一藤水産
一藤水産(いちふじすいさん)は、かつて鮮魚など生鮮品のディスカウント販売を行なう「黒潮市場」をチェーン展開していた、日本の水産物流通企業で、1993年に「黒潮市場」を創業し[1]、1998年に自己破産した[2]。
概要
[編集]企業としての前身は、山本允之が1974年に創設した有限会社鳥山信濃路であり、これは和食店「一藤」を運営していたが、1980年に水産事業に転じ[3]、1986年に一藤水産となった[4]。
1993年には、東京都新宿区で鮮魚のディスカウント販売店「黒潮市場」を創業した[1]。大久保駅に近いこの店舗は、精肉のセブンエイト(横浜市)、青果の大東青果(東大和市)の出店を得た、店舗面積およそ750平方メートルの小規模ながら「都市型」パワーセンターと称された[5]。当時は、新興の生鮮ディスカウントが注目され、いわて生活協同組合が業務提携して、研修のために職員を派遣するといったエピソードもあった[6]。以降、事業は順調に拡大して、イオン富津ショッピングセンター[7]や、下高井戸駅前[8]などにも出店し、1995年には青梅市に、焼き魚などの加工を行なう仕分けセンターが設けられた[9]。最盛期には首都圏などに「黒潮市場」14店舗を構え、年商は70億円超となった[1]。
日本各地の地元企業との共同出資による地方進出も取り組まれ、1996年には、黒潮市場北海道が設立され、また、1997年には沖縄県のディスカウントストア「ビッグワン」グループの三星物産と共同で沖縄市のコリンザに沖縄黒潮市場が開設されたが[10]、1998年1月には業績不振で閉店となった[11]。
1997年秋から、経営の行き詰まりが噂されるようになり、同年10月に出店した志木駅前店は駐車場をめぐるトラブルから1998年3月に閉店となり、危機が表面化した[12]。4月には、29億円の負債を抱えて、自己破産申請が提出された[4]。
破産時点における一藤水産は、黒潮市場などにおける鮮魚等の販売のほか、持ち帰り用すし店「浜寿司」や回転ずしの「海鮮寿司」の運営にもあたっていた[4]。
黒潮市場北海道
[編集]1996年に、丸井地域開発(丸井今井傘下)と共同で黒潮市場北海道を設立。1998年には北海道中央バスグループの中央バス観光商事が運営するMOT6店舗の内5店舗の無償譲渡を受けた。店名はMOT黒潮市場となり、従業員もそのまま移籍した[13][14]。札幌周辺で7店舗を展開した[15]。一藤水産本体の破綻から少し遅れ、黒潮市場北海道も9月14日に営業を停止し[15]、屯田店はスーパー松下(スーパーエース)、残り4店舗はフレックが引き継いだ[13][16]。
脚注
[編集]- ^ a b c “敗軍の将、兵を語る 人物〜山本 允之氏[一藤水産社長]日経ビジネス 第969号 1998.12.7”. ジー・サーチ. 2015年9月2日閲覧。 - 『日経ビジネス』掲載記事の冒頭部分の紹介
- ^ “「黒潮市場」が自己破産申請 負債総額30億円”. 読売新聞・東京朝刊: p. 10. (1998年4月21日) - ヨミダス歴史館にて閲覧
- ^ “人物概要――一藤水産社長山本允之氏(起業人大いに語る)”. 日経流通新聞: p. 2. (1995年5月20日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ a b c 日経流通新聞: p. 11. (1998年4月23日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “新宿にパワーセンター―― 生鮮専門店集め“都市型”。”. 日本経済新聞・朝刊: p. 15. (1995年11月1日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “いわて生協、生鮮DSと業務提携――鮮魚販売のノウハウ吸収。”. 日本経済新聞・朝刊: p. 16. (1995年8月23日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “鮮魚だから対面販売――一藤水産が本格展開、調理コーナーに相談係。”. 日経流通新聞: p. 11. (1995年4月27日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “小型パワーセンター「黒潮市場」、タラバガニ100g200円に人だかり。”. 日経流通新聞: p. 9. (1996年3月12日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “中島水産、大和水産、一藤水産、鮮魚専門店が総菜部門に力――高い粗利益率に注目。”. 日経流通新聞: p. 9. (1995年10月5日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ “「黒潮市場」がコリンザの核店舗に”. 琉球新報. (1997年9月10日) 2015年9月2日閲覧。
- ^ “「コリンザ市場」が閉鎖 業績不振でテナント料滞納”. 琉球新報: p. 9. (2000年3月1日) - 琉球新報データベースにて閲覧
- ^ “一藤水産が自己破産、「ワンマン」のひずみ露呈――強引に規模拡大、人材育成後手に。”. 日経流通新聞: p. 9. (1998年5月12日) - 日経テレコン21にて閲覧
- ^ a b 「フレック、道内100億円体制目指す」『日本食糧新聞』1998年11月20日、8454号。
- ^ 『財界さっぽろ 1998年11月号』財界さっぽろ、1998年、216-217頁。
- ^ a b “黒潮市場北海道、全店舗の営業停止―― 卸売り拡大し存続図る。”. 日本経済新聞・北海道: p. 4. (1998年9月15日):“黒潮市場北海道、全7店舗の営業停止―― 親会社破産で。”. 日経流通新聞: p. 4. (1998年9月17日) - いずれも日経テレコン21にて閲覧
- ^ 『財界さっぽろ 1998年11月号』財界さっぽろ、1998年、216-217頁。