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二輪車盗

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
破壊されたオートバイ用チェーンロック

二輪車盗(にりんしゃとう)とは、二輪車(オートバイ)の窃盗を行う犯罪のこと。「バイク盗」や「オートバイ窃盗」などとも呼ばれる。また、盗まれた車両は「盗難車」と呼ばれる。

概要

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統計による窃盗の実態

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オートバイ窃盗の認知件数推移(1967年以降)
1967年以降の二輪車窃の認知件数推移
認知件数
1967 24,249
1968 23,215
1969 29,564
1970 35,309
1971 36,467
1972 33,963
1973 39,191
1974 42,103
1975 44,242
1976 45,053
1977 52,685
1978 71,762
1979 89,253
1980 106,297
1981 132,309
1982 161,002
1983 177,757
1984 180,339
1985 181,278
1986 171,973
1987 171,325
1988 209,444
1989 271,083
1990 263,823
1991 265,453
1992 245,628
1993 245,865
1994 234,162
1995 241,509
1996 240,400
1997 234,649
1998 246,364
1999 242,977
2000 253,433
2001 242,517
2002 198,642
2003 154,979
2004 126,717
2005 104,155
2006 93,294
2007 83,028
2008 80,857
2009 82,811
2010 74,278
2011 68,852
2012 60,405
2013 51,442
2014 43,720
2015 35,486
2016 24,304
2017 20,184
2018 15,292
2019 11,255
2020 9,018
2021 7,569
2022 7,913
2023 9,946

法務省警察庁の統計によれば、1967年以降、一時期(1986年1987年)を除いて増加し続け、1988年には20万件を突破した。そして、1988年から2001年の間、盗難認知件数が20万件を超えて高止まりし続ける状況となり、その間に統計のある1967年以降最多の件数を1989年(27万1,083件)に記録することとなった。そして2000年(25万3,433件)をピークに減少し、2021年は7,569件となり、統計のある1967年以降最低の値であったが、2022年は2019年コロナウイルス感染症対策の行動制限緩和により外出する人が増加し、人と出会う機会が増えたことから前年より増加して2022年は7,913件となり、2023年は2019年コロナウイルス感染症流行前上回る9,946件となった[1][2][3][4]

また、警察庁による2022年のデータより、認知件数は7,913件であり、オートバイ窃盗被害台数は、7,815台(内、50cc超:3,297台、50cc以下:4,518台)であり、排気量別のオートバイ1,000台当たりオートバイ窃盗認知被害台数は、50cc超は0.6台、50cc以下は1.0台であった[5]

盗難場所は、道路上で盗まれたのは、7,913件中791件の約10.0%に過ぎず、住宅敷地内では4,626件と約58.5%を占め、次いで駐車(輪)場が999件と約12.6%と占めており、駐車(輪)場と住宅敷地内の2つで約71.1%を占めている。更に、鍵をメインスイッチ(イグニッションスイッチ)に差し込まれていままの状態及び運転席やその周辺に放置していた状態で盗まれたのは7,913件中2,635件であり、盗難認知件数の約3分の1に過ぎず、残りの約3分の2は、その状態で無いにもかかわらず盗難されている[5]

また、警察等に認知されていない犯罪の件数(暗数)を含めて実際の犯罪実態を調べる目的で2000年以降数年に1回行われる法務省の2019年犯罪被害実態調査[6]により、オートバイ盗難にあったと答えたバイク所有者の割合は、2018年中に被害が遭ったと回答した者の割合は0.4%、2014年から2018年の間に遭ったと回答した者の割合の場合は、2.7%であった。また、この調査は2000年以降5回行われているが、被害に遭う割合は低下傾向となっている。(5年以内被害率 2000年:12.4%→2004年:10.3%→2008年:6.8%→2012年:7.6%→2019年:2.7% )

そして、被害を警察に届け出た割合は約80%であった。もし、警察が把握した認知件数に先程の申告した割合で割った場合、2022年は約9,900件となり、約2,000件が届け出されてない状態となる。

オートバイ盗難により2023年に検挙された者の約87.3%は、14歳から19歳の未成年であり、少年犯罪の代表的な犯罪であることが伺われる[7]

暴走族による使用目的の窃盗

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暴走族の構成員が車両を盗み出し、暴走行為などに用いた後に乗り捨てるなどといったケースがある[8][9]

高価な車両に対する組織的窃盗

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窃盗を生業とする犯罪集団による組織的な犯行および密輸が行われる場合もある。多数の人員を投入し、運搬用ワンボックスカーや油圧カッターなど専門的な機械類を用い、緻密に組み立てられた役割分担や作業工程でもって迅速かつ車体の資産価値を落とすことなく犯行に及ぶ。こうして数分で運搬車両に詰められた車両は拠点となる施設に集められ、あるものは解体され部品として市場へ流され、あるものは輸出先のシンジケートと結びつき、偽装された名称で密輸を行うなどの方法で資金化されていく[10]

こうして密輸された車両が稀に発見される場合があるが[注釈 1]、仮に発見に至った場合であっても、現地の発見時点での所有者に渡るまでには正規の過程が含まれているなど、当事者は直接犯罪に関わっていない場合が多く[注釈 2][10]、取り戻すためには民事訴訟で車両が盗難車両である事を立証せねばならないなど、一筋縄で取り返す事は非常に困難である[10]。 また資産価値の高く狙われやすい大型車両であっても、車両価格が100万から150万程度であるオートバイの価格を考慮すると、時間や費用が車両価格を上回ってしまう場合が多く、泣き寝入りせざるを得ない場合がほとんどである[10]

また、近年においてはオートバイ市場の縮小による経営悪化を受けてか、販売店経営者による転売目的での盗難も発生している。顧客に引き渡した車両に関する情報、あるいは複製した鍵などを用いて、実行犯等と共謀し引き渡された車両をそのまま窃盗、転売するといった手口で犯行が行われる。[要出典]

2012年、盗難被害における車種別の台数がその他の車両と比較して3倍に及ぶため、ホンダ・CBX400Fの盗難保険契約が損害保険会社より拒否される事態になったと、ロードサービスを扱うJBR Motorcycle(現JBR Leasing)が発表した[11]。同車種は1981年から1984年にかけて販売されたベストセラーモデルあり、当時を経験した40代後半のユーザー層に特に高い人気のある車両である。2012年の段階で販売終了から既に30年近くが経過しているが、中古車両の市場価格が新車当時の定価(1981年式の基本グレードで470,000円[12])の3倍程度から状態の良い車両では10倍近くにまでおよぶ高価な車両となっている。

高価な車両ばかりが盗まれる訳ではなく、2003年前後には兵庫県内でホンダ・カブの盗難被害も相次いで発生した[13]。こうしたビジネスバイクのケースでは、実用性・経済性・耐久性から開発途上国で需要があり、自動車盗におけるトヨタ・ハイエースと同様の傾向が見られる[14][15][16]

転売目的によるパーツ窃盗

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自動車のホイールカーナビカーオーディオなどが、取り外しができなおかつ資金化の際に犯罪行為が露見しにくい為に狙われやすいように、オートバイにおいては高価なカスタムパーツが窃盗対象に狙われる危険性がある。自動車と異なりパーツが露出しているオートバイでは、ほとんどのパーツ類がボルト数本で固定されているため路上ないし屋外での分解が容易であり、マフラーブレーキなどでは購入価格にして数十万のパーツも存在する。

注・出典

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注釈

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  1. ^ BMW・K1200が盗難被害にあった一年後、タイの犯罪組織に関する報道番組の取材過程で車台番号の一致する車両が発見された例などがある[10]
  2. ^ ただし、正規の手筈を踏まえつつも辿り着いた経緯を理解している(現地での所有登録こそ済ませているものの元が盗難車である事を承知している)など不自然な点は多く、予め売却の為に用意された密輸組織の末端構成員であるか、完全に無関係な個人所有者であるかは不明である。また、当事国にあっては所有の認められていない排気量の車両という場合もある。

出典

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  1. ^ 法務省『令和5年版犯罪白書 第1編 犯罪の動向 第1章 刑法犯 第2節 主な刑法犯 1 窃盗 1-1-2-3図 窃盗 認知件数の推移(態様別、手口別) (Excel)』(レポート)、2023年12月。2024年4月7日閲覧
  2. ^ 警察庁捜査支援分析管理官令和5年1月〜令和5年12月犯罪統計【確定値】 第2表 窃盗 手口別 認知・検挙件数・検挙人員 対前年比較 (PDF,Excel)』(レポート)、2024年2月9日、10頁。2024年4月7日閲覧
  3. ^ 法務省. “犯罪白書>昭和49年版の犯罪白書>目次>第1編 犯罪の動向>第2章 統計からみた昭和48年の犯罪の概観>第1節 刑法犯の概況>2 財産犯罪>I-15表 窃盗の主要手口別発生件数の推移(昭和44年〜48年)”. 2020年7月19日閲覧。
  4. ^ 法務省. “犯罪白書>昭和47年版の犯罪白書>目次>第1編 犯罪の動向>第二章 統計からみた昭和四六年の犯罪の概観>一 刑法犯の概況>2 財産犯罪>I-13表 窃盗主要手口別発生件数の推移(昭和42〜46年)”. 2020年7月19日閲覧。
  5. ^ a b 警察庁『令和4年の刑法犯に関する統計資料 第2 罪種・手口別の認知・検挙状況 3 その他の罪種・手口 (3) 窃盗(重要窃盗犯に該当する手口を除く。)エ オートバイ盗 (PDF,Excel)』(レポート)、2023年8月、50–52頁。2024年4月7日閲覧
  6. ^ 法務省『令和元年版犯罪白書 第6編 平成における犯罪被害者 第1章 犯罪被害 第2節 犯罪被害についての実態調査 2 31年調査の結果 (Excel)』(レポート)、2019年11月。2020年3月12日閲覧
  7. ^ 警察庁生活安全局少年課令和5年中の少年非行等及び子供の性被害の状況 第1 少年非行 1 刑法犯少年 (5) 街頭犯罪 (PDF,Excel)』(レポート)、2024年3月、3頁。2024年4月7日閲覧
  8. ^ 少年犯罪データベース 暴走族事件 - 少年犯罪データベース(2014年7月14日閲覧)
  9. ^ 暴走族を根絶しましょう - 宮城県公式ウェブサイト(2014年7月16日閲覧)
  10. ^ a b c d e Big Machine - 盗難バイク探索衝撃レポート第2弾、P. 78
  11. ^ 読売新聞 - 2012年9月6日 - 狙われる名車CBX 盗難率他車種の3倍 - YOMIURI ONLINE - データなし(2012年9月9日時点のアーカイブ)
  12. ^ ホンダ 二輪製品ニュース 1981年10月27日 「ホンダ スーパースポーツ CBX400F」を発売
  13. ^ レスポンス - GPS発信機で盗難バイク発見!! 窃盗団摘発なるか(2003年07月15日) - Response.(2014年7月19日閲覧)
  14. ^ レスポンス - 人気車種を指名! 京都府警が盗難車ランキングを初公表(2003年07月25日) - Response.(2014年7月19日閲覧)
  15. ^ レスポンス - トヨタ ハイエース が自動車盗難被害トップ、5年連続…損保協会調べ(2012年03月22日) - Response.(2014年7月19日閲覧)
  16. ^ レスポンス - 盗難車、「ハイエース」が7年連続でワースト1位、「アクア」がワースト20入り…損保協調査(2014年03月21日) - Response.(2014年7月19日閲覧)

参考文献

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「愛車の「絶対安心」保管術」『Big Machine』第80巻、内外出版社、2002年2月、P. 42-79、雑誌07695-2。 

関連項目

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