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039A型潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
元型潜水艦から転送)
039A型潜水艦 (元型)
基本情報
種別 攻撃型潜水艦
運用者  中国人民解放軍海軍
就役期間 2006年 - 現在
建造数 20隻[1]
前級 039型 (宋型)
次級 最新
要目
基準排水量 2,000トン
水中排水量 2,400トン
全長 72.0 m
最大幅 8.4 m
吃水 5.5 m
機関方式 ディーゼル・スターリング・エレクトリック方式
主機 ・陝西-MTU 16V396 SE83/84
 ディーゼル発電機×4基
スターリング発電機
電動機×1基
推進器 スクリュープロペラ×1軸
出力 6,092馬力
速力 浮上時16ノット / 潜没時23ノット
乗員 58名
兵装 533mm魚雷発射管×6門
(魚雷USM計18本又は機雷24基)
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039A型潜水艦(039Aがたせんすいかん、中国語: 039A型潛艇)は、中国人民解放軍海軍の運用する攻撃型潜水艦の艦級。NATOコードネーム元朝に因んで元型: Yuan-class)。なお艦型番号は041型ともいわれている[2][3]

設計

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セイル部分は039型(宋型)に類似しているが、全体的には、ロシアから輸入していたキロ型の影響が指摘されている。船型は両型と同じ、涙滴型船型・1軸推進方式が踏襲された。推進器も同じく7翼のスキュード・プロペラといわれている[4]。構造様式は完全複殻式とされており、最大潜航深度は039型と同じく300メートルといわれている[2]

本型の最大の特徴が、非大気依存推進(AIP)機関であり、これはスターリングエンジンを用いたものと言われている[2]。人民解放軍海軍は1980年代よりAIPについての予備研究に着手したとされる。およそ15年の検討において、燃料電池は安全性と技術的困難、クローズド・サイクル・ディーゼル(CCD)は水中放射雑音の面から不適とされ、最終的にスターリングエンジンが選定された。1991年より、第711研究所はスターリングエンジンの研究を開始しており、1998年には理論モデル(出力75キロワット)を作成、2002年には試作機を完成させた。そして2万時間もの試験運転を経て、2004年に本型に搭載されたとされている。なお本型の搭載機については、ジェーン海軍年鑑では、確実性に疑問符をつけつつ、出力75キロワットの機関を2基搭載しているものと推測しているが、これは本型よりも一回り小型のスウェーデン海軍ゴトランド級(A-19型)と同程度の出力となる[5]

なお、AIPに頼らない通常のディーゼル・エレクトリック方式での航走の際に用いる発電機の原動機としては、039型と同様に、MTU 396 SE84シリーズのディーゼルエンジンが搭載されていると見られている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、2012年末までにドイツMTUフリードリヒスハーフェン社から56基の潜水艦用ディーゼルエンジンが輸出されたとされている。またMTUディーゼルのライセンス生産も行われている[5]

装備

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ソナーは、艦首のアクティブ/パッシブ両用アレイと、艦側面に貼り付けられたパッシブ・アレイによって構成されており、曳航アレイは備えていないものと見られている[5]

標準的な533mm魚雷発射管を、上に2本、下側に4本と上下に並べて装備している。ここからは、YJ-82潜水艦発射対艦ミサイル(USM)と魚雷、機雷を運用できる[2][5]

型式

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039A型は継続的な改設計を受けており、初期型の039A型、改良型のAG型、B型、B改型、発展型のC型に区別される。

039A型

039A型の初期型。前級である039/039G型との外観上の違いは、セイル後端の整流フィンが、039A型にはないことである。

039AG型

039A型と比較して、セイルと船体の前部結合部が角を埋める構造となっている。この特徴は喫水線下にあり、容易には観察できないが、現在までに039AG型は039B型に改修されていると考えられる[6]

039B型

セイルの設計変更とソナーシステムをアップグレードした改良型。セイルの流体設計により水中抵抗を減少させ静音性能を向上させている。また船体側面にフランク・アレイ・ソナーを装備している[7]。上海長興造船所で建造された039B型がドックで目撃された2010年代初頭になって初めて、039B型の側面ソナーが公表され、側面ソナーを装備しない039AG型と区別されるようになった[8]

039B改型 

セイルと船体の接合方法を改善し、丸みを帯びた形状を採用した改良型[9]

039C型

セイルを設計変更した発展型。スウェーデンA26型潜水艦に類似するくびれを設けた構造により、静粛性と水中航行性能を向上させている。また曳航式ソナーを中国海軍の通常動力型潜水艦として初めて装備していると見られる[7]。2021年5月に武漢で初めて目撃された[10]

運用

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 中国人民解放軍海軍
艦番号 建造所 進水 就役 配属
039A 330(長城220) 武昌造船 2004年5月31日 2006年 東海艦隊
331(長城221) 2007年8月31日 2008年
332(長城222) 2007年11月 2009年
333(長城223) 2008年 2010年
039B 334(長城224) 2010年 2011年
335(長城225) 江南造船 2010年 2011年
336(長城226) 2010年 2011年
337(長城227) 2011年 2012年
338(長城228) 2011年 2012年
339(長城229) 2011年 2012年 東海艦隊
340(長城230) 武昌造船 2012年 北海艦隊
341(長城231) 2012年
039B改 342(長城232) 2013年12月 2014年 北海艦隊
343(長城233) 2016年12月 2017年
344(長城234) 2016年12月 2017年
345(長城235) 江南造船 2016年12月 2017年 南海艦隊
346(長城236) 2018年
347(長城237) 武昌造船 2018年 北海艦隊
039C 不明 2021年 不明
不明 江南造船 2021年 不明
 タイ海軍

2017年プラユット・チャンオチャ首相は、中国から潜水艦3隻を購入する計画を明らかにした。同年1月、王立タイ海軍は、S26T潜水艦(039B型の輸出向け)の購入に向け3億8,340万ドルを確保した。3隻合計で10億2000万ドルとされているが、プラユット首相はタイのメディアに対して、3隻のうち1隻は「無料のプレゼント」と語った。同年5月、タイ政府は3億9,000万ドルで1番艦の建設に関する契約を締結した。2018年9月4日、1番艦の起工式が行われた[11]。タイでは1937年に初の潜水艦マッチャーヌ級を調達したが、その後50年以上潜水艦を運用しておらず、S26Tは第二次世界大戦の終結以来、タイ海軍初の潜水艦となる予定[12]

しかし、ドイツ製エンジンを搭載することが合意条件になっていたが、ドイツ側がエンジン供給を拒否したことで建造が中断した。欧州連合による中国への武器禁輸措置のためで、2022年4月4日、タイのプラユット・チャンオチャ首相は契約破棄を示唆した[13]

2023年10月20日、タイの国防大臣Suthin Klangsaengは購入計画を保留すると発表した[14]

 パキスタン海軍

2015年4月、パキスタン政府はパキスタン海軍向けに中国から輸出版の039B型の改良型を8隻、50億ドルで購入することを承認した。この取引は2015年7月23日に確定した[15][16]。 同年10月、8隻のうち4隻の潜水艦がパキスタンで建造され、両国で同時に作業が開始されることが明らかになった。パキスタンの国防生産大臣は、この協定には艦艇を建造するための技術移転が含まれていることを確認した[17]

中国で建造されている4隻は2024年に納入されると予想され、パキスタンによって建造されている4隻は、2025年から2028年の間に年間1隻のペースで納入すると予想されている[18][19]

登場作品

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漫画

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空母いぶき
架空艦「遠征102」「遠征103」が登場。中国人民解放軍に占拠された先島諸島の奪還に向かう、航空機搭載型護衛艦いぶき」を旗艦とする第5護衛隊群を襲撃し、これの迎撃にあたる第5護衛隊群所属のそうりゅう型潜水艦けんりゅう」などと戦闘を繰り広げる。

参考文献

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  1. ^ Annual Report to Congress: Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2018”. Office of the Secretary of Defense. p. 29 (16 May 2018). 6 December 2018時点のオリジナルよりアーカイブ22 August 2018閲覧。
  2. ^ a b c d Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. pp. 111-112. ISBN 978-1591149545 
  3. ^ 「写真特集 今日の中国軍艦」『世界の艦船』第816号、海人社、2015年5月、25頁、NAID 40020406561 
  4. ^ 「潜水艦 (特集・中国海軍の新型艦艇) -- (注目の中国新型艦艇)」『世界の艦船』第686号、海人社、2008年2月、84-87頁、NAID 40015771004 
  5. ^ a b c d 小林正男「潜水艦「元」型 (特集 中国の現代軍艦)」『世界の艦船』第799号、海人社、2014年6月、86-87頁、NAID 40020064125 
  6. ^ Type 039A Yuan class sub variants”. 10 April 2014時点のオリジナルよりアーカイブ8 May 2014閲覧。
  7. ^ a b 039A”. www.mdc.idv.tw. 2024年2月11日閲覧。
  8. ^ Type 039A Yuan class sub variants”. 10 April 2014時点のオリジナルよりアーカイブ8 May 2014閲覧。
  9. ^ sina_mobile (2018年12月29日). “中国新型039C潜艇消音瓦细节曝光 工艺不输德国(图)”. mil.sina.cn. 2024年2月11日閲覧。
  10. ^ The New Mystery Submarine Seen in China: What We Know” (25 June 2021). 2024年2月11日閲覧。
  11. ^ China cuts steel for Thailand's first S26T submarine”. IHS Jane's 360 (4 September 2018). 4 September 2018時点のオリジナルよりアーカイブ4 September 2018閲覧。
  12. ^ Thai Prime Minister confirms plans to buy submarines from China
  13. ^ “タイ、中国製潜水艦導入が頓挫 独がエンジン供給拒否”. 産経新聞. (2022年4月20日). https://www.sankei.com/article/20220420-CLAMS3XRS5NYPADFDDLBTR6NLY/ 2022年4月20日閲覧。 
  14. ^ 無法取得德國發動機!泰國宣布擱置對中採購潛艦 | 國際” (中国語). Newtalk新聞 (2023年10月21日). 2024年2月11日閲覧。
  15. ^ Beijing eyes bigger arms exports after Pakistan deal, experts say”. 2018年4月28日時点のオリジナルよりアーカイブ2015年5月26日閲覧。
  16. ^ Archived copy”. 2015年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ2015年7月24日閲覧。
  17. ^ SYED, BAQIR. “China to build four submarines in Karachi”. DAWN News. オリジナルの8 October 2015時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151008012900/http://www.dawn.com/news/1211363/china-to-build-four-submarines-in-karachi 7 October 2015閲覧。 
  18. ^ China to supply Pakistan with eight new attack submarines” (英語). The Express Tribune (2016年8月31日). 2024年2月11日閲覧。
  19. ^ desk, News (2023年11月14日). “Pakistan to add Hangor-Class Sub. next year” (英語). Pakistan Observer. 2024年2月11日閲覧。

外部リンク

[編集]

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