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ワタアブラムシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ワタアブラムシ
ワタアブラムシ
ワタアブラムシ(無翊胎生虫)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: カメムシ目 Hemiptera
亜目 : ヨコバイ亜目 Homoptera
: アブラムシ科 Aphididae
: Aphis
: ワタアブラムシ A. gossypii
学名
Aphis gossypii
Glover
和名
ワタアブラムシ

ワタアブラムシ(学名:Aphis gossypii Glover)とは、カメムシ目アブラムシ科に属する昆虫。全世界に分布し[1]アブラムシ類の中でも顕著な害虫として知られる。

形態

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ワタアブラムシ(有翊胎生虫)

ワタアブラムシの無翊胎生虫は、体長1.3ミリメートル程度、体色は黄色や緑、濃緑色など変異が多い[1]触角は6節で体長よりも短い。低温下に生育する個体は体表が白いワックスに覆われ、触角や腿節などの付属器が短小化し球形に近いフォルムとなる[2]。初夏に現れる有翊胎生虫は、体長1.2ミリメートル程度、体色は黄緑もしくは青緑色で、腹部側面に4個の黒色斑が付く[1]

生態

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広食性でジャガイモキュウリカボチャなどの畑作物、キクユリなどの花卉類、ウメモモなどの果樹の他、雑草にも多く寄生する[1]。 新芽などはにも寄生するが、主にの裏に寄生する。

アブラムシは1世代が10日程度の発育スピードであり、年の大部分はメスだけが出現し単性生殖する[1]。ワタアブラムシは、ムクゲミカンなどの樹上で卵越冬し、4月上旬に孵化して新葉に寄生し無翊胎生雌虫に成長する。5月上旬には羽のついた有翊胎生雌虫が現れ、ザクロなどの中間宿主へと移動する。その後もナスやキュウリなどの2次中間宿主を経て、10月下旬から有翊のオスが現れ、有翊のメスと交尾し、ムクゲなどに戻って産卵する[1]。また、温暖地では無翊胎生雌虫のまま越冬する例も報告されている[1]

生活環により4つのタイプに分類する考えがある[3]

  1. 不完全生活環タイプ
    • 秋季になっても両性生殖個体が全く出現しないタイプ。 雑草(オオイヌノフグリ、ナズナ)などで胎生雌のまま越冬する。
  2. 中間寄主として寄主転換する完全生活環タイプ
    • ムクゲだけで周年経過するものと、 コスモスやヒャクニチソウなどを中間寄主として寄主転換するものいる。
  3. 中間寄主の間を行き来する完全生活環タイプ
    • 主宿主はクロツバラやクロウメモドキ、 ツルウメモドキ。サトイモやツユクサなどが中間寄主。
  4. 非移住型の完全生活環タイプ
    • アカネだけで周年経過する。

天敵

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捕食性天敵としてハナカメムシ Orius sp.(en:Orius) などが存在する[4][5]

人間との関わり

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広食性且つ季節によって寄生植物を変えることから、様々な農作物に被害を与える重要害虫と目されている[6]。口吻から樹液を吸う食性から、大量発生すると作物の育成が阻害され、枯死に至る場合もある。また、口針の唾液を媒介してモザイクウイルスを蔓延させ、大規模な被害を与える場合もある[6]糖類が大量に含まれた粘液状の排泄物は、スス病菌の温床となり作物の商品価値を損なう[6]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g 松崎沙和子・武衛和雄『都市害虫百科』普及版 朝倉書店 2012年 ISBN 978-4-254-64040-3 pp.45-47.
  2. ^ 稲泉三丸、「越冬寄主上のワタアブラムシ胎生虫の生態および形態」『日本応用動物昆虫学会誌』30(1) 日本応用動物昆虫学会 doi:10.1303/jjaez.30.43 1986年 pp.43-49.
  3. ^ 稲泉三丸「ワタアブラムシの生活環と寄主を異にするバイオタイプ」『昆蟲』第49巻第1号、東京昆蟲學會、1981年、219-240頁、NAID 110003501813 
  4. ^ いろいろな天敵昆虫 九州大学大学院 生物資源環境科学府 天敵昆虫学研究室
  5. ^ 永井一哉「ミナミキイロアザミウマ,カンザワハダニ,ワタアブラムシに対するハナカメムシOrius sp.の捕食特性」『日本応用動物昆虫学会誌』第35巻第4号、日本応用動物昆虫学会、1991年、269-274頁、doi:10.1303/jjaez.35.269ISSN 0021-4914NAID 110001124309 
  6. ^ a b c 池田二三高、"ワタアブラムシ 体は小さいが多様な被害をもたらす害虫" - FOOD COMMUNICATION COMPASS(2011年4月28日)2020年12月30日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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