二重ローン問題
二重ローン問題(にじゅうローンもんだい)は、災害などで被害を受けた住宅のローンや、事業者のローンなど、元々あった債務の存在により、再建のための資金調達余力がないことにより、あるいは、新たな借入を起こすことで、既存の借入金との二重の借入負担が発生することにより、生活復旧や事業継続に支障をきたす問題。
1995年の阪神淡路大震災の際にも二重ローン問題が取りざたされたが、損失負担や他の災害被災者との公平性の観点から、地方公共団体がローン利子補給を行ったものの、ローン債務の減免や、住宅再建・補修費用に対しての公的支給は見送られた[1]。その後、被災者救済のための大規模な署名活動を受け、1998年に恒久法となる被災者生活再建支援法が成立。当初は住宅に関しては支援対象外であったが、2004年の改正で住宅解体・撤去・整地費用や住宅ローン利子が支援対象となり、2007年の改正で自然災害によって全壊・半壊した住宅の再建・補修費も支援の対象となった[2]。
個人向け債務私的整理ガイドライン
[編集]2011年3月11日に起きた東日本大震災の被災者救済のため、個人の住宅ローンや、個人事業主のローンなどの債務を対象とした「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(被災ローン減免制度)が同年8月22日より運用開始された[3][4][5]。ちなみに、事業者向けの対策としては、同年11月に東日本大震災事業者再生支援機構法案(二重ローン救済法案)が成立している。
前述のガイドラインの恒久措置版となる、個人の住宅ローンや、個人事業主のローンなどの債務を対象とした「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(自然災害債務整理ガイドライン)」が運用開始された。2015年9月2日以降に発生した災害救助法の適用を受けた自然災害が適用対象となる。
ガイドラインによって、当該自然災害の影響により債務の返済が困難になった個人が、一定の財産を手元に残したうえで債務の減免を受けることが可能であり、また、信用情報機関に債務整理の情報(いわゆる「ブラックリスト」)が登録されないこととなっている。 ガイドラインの対象となる借入先・債権者の範囲は、銀行や、銀行と同様の金融機関(信用金庫、農協など)のみに限定されず、政府系金融機関や貸金業者(モーゲージバンク・ノンバンク・商工ローンなどを含む)、リース会社、クレジット会社なども含まれる[6][7]。
なお、令和2年10月30日、東日本大震災に対しても自然災害債務整理ガイドラインが適用されることが明記された。これにより、個人向け債務私的整理ガイドラインは、令和3年3月31日の経過をもって適用終了となり、今後の債務者救済は自然災害債務整理ガイドラインに一本化される。
脚注
[編集]- ^ 時事深層 「徳政令」で試される政治主導日経ビジネスONLINE、2011年5月31日。
- ^ 田近栄治、宮崎毅 『震災における被災者生活再建支援のあり方―制度の変遷と課題―』 季刊社会保障研究、第49巻 第3号、2013年、270-282頁。
- ^ 「「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の適用が開始されました」 東北財務局。
- ^ 「住宅ローンなど借入れの返済が困難な震災被災者の方へ 個人版私的整理ガイドラインをご存じですか。」 政府広報オンライン、2013年9月2日。
- ^ 個人債務者の私的整理に関するガイドライン(「ガイドラインについて」 一般社団法人 個人版私的整理ガイドライン運営委員会。)
- ^ 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(「自然災害債務整理ガイドライン」 全国銀行協会。)
- ^ 「「積極的な活用を! 被災ローンの減免制度」(時論公論)」 NHKオンライン、2016年4月27日。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 個人債務者の私的整理に関するガイドライン(東日本大震災による被災者向け)
- 自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン(2015年(平成27年)9月2日以降の自然災害による被災者向け)
- 大規模な自然災害でローンの返済が困難になったら - 一般社団法人 全国銀行協会
- 自然災害債務整理ガイドライン - 一般社団法人 全国銀行協会