利用者:あさって/sandbox
量子力学において超選択則(ちょうせんたくそく、英: superselection rule)とは、ヒルベルト空間上のエルミート演算子がオブザーバブルであるための必要条件である。エルミート演算子が、超選択則を特徴付けるある演算子に対して(すなわちがと可換)を満たすとき、は超選択則を満たす。その逆、つまり「超選択則を満たす演算子はオブザーバブルである」が正しいのかは分かっていない。
明らかには超選択則を満たすのでオブザーバブルになりうる。また、系のハミルトニアンは観測可能である(と仮定される)のでであり、は保存量である。したがって超選択則は(不正確ではあるが)「保存量の演算子と可換でない演算子は観測可能な物理量に対応しない」という意味だといえる。これは、超選択則の元となった選択則が量子状態のパリティやスピン多重度の保存則に関連していることに対応している。
例えば、位置演算子は運動量演算子と可換でない(正準交換関係)ので、運動量が保存するとき位置は観測可能でない。これは不確定性原理においてとするとが発散して意味のある観測ができないことを表している。
超選択則と混合状態
[編集]超選択則を特徴付ける演算子の異なる固有値に属する(すなわち、がオブザーバブルであるとすれば、それに対応する物理量の値が異なる)2つの量子状態ととオブザーバブル(したがっては超選択則を充たしと可換)に対して、が成り立つ。これはとにおけるの値をそれぞれと(これらはいずれも実数であることに注意)として
であることから分かる。
これら2つの重ねあわせ状態においてオブザーバブルの期待値は、干渉項が落ちるので
となる。は任意であったので、このという状態は、古典的な意味で確率的にとのどちらかであるような状態、すなわち混合状態である。つまり、の値が違う状態は重ねあわせても量子論的な相関を持つことが出来ない。その意味で、超選択則は量子状態同士の相関の仕方を規定しているといえる。
2つの状態とが任意のオブザーバブルに対して を満たすとき、この2つの状態は超選択則によって分離されていると言う。超選択則によって分離されている状態の重ね合わせが混合状態になることは、上と同様にして示される。これに対し、ハミルトニアン演算子についてを満たす2つの状態は選択則によって分離されていると言う。
参考文献
[編集]- 清水明『新版 量子論の基礎―その本質のやさしい理解のために―』サイエンス社、2004年。ISBN 4-7819-1062-9。
- “量子論における超選択則の力学的起源とカラーの閉じ込め”. 2014年2月1日閲覧。