三国通貨協定
三国通貨協定(さんごくつうかきょうてい、英: Tripartite Agreement)とは、1936年9月に米国、フランス、英国が締結した国際通貨協定である。
この協定の目的は、世界恐慌で国際通貨制度が崩壊した後、自国と国際為替市場で自国の通貨を安定させることであった[1]。
協定の背景
[編集]1931年に英国が、1933年に米国が金本位制を停止した後、フランスを中心とする金塊圏諸国との間に深刻な通貨不均衡が生じ、世界恐慌の中で自由主義国の間で国際通貨協力が崩壊した[1]。ドルやポンドが切り下げられたことで、米国や英国では輸入物価が上昇し、輸出物価が低下した。
米国や英国では、健全な貨幣を支持する人々は、通貨を安定させるための改革を支持する人々と、金本位制の廃止と管理通貨を求める人々とに分かれていた[2][3][4]。
協定の内容
[編集]三国通貨協定は非公式かつ暫定的なものであり[5]、加盟国は、国内の繁栄に深刻な支障をきたさない限り、通貨価値を既存の水準に維持するために競争的減価を行わないことに合意した[6]。フランスはこの協定の一環として自国通貨を切り下げた。残りの金本位制を維持していたベルギー、スイス、オランダもこの協定に加入し、ナチス・ドイツに対抗する事実上の通貨同盟となった[7]。
同年 10月には三国通貨協定を補足するものとして「英米仏三国金輸出相互協定」が成立した。これは三国通貨協定に基づく介入の債権・債務に対して金交換を保証したものであった[7]。
加入国は、事前に合意された価格で売り手の通貨で金を互いに販売することに同意した[8][9]。この協定は為替レートを安定させ、1931年から1936年までの通貨戦争を終結させたが[10]、世界貿易の回復を助けることはできなかった。
参照
[編集]脚注・参考文献
[編集]- ^ a b Harris, Max (2021). Monetary War and Peace: London, Washington, Paris, and the Tripartite Agreement of 1936. Studies in Macroeconomic History. Cambridge University Press. doi:10.1017/9781108754187. ISBN 978-1-108-48495-4
- ^ Clarke, Stephen V.O. (1977). “The influence of economists on the tripartite agreement of September 1936”. European Economic Review 10 (3): 375–389. doi:10.1016/S0014-2921(77)80005-6.
- ^ Gardner, Lloyd C. (1964). Economic Aspects of New Deal Diplomacy. Madison: University of Wisconsin Press. ISBN 978-0-299-03190-9
- ^ Leuchtenburg, William E. (1963). Franklin D. Roosevelt and the New Deal, 1932–1940. New York: Harper and Row. ISBN 978-0-06-183696-1
- ^ “After the Gold Standard, 1931-1999”. 1936 September 25 – October 13. World Gold Council. September 16, 2010閲覧。
- ^ “The IMF Story”. Finance & Development: 14–15. (September 2004) September 14, 2010閲覧。.
- ^ a b “三国通貨協定(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)”. コトバンク. 2023年5月12日閲覧。
- ^ “Timeline 1936”. Timelines of History. September 16, 2010閲覧。
- ^ “After the Gold Standard, 1931-1999”. World Gold Council. September 16, 2010閲覧。
- ^ Robert A. Mundell and Armand Clesse (2000). The Euro as a stabilizer in the international economic. Springer. p. 284. ISBN 978-0-7923-7755-9
関連文献
[編集]- 横田綏子「国際通貨協定の本質をめぐって - 三国通貨協定成立過程の検討を通じて -」『經濟論叢』第120巻第1-2号、京都大學經濟學會、1977年7月、71-97頁、doi:10.14989/133704、hdl:2433/133704、ISSN 0013-0273、CRID 1390572174795879936。
- 小湊繁「三国通貨協定と国際通貨基金 (一)」『信州大学経済学論集』第16巻、信州大学経済学部、1980年3月、23-37頁、hdl:10091/1391、ISSN 0288-0466、CRID 1050001338914088064。
- 神沢正典「為替安定資金と三国通貨協定 : 1930年代の為替相場安定機構」『経済論究』第53巻、九州大学大学院経済学会、1981年12月、79-113頁、doi:10.15017/2920619、hdl:2324/2920619、ISSN 0451-6230、CRID 1390009224850648832。
- 奥田宏司「1936年,三国通貨協定と「為替自主権」-2-三国通貨協定(1936年9月25日)に至る交渉経過」『大分大学経済論集』第33巻第1号、大分大学経済学会、1981年5月、1-26頁、ISSN 04740157、NAID 40000284354、CRID 1520290884645954176。
- 日本銀行『日本銀行百年史(第4巻) 第1章 5.国際通貨制度動揺下における国際金融協力と日本銀行』日本銀行、1986年、139-163頁 。