中庸に訴える論証
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中庸に訴える論証(英語: argument to moderation、ラテン語: argumentum ad temperantiam)あるいは偽の妥協(英語: false compromise)、中間からの主張(英語: argument from middle ground)、中道の誤謬(英語: golden mean fallacy)[1]は、真実とは2つの対立する立場の間の妥協点にあるものだという誤謬である[2]。
中庸に訴える論証は二つの相反する主張に対して用いられる。例えば、ある人が空は青色だといい、またある人は空は黄色だと主張したとする。ここで真実の空の色は緑色だと主張するのがこの誤謬である[3]。緑は青と黄色の混色であり2つの位置の妥協点ではあるが、空は明らかに緑ではない。この比喩のように、2つの位置の中間に立つことは必ずしも真実につながるとは限らないのである。
ウラジーミル・ブコフスキーは、ソ連のプロパガンダの大きな嘘と真実の中間を取ったとしてもそれもまた嘘に過ぎず、情報と偽情報の中間を探るべきではないと主張した[4]。
関連項目
[編集]- 偽りのバランス
- 中庸
- オクレントの法則 : 「中立性の追求は非中立性を生み出すことがある。なぜなら時には真実が存在するから」という法則。各論の軽重を考えない単純な両論併記に拘泥する報道メディアの傾向を指摘したもの[5]。
- ビュー・フロム・ノーウェア
- 「みんなの意見」は案外正しい : 「群衆の英知(英語: Wisdom of Crowds)」と呼ばれる、多くの素人の意見を平均化すると極めて優れた回答が得られることがあるといった現象[6]について述べている書籍。
参考文献
[編集]- ^ “Fallacy: Middle Ground”. The Nizkor Project. 21 July 2019時点のオリジナルよりアーカイブ。29 November 2012閲覧。
- ^ Harker, David (2015). Creating Scientific Controversies: Uncertainty and Bias in Science and Society. Cambridge University Press. ISBN 978-1-107-06961-9. LCCN 2015-11610
- ^ Gardner, Susan T. (2009). Thinking Your Way to Freedom: A Guide to Owning Your Own Practical Reasoning. Temple University Press. ISBN 978-1-59213-867-8. JSTOR j.ctt14btd4j. LCCN 2008-23988
- ^ Буковский, Владимир Константинович (1990) (ロシア語). "И возвращается ветер--": Письма русского путешественника [The Wind Returns. Letters by Russian Traveler] (2. izd ed.). Moskva: "Demokraticheskai︠a︡ Rossii︠a︡". p. 345. ISBN 5-235-01826-5. OCLC 28809403
- ^ “Daniel Okrent”. Jeff Pearlman. Jeff Pearlman (October 11, 2012). 2021年4月30日閲覧。
- ^ 岡野 匡志「“Wisdom of Crowds”論について」『政策科学』第23巻第1号、立命館大学政策科学会、53-66頁、doi:10.34382/00005072。