コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

三菱未来館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

三菱未来館(みつびしみらいかん)は、国際博覧会地方博覧会などに三菱グループが出展する場合に用いるパビリオンの名称であり、その名通り一貫して未来をテーマとしている。

大阪万博

[編集]
左奥が三菱未来館。前方中央は化学工業館。

1970年日本万国博覧会(大阪万博)では、「日本の自然と日本人の夢」をテーマに、火山活動や未来の海底牧場など、迫力ある映像を360度視界に映し出す「サークロマ映像方式」が大変な話題となり、民間企業のパビリオンでは最大の入場者数を記録した[1]

建物は各ブロックを分離させず一点集中としその中の変化を建築表現のベースで対話を求め寄り集まった形とし、時間と形の動きの要素も取り入れ見る位置や光の加減によって姿を変える形とした[2]。造型は天・地・人、真・副・体といった造型手法を応用し三次元的な動的調和を意図し、表面パターンや色彩は祭りの法被に見られる調和のあるにぎやかさを取り込んだものとした[2]

ゴジラシリーズを手掛ける田中友幸円谷英二率いる東宝の特撮スタッフが映像を制作した。当時の映画業界は転換期を迎えており、田中は「映画プロデューサーは映画業界だけでなく、他のビジネスにも精通した事業家でなければならない」という東宝専務の森岩雄の勧めを受け、博覧会のプロデューサー業も務めるようになった[3]

円谷英二は本作の制作中に死去し、この作品が事実上の遺作となった。パビリオンで用いられた音楽の一部は、映画『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』に流用された。また、円谷の手掛けた館内映像は映画『ハワイ・マレー沖海戦』DVDの特典映像に収録されている。

本館の未来予想の設定年代にあたる2020年には、三菱グループ創業150周年記念ウェブサイトにて1970年当時の未来予想項目を振り返りながら関連する2020年現在の注目技術を通し、新たな未来を展望するシリーズコラム記事「みらい予想図」が展開されており[1]、大阪万博の本館パンフレットもPDF形式で掲載された[4]

スタッフ
館内
  • プロローグ「日本の四季」[2][4]
    • 未来の生活環境創造の中に自然観を失うことなく再創造する大切さを訴えることを目的に、日本の四季の風景や繊細な自然を第1室までのエスカレーターの両側の壁に映し出しながら会場を歩き回り複雑となった来館者の心理状態を整える。
  • 第1室「自然の脅威」[2][4]
  • 第2室「日本の空-50年後の空」[2][4]
    • 日本上空の宇宙空間に浮かぶ宇宙ステーションや「世界気象管理センター」の管理ドームのセットを通り抜け日本に接近する超大型台風を制圧する気象コントロールロケット隊の姿から未来の科学ドラマを展開する。
  • 第3室「日本の海-50年後の海」[2][4]
    • 海面下数千メートルの深海開発や地熱利用発電海底油田など大陸棚開発等といった海洋開発の成果を数多くのセットで表し、また終盤にはスモークスクリーンで巨大なサメが襲いかかる姿も投影される。
  • 第4室「日本の陸-50年後の陸」[2][4]
  • 第5室「あなたも参加する」[2][4]
    • 観客の動きをITVカメラがとらえ電子装置が識別しそのシルエットを縦10メートル×横11メートルの大型電光板に5倍の大きさで映し出す「シルエトロン」や直径2.5メートルの球体スクリーンを配置した大型レクリエーションルーム。

沖縄海洋博

[編集]

パビリオンは「人間も自然の一部にすぎない」の理念に立ち造型的にシンプルな形で外壁をアルミニウムの鏡面とした鉄骨造で周辺の景観を映し出す形となった。展示は三菱重工業三原製作所で開発された「ムービングシート」に座り椅子に座ったまま誘導されるシートコンベア方式で海洋開発の理想像を展開する[5]

スタッフ[5]
  • 三菱沖縄海洋博総合委員会委員長:山田敬三郎
  • 館長:小谷修二
  • 総合プロデューサー:田中友幸
構成[5]
  • プロローグ「海へのいざない」
    • 入口から階段を上り、ブルーの照明に包まれた部屋で天井のオウム貝から海鳴りと海をたたえる語りを再生する。
  • 第1部「海への旅」
    • 海底トンネルを降下し、サンゴや天敵のオニヒトデ、それを退治するホラ貝等海の生態学を象徴するイメージを三菱電機の開発したホログラム立体映像システムで表現。さらに深海溝の深海魚海底火山の爆発を大阪万博でも使われたホリミラースクリーンで表現した後、クラゲ状の幻想の世界で締められる。
  • 第2部「海の未来」
    • ハーフミラー技術を応用した「トランスデプロビジョン」による海中生物の形をした水中バスや海洋開発機械から生体工学的なアプローチによる技術発展の表現、三菱電機の開発した液晶シンクロビジュアルシステムによる観客の拍手等のアクションに反応する魚群の映像、海底牧場や海底都市等の海洋開発の理想像を展示。
  • エピローグ
    • カモメの大群に見守られながら会場へ向かい、ムービングシートを降り虹のイメージの部屋を経て退出する。

科学万博

[編集]

1985年国際科学技術博覧会(科学万博)では「すばらしい地球・人間」というテーマで出展[6]。大阪万博の三菱未来館で製作を担当した田中友幸が総合プロデュースを担当した[6]。内部展示は科学万博が開催された1985年当時の最先端技術を駆使してその当時考えられた未来の姿をリアルに表現していた[6]

スタッフ[7]
  • 総合委員会委員長:島田秀男
  • 総合プロデューサー:田中友幸
  • 館長:正木一成
  • プロデューサー:岡田力、前田茂雄

愛・地球博

[編集]
愛・地球博の三菱未来館

2005年日本国際博覧会(愛・地球博、愛知万博)では三菱未来館@earthとして「もしも月がなかったら」というテーマで出展[8]。シアターで上映される映像作品『もしも月がなかったら』は、米国の天体物理学者ニール・F・カミンズ教授の同名の著書をもとにした科学エンターテイメントである[8]

その人気にも後押しされ、三菱重工業によって長崎県佐世保市の大型観光施設ハウステンボスに特殊効果映像シアター「ハウステンボスIFXシアター“Kirara(キララ)”」として2006年7月22日から2021年8月31日まで常設で公開されていた[9]。IFXシアターとは、想像(Imagination)、無限(Infinity)、効果(FX = Effectsの略語風スペルで映画・テレビ用語)の3つの要素が一体となった映像シアターを表す造語。シアターの枠を超え、無限大に広がる映像空間を体感できるという。 本編は愛知万博と同内容だが、本編に先がけて上映されるプレショーの内容を改めた形とした。

その他

[編集]

脚注

[編集]
  1. ^ a b 三菱創業150周年記念サイト みらい予想図[リンク切れ] アーカイブ 2023年10月23日 - ウェイバックマシン - 三菱グループ
  2. ^ a b c d e f g h EXPO'70のデザイン(IV)ディスプレイ[リンク切れ] アーカイブ 2019年10月17日 - ウェイバックマシン - 工藝ニュース 1970年2月号
  3. ^ 東宝特撮映画全史 1983, p. 58, 「田中友幸 特撮映画の思い出」
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 三菱創業150周年記念サイト みらい予想図 「三菱未来館」で配布されていたパンフレットを見てみよう![リンク切れ] アーカイブ 2023年7月31日 - ウェイバックマシン - 三菱グループ
  5. ^ a b c d e f g h i j 沖縄国際海洋博覧会公式記録(総合編)第II章 展示館・展示 三菱海洋未来館 - 沖縄国際海洋博覧会協会
  6. ^ a b c 『国際科学技術博覧会公式ガイドブック』、107頁。
  7. ^ 配布されていたリーフレットより。
  8. ^ a b 三菱未来館@earthもしも月がなかったら - 愛・地球博公式ウェブサイト内のページ。
  9. ^ Kirara フィナーレイベント”. ハウステンボス. 2024年2月24日閲覧。 “ハウステンボスIFXシアター「Kirara(キララ)」は2022年春の新施設OPEN(予定)に伴い、2021年8月31日をもって閉館いたします。……本イベントは8/31までで終了しました”

参考文献

[編集]
  • 『東宝特撮映画全史』監修 田中友幸東宝出版事業室、1983年12月10日。ISBN 4-924609-00-5 
  • 『国際科学技術博覧会公式ガイドブック』国際科学技術博覧会協会、1985年3月16日第1刷発行、ISBN 4-06-201979-5

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]