コンテンツにスキップ

利用者:おいしい豚肉/sandbox/インゲルド

ルイス・モー英語版によるインゲルドの絵。

インゲルド(英語: Ingeld)はイングランドと北欧の古代の伝承に登場する伝説上の戦士。 彼個人の歌が八世紀のイングランドに独立して存在し人々に好んで歌われたことが、リンディスファーンのヒュグバルド英語版に宛てたアルクィンの書簡から明らかになっている[1]。「修道士が集う司祭館では、神の言葉が読まれるべきだ。そこは、竪琴奏者ではなく読師の言葉、異教徒の歌ではなく教父の話を聞くにふさわしい場所である。インゲルドがキリストと何の関りがあるというのか?」[2]

インゲルドの伝説は叙事詩などの中にその一部として内包される形で現存している。こうした古代・中世の文学作品においては、共通してインゲルドとフロースガールらの対立構造が描かれるが、彼らの血統については作品間に相違が見られる。古英語詩『ベーオウルフ』と『ウィードシース』ではインゲルドはヘアゾベアルド族に属し、デネ族のフロースガールらと抗争を繰り広げる。一方で北欧の『スキョルドゥンガ・サガ』ではインゲルドとフロースガールは近親であり、血族内での確執が展開される。『デンマーク人の事績』ではインゲルルス(インゲルド)らはディン族であり、敵対するのはサクソン人となっている[3][4][5][6]エッダのヘルギ・フンディングを倒すものの歌」二も登場するが老戦士が唆す相手が異なる[3]

『ベーオウルフ』[編集]

『ベーオウルフ』では、インゲルドはヘアゾベアルド族のフローダ王の息子であり、デネ族との間の戦争に関わっている。ベーオウルフは、彼の仕えるヒイェラーク王にデネでの冒険を報告した折、フロースガル王にはフレーアワルという名の娘がいることに言及する。フローダがデネとの戦争で命を落とした後、フロースガールはフレーアワルをインゲルドの元に送り政略結婚させるが、この企みは失敗に終わり両部族の抗争を終わらせることはできなかった。ヘアゾベアルド族のとある老戦士が扇動し、同族を復讐へと駆り立てた。そしてベーオウルフはヒイェラークにインゲルドが自身の義理の父親となったフロースガールに敵対するであろうことを予言する。後述するデンマークの年代記『デンマーク人の事績』においては、この老戦士は Starkad という名で登場し、インゲルドに彼の妻と離婚させ、妻の氏族と対立させることに成功する。[6] 『ベーオウルフ』の序盤で、語り部である詩人はフロースガールの館ヘオロットは最終的には焼け落ちてしまうことを示す。

Sele hlīfade
hēah and horn-gēap: heaðo-wylma bād,
lāðan līges; ne wæs hit lenge þā gēn
þæt se ecg-hete āðum-swerian
æfter wæl-nīðe wæcnan scolde.
          ....館はそびえ立った
高く、そして切妻も広く; 戦火を受けることになった
敵意の炎の; まだずっと先のことではなかった、
刃の恨みが 義理の息子と義理の父の間の
恐ろしい憎しみの結果として 起こるのは。

このヘオロットの炎上はインゲルドがデネに対して起こした戦争が原因であるという解釈が主流であるが、『ベーオウルフ』は「まだずっと先のことではなかった」と二つの出来事を区別している。

『ウィードシース』[編集]

『ベーオウルフ』はインゲルドとの戦いの結末について詳しく触れることはないが、おそらくより古く成立した詩『ウィードシース』ではフロースガールとフローズルフがヘオロットでインゲルドを破った事が語られる。

Hroþwulf ond Hroðgar heoldon lengest
sibbe ætsomne suhtorfædran,
siþþan hy forwræcon wicinga cynn
ond Ingeldes ord forbigdan,
forheowan æt Heorote Heaðobeardna þrym.
フローズルフとフロースガールは叔父甥の関係にして
ウィーキンガスの一族を逐い、
インゲルドの槍先を辱め
ヘアゾベアルダンの軍をヘオロットに殲して後は、
久しく共に平和を保ちき。[7]

『スキョルドゥンガ・サガ』と『Bjarkarímur』[編集]

『スキョルドゥンガ・サガ』[5][8]Bjarkarímur[5]ではフローダとインゲルドの関係が逆転し、インゲルド(Ingjaldus)はフローダ(Frodo)の父親となっている。加えて、インゲルドはヘアルフデネの異母兄弟であるとされている。

Frodoはスウェーデン王Jorundを破ると彼らを属国とし、その娘を妻とした。Jorundの娘はFrodoとの間にHaldanを儲けたが、別の女がFrodoの正室となり、 Ingjaldusを生んだ。伯爵の一人 swering と共謀し、Jorund はblót(いけにえの儀式?)の間にFrodoを殺害した。

Haldenはd Sigrith という名の女王との間に Roas(フロースガールに相当)とHelgo(ハールガに相当)の兄弟と娘 Signy の3人の子を儲けた。Ingjaldus は自身の異母兄弟に嫉妬して彼を殺害するとその後すぐに Sigrith と結婚した。二人は Rærecus と Frodo という名の子を儲けた。Ingjaldusは甥たちに復讐されるのではないかと恐れ、彼らを探し出して殺そうとしたが  Roas とHelgoはスコーネ地方付近の島に潜伏して生き延びた。二人は十分に成長すると Ingjaldus.を殺害し父親の仇を取った。

『ロルフ・クラキのサガ』でもこれと大筋で同じ物語が語られるが、ヘアルフデネの異母兄弟はFroda (Fróði)という事になっている。

ヘアルフデネ
ハールガフロースガールフロースガールの妹フローダ
フローズルフフレーアワルインゲルド
正室FrodoJorundの娘
IngjaldusSigrithHalden
RærecusFrodoRoas
(フロースガールに相当)
Helgo
(ハールガに相当)
Signy

『デンマーク人の事績』[編集]

愛人(?)と共にいる Ingellus に会った Starkad。オラウス・マグヌスの『北方民族文化誌』(1555)より

The tradition of the feud with the Heaðobards Ingeld and Froda appears twice in the Gesta Danorum.[5] There is also a third time, based on the account of the old warrior who restarts the conflict.[6]

The first time it tells of the feud is book 2, where Ingeld (called Ingild) appears with the son Agnar. In this version, Ingeld's son is about to marry Hroðulf's sister Rute, but a fight starts and Agnar dies in a duel with Böðvarr Bjarki (called Biarco).

The second version in Gesta Danorum (book 6), concerns the adventures of Starkad, and which is based on the old warrior who restarted the conflict.[6] The Danish king Frotho (Froda) was killed through treachery by a Saxon named Swerting (Swertingus). Frotho's son Ingeld (Ingellus) lived a wanton life and married one of Swerting's daughters. This angered Starkad so much that he enlisted at the Swedish king Halfdan's (Haldanus) court instead. As Ingeld continued his sinful life and did not do his duty to avenge his father, Starkad appeared during a banquet that Ingeld had with the sons of Swerting, his father's slayer. Starkad strongly admonished Ingeld and humiliated his queen who tried to calm Starkad with kindness and her costly ribbon. Starkad succeeded in inciting Ingeld to kill Swerting's sons and to divorce his Saxon bride.



The third time, it tells of Froda and Ingeld is in book 7, but here Hroðgar is replaced by a Harald and Halga by a Haldanus.[5] ここではインゲルドはこれ以前に登場した者と同一人物だが、フローダはインゲルドの息子という形で再登場する。


It is a version of the feud that is similar to the one told in the Skjöldunga saga, Bjarkarímur and Hrólfr Kraki's saga, where the Heaðobards had been forgotten and the feud with Froda and Ingeld has become a family feud. The main plot is that Ingeld has the sons Frodo (Froda) and Harald (corresponds to Healfdene). The relationship between Ingeld and Froda was thus reversed, a reversal also found in the Skjöldunga saga and in the Bjarkarímur. Froda kills his brother and tries to get rid of his nephews Harald (corresponds to Hroðgar) and Haldanus (corresponds to Halga). After some adventures, the two brothers burn their uncle to death inside his house and avenge their father.

脚注[編集]

  1. ^ 厨川 1941, pp. 165–167.
  2. ^ トールキン 2017, p. 378.
  3. ^ a b 厨川 1941, p. 166.
  4. ^ Shippey, T. A.: Wicked Queens and Cousin Strategies in Beowulf and Elsewhere, Notes and Bibliography. In The Heroic Age Issue 5 Summer 2001. Archived 2014-02-03 at the Wayback Machine.
  5. ^ a b c d e The Relation of the Hrolfs Saga Kraka and the Bjarkarimur to Beowulf by Olson, 1916, at Project Gutenberg
  6. ^ a b c d The article Starkad in Nordisk familjebok (1909).
  7. ^ 厨川 1941, p. 216.
  8. ^ Nerman (1925:150)

出典[編集]