公衆道徳上有害業務
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
公衆道徳上有害業務(こうしゅうどうとくうえゆうがいぎょうむ)とは法律用語。
概要
[編集]職業安定法第63条や労働者派遣法第58条では「公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的で職業紹介、労働者の募集、労働者の供給を行った者、労働者派遣をした者に対して刑事罰が規定されている。「公衆道徳上有害な業務」は社会共同生活上守られるべき道徳を害する業務と定義されている[1]。ソープランドやファッションヘルスやストリップやアダルトビデオなどの性産業については本番行為をせずに性交類似行為に留まって売春防止法に違反せずに風俗営業法を遵守していたとしても「公衆道徳上有害な業務」という判例が確立している[2]。1958年に売春防止法が完全に施行される前は売春業についても捜査機関によって「公衆道徳上有害な業務」を規定する職業安定法違反で摘発されたことがある。
「労働者の募集」について職業安定法では「労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘すること」と定義しているが、1991年5月9日の大阪高裁の判決では「労働者の募集とは労働者となろうとする者に対し、被用者となるように勧め、あるいは誘うなどの働きかけのあることが必要であって、面接のなかでこのような働きかけをしたり、殊更雇用(労働)条件を偽るなど特別の事情がある場合は別として、労働契約締結の際における単なる面接や雇用(労働)条件の告知など労働契約締結に当然伴う行為は、労働者となろうとする者の意思決定に事実上影響を及ぼすことがあっても、勧誘に当たらない」としている[注釈 1]。
脚注
[編集]- 注釈
- ^ 売春をさせることを内容とする契約を処罰対象としている売春防止法第10条とは異なり、職業安定法第63条では公衆道徳上有害な業務に就くことを内容とする労働契約の締結行為自体は処罰の対象としておらず、その一方で労働基準法第15条が「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と規定し、公衆道徳上有害な業務に就くことを内容とする契約も同条の労働契約から除外すべき理由がないため。
- 出典
- ^ 労働新聞社 2018, p. 329.
- ^ 大塚尚 2016, pp. 252–256.
参考文献
[編集]- 労働新聞社『職業安定法の実務解説 改訂第5版』労働新聞社、2018年。ISBN 4897617235。
- 大塚尚『風俗営業法判例集 改訂版』立花書房、2016年。ISBN 4803707227。