ヴァイオリンソナタ第1番 (メンデルスゾーン)
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ヴァイオリンソナタ第1番 ヘ長調 MWV Q7は、フェリックス・メンデルスゾーンが11歳であった1820年に作曲したヴァイオリンソナタ。
概要
[編集]メンデルスゾーンは10歳になる1819年5月にヴァイオリンを習い始め、その才能は父のアブラハムを驚かせていた[1]。楽曲は彼が作曲を学んでいたカール・フリードリヒ・ツェルターの保守的な教えに背くような内容となっている。
最初の出版は1977年に行われた。
楽曲構成
[編集]3つの楽章で構成される。演奏時間は約15分。
第1楽章
[編集]- Allegro 4/4拍子 ヘ長調
この楽章は主題をひとつしか有しておらず、その曲調にはC.P.E.バッハの影響が感じられる[1]。主題を譜例1に示す。
譜例1
提示部に繰り返しが指定されているほか、再現部の終わりにも繰り返しと1番括弧、2番括弧が設けられており、2番括弧からは華やかなコーダとなって楽章を結ぶ。
第2楽章
[編集]- Andante 3/8拍子 ヘ短調
主題と4つの変奏で構成される変奏曲[1]。ヴァイオリンが主題を奏する(譜例2)。
譜例2
第1変奏はヘ長調となり、主題のリズムに変化を加える。第2変奏はヘ短調に戻り、主題を16分音符の音型に崩して紡いでいく。第3変奏は再びヘ長調に転じ、ピアノはスタッカート、ヴァイオリンはピッツィカートの指定で軽やかに進む。第4変奏ではヘ短調に回帰して自由な変奏が繰り広げられる。
第3楽章
[編集]- Presto 4/4拍子 ヘ長調
この楽章も第1楽章同様に主題をひとつしか持っておらず、ハイドンの交響曲第102番の終楽章を範としたものと思われる[1]。冒頭からヴァイオリンが勢いよく主題を出す(譜例3)。
譜例3
対位法的な技術により手際よく展開させ、主題を再現する。第1楽章同様に楽章後半のリピートに2つの括弧が用意されており、主題を用いてまとめられて全曲が閉じられる。
出典
[編集]- ^ a b c d Todd, R Larry (2022年). “Mendelssohn: Violin Sonatas”. Hyperion records. 2024年8月13日閲覧。
参考文献
[編集]- Anderson, Keith (2001). Liner Notes to Mendelssohn: Works for Violin and Piano (Complete) (CD). Naxos Records. 8.554725。
- Johnson, Blair (2016年). “Felix Mendelssohn: Sonata for violin & piano in F major (1820)”. Allmusic.com. 2016年7月14日閲覧。
- Todd, R. Larry (2003). Mendelssohn: A Life in Music. New York: Oxford University Press. ISBN 0-19-511043-9
- CD解説 R Larry, Todd. (2022) Mendelssohn: Violin Sonatas, Hyperion records, CDA68322
- 楽譜 Mendelssohn: Violin Sonata No.1, VEB Deutscher Verlag für Musik, Leipzig