全日本学生ドリフト王座決定戦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

全日本学生ドリフト王座決定戦(ぜんにほんがくせいドリフトおうざけっていせん)は、雑誌ドリフト天国が主催している学生限定のドリフトコンテスト。通称は「学ドリ」。

概要[編集]

日本唯一の学生だけで戦われるドリフトコンテストである。2002年に第1回が開催され、以降毎年8月に実施されてきたが、2020年2021年は11月に、2022年は10月に、2023年は9月に開催された。

歴代優勝者のなかには、現在D1グランプリで活躍する岩井照宜(2003年西大会優勝[1])や秋葉瑠世(2015年東大会優勝[2])、フォーミュラ・ドリフトに参戦する田口和也2011年2012年東大会優勝[3])なども含まれており、D1グランプリやフォーミュラ・ドリフトなど競技ドリフトへの登竜門としての一面を持つ。一方で、勝つために全力を尽くす者もいれば仲間との思い出を残すために出場する者もおり、大会でありながら文化祭体育祭のような雰囲気も醸し出している[4]

長年にわたりフェデラルタイヤアップガレージが大会のメインスポンサーを務めており、優勝者や2位・3位の者にはフェデラル製のタイヤやアップガレージで使用できる商品券が贈呈される。2022年からはドリフト向けタイヤメーカーのVALINO TIRESが大会のオフィシャルサポーターとなったことに伴い、同社のタイヤが賞品に加わった[5]

特徴[編集]

出場車種は他のドリコンと比べて多様である。かつてはシルビア(S13・S14・S15型)や180SXスカイライン(R32・R33・R34型)、チェイサーマークIIクレスタ(JZX90・JZX100型)といったドリフトの定番とされる車種のターボエンジン搭載グレードがほとんどを占めていたが、それらの車種の中古価格の高騰に伴い[6]、近年ではロードスター(NA・NB・NC型)、フェアレディZ(Z33・Z34型)、スカイライン(V35型)、RX-8アルテッツァ86/BRZといったような自然吸気エンジンを搭載する車種、あるいはシルビアや180SXの自然吸気エンジン搭載グレードなども増加傾向にある。また、ドリフトにおいては珍しいミッドシップMR2や、ビートアルトワークスカプチーノのような軽自動車も出走している[7]

車両改造に関しても規定はなく、ナンバープレートを取得していない競技専用車両から、フルノーマルに近い車両まで多様である。ただし、ターボ車であってもタービンを高出力を発揮できる社外品に交換している割合は低い。これに関してドリフト天国編集長の川崎隆介は、「(参加者の)自主規制」「500馬力も600馬力もある車で優勝しても、誰も褒めてくれないんじゃないかという考え」が背景にあると分析している[6]

歴史[編集]

2002年、三栄書房の主催する「パワーツアー in 富士スピードウェイ」の中のコンテンツとして、富士スピードウェイNコースで初開催された[4][8]

2003年からは、参加者の増加への対応と地域格差の低減のため、東日本と西日本のサーキットで東大会・西大会をそれぞれ行うことになった[4]。2003年以降、東大会は日光サーキットでほぼ毎年開催され(2004年のみエビスサーキット)、西大会は当初は名阪スポーツランド・備北ハイランドサーキット・DECセキアヒルズサーキットのいずれかで開催されていたが、2007年以降は名阪と備北で1年おきに交互に開催する形が定着した。

2009年からは、東大会・西大会それぞれの上位進出者による東西統一戦が日光サーキットで実施されるようになった。ただし、2019年は西大会および東西統一戦を廃止し東大会のみの開催となり、2020年以降は東大会・西大会共に開催せず富士スピードウェイのマルチパーパスドライビングコース(旧・ドリフトコース)での全国大会のみとなっている[4]

参加資格[編集]

2023年時点の参加資格は以下のようになっている[4]

このような参加資格のため、参加者の在籍する学校は大学大学院短大専門学校高等学校職業訓練校など様々である。

2003年以降、参加にあたっては事前に書類選考が行われており、合格者のみが出場できる[4][9]

審査[編集]

D1グランプリやフォーミュラ・ドリフトなどの一般的なドリフト競技大会と異なり、審査基準は「自分の走りで100%以上を出せること」である[10]。そのため、スピンやコースアウトがあっても、鋭いコーナー進入やアクセルを緩めない走りが評価され高得点となったり、反対に車のスペックを使い切った走りができていないと判断されると得点が伸びない場合もある。

審査員は第2回から元D1GP選手の古口美範今村隆弘が務める。

大会の流れ[編集]

予選[編集]

毎年「方式は当日発表」とされているものの、コース上にパイロンを置き、その間をサイドターンやドリフトを駆使してスラロームで走り抜けるパイロン卍が2005年から採用され続けている[4]。スラロームの際にドリフト出来ていなかったり、パイロンに接触してしまったり、反対にパイロンから離れすぎてしまったりした場合は減点となる[10]。100点以上の走りを見せた選手は「パイロン王子」として表彰される。予選通過人数は年によって異なるが、例年概ね参加者の半数程度に絞られる。

本戦[編集]

予選で絞り込まれた選手によって争われる。かつては1回戦と決勝戦の間に2回戦が開催されたり、敗者復活戦が行われたりしたこともあったが、2020年以降はどちらも実施されておらず、1回戦の上位がそのまま決勝へと進出する。また、トーナメント形式や追走形式で行われたこともあったが、2020年以降は1回戦・決勝戦共に1人2本走行の単走形式が採用されている。

クレクレタイム[編集]

決勝終了後のフリー走行で開催される恒例のイベント。参加者が自身の車にガムテープなどでメッセージを書いてアピールし、目立った参加者にはスポンサー企業からエアロパーツやタイヤなどの商品がプレゼントされる[10]

作品[編集]

  • 映画『ガクドリ』(2011年)[11]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ただし、実際には公共職業能力開発施設の学生も参加可能である。
  2. ^ この年齢制限が定められたのは2009年からである[4]。現D1グランプリ選手の岩井照宜は、25歳の時(2003年)に学ドリ西大会で優勝している[1]

出典[編集]

  1. ^ a b 【第3回後編・学ドリ2022への道】開幕直前スペシャル座談会・後半の部│D1GPやD1ライツで活躍中の学ドリ出身ドリフトドライバーたちが学ドリの思い出を語り尽くす!! VALINO TIRES international、2022年10月3日
  2. ^ 【第3回前編・学ドリ2022への道】開幕直前スペシャル座談会・前半の部│D1GPやD1ライツで活躍中の学ドリ出身ドリフトドライバーたちが学ドリの思い出を語り尽くす!! VALINO TIRES international、2022年10月3日
  3. ^ 2012東西各大会優勝者 学ドリ2012、2023年1月25日閲覧
  4. ^ a b c d e f g h 『JAFスポーツ』2023年夏号(第57巻第3号)
  5. ^ VALINO TIRES公式Twitterアカウントのツイート VALINO TIRES ヴァリノタイヤ 公式、2022年9月4日
  6. ^ a b 【第22回 全日本学生ドリフト王座決定戦│学ドリ2023】学生ドリフターたちの、夏の終わりの熱き一日を振り返る VALINO TIRES international、2023年10月6日
  7. ^ Oh! 伝説のチャレンジャー PART1 記録より記憶! 青春は爆発だ! 学ドリ2008、2021年6月22日閲覧
  8. ^ ☆『学ドリ2020』に参戦しました!☆ 太田自動車大学校、2020年12月3日
  9. ^ 【第2回・学ドリ2022への道】学ドリ2022書類選考&出場者発表!! 20年間公開されなかった学ドリ出場者選考の裏側を大公開!合格した出場者も発表いたします! VALINO TIRES international、2022年9月15日
  10. ^ a b c 唯一学生のみのドリフト大会 学ドリ2019 廃車ドットコム、2021年6月22日閲覧
  11. ^ ガクドリ 東映ビデオ株式会社、2023年4月19日閲覧