントニン・ベネヴィッツ(もしくはメンバーのヨゼフ・ポルトハイム(Josef Portheim)[4])が演奏を拒否したためと考えられる(ドヴォルザークは同曲の表紙を引き裂いたうえ知人に渡し、事実上封印した。出版は1929年)。
ドヴォルザークはこの作品のピアノ伴奏版を書いている。これはヴァイオリン奏者フランティシェク・オンドジーチェクへ献呈されたが、ドヴォルザークの生存中には出版されていない。管弦楽伴奏版、およびドヴォルザークの友人ヨゼフ・ズバティによるヴァイオリンとピアノへの編曲版(B. 38)は、1879年にドイツの出版社ジムロックから出版された[1][5]。
楽器編成
[編集]楽曲構成
[編集]アンダンテ・コン・モート(Andante con moto)、ヘ短調、ソナタ形式。
弦楽四重奏曲第5番からの引用である優美な旋律が、似た特徴をもつ対比調の主題を導き出す。不安定な主題がそのあとに続き、オーケストラによる耳障りな和音の挿入部に入る。やがて、最初の穏やかな雰囲気が優勢になり、主題が戻って来る。曲の最後はヘ長調で終わる[1]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f Romance for violin and orchestra antonin-dvorak.cz, 2015年3月30日閲覧。
- ^ a b c Romance, Op.11 (Dvořák, Antonín) IMSLP, 2015年3月30日閲覧。
- ^ Romance for Violin and Orchestra in F minor, Op. 11 N Y Phil, 2015年3月30日閲覧。
- ^ String Quartet No. 5 in F minor, Op. 9, B37, antonin-dvorak.cz, 2023年10月3日閲覧
- ^ Romance for violin and piano antonin-dvorak.cz, 2015年3月30日閲覧。
外部リンク
[編集]- ロマンスの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト