利用者:かぼ/アンサイクロペディア修正

アンサイクロペディアUncyclopedia, "the content-free encyclopedia that anyone can edit,"八百科事典)とはウィキペディアパロディサイトである。“Uncyclopedia”という名称は否定を意味する接頭語“un-”と百科辞典を意味する英語“encyclopedia”を組み合わせたかばん語であり、あえて直訳すれば「非百科事典」の意味になる。

概要[編集]

このサイトはジョナサン・ホアンと匿名の協力者らにより2005年1月に開始された。アンサイクロペディアの日本語版である「フリー誤報百科事典『バ科事典』」は2005年12月に開始された。なおタイトルの『バ科』は「馬鹿」に掛けたものであるが、2006年8月には「嘘八百」からとった『八百科事典』へ改称している。

アンサイクロペディアの非公式な目的はウィキ形式によるSPOVSatirical Point Of View風刺的な観点)を提供することにある。しかしながらこの目的はしばしば見失われ、あらゆるトピックにおいて必ずしも風刺的ではないユーモラスな記事が大量に作成されている。想定できる限りのあらゆる種類のユーモアがアンサイクロペディアには収められており、同様にルールに縛られない反応が推奨されている。

ウィキペディアにおいてはその項目に対する事実・真実があることから明らかな誤り、事実誤認などは次の投稿者により補正・修正が行われるが、アンサイクロぺディアはその投稿内容がパロディ・皮肉などであるため、良くも悪くも投稿者・読み手の主観によって成り立っており、善意のユーモア・悪意の投稿であるかの区別が読み手のスキルを問われるサイトである[1]

ヴァンダリズムすらも肯定的に捉えるオープンな性質にも拘らず、アンサイクロペディアもまた他のウィキと同様に荒らし行為に悩まされている。例を挙げればページの白紙化、スパム広告の挿入、陰惨かつ無思慮な現実の情報の記入、反ユダヤ主義覇権主義人種差別同性愛者差別などの政治思想の宣伝活動などがある。日本語版アンサイクロペディアでも公式方針として極端な差別的投稿等は即時削除としている[2]

アンサイクロペディアの編集方針は非常に寛大であるが、管理者たちはアンサイクロペディアの主旨に反した投稿の削除と、荒らしや破壊的なユーザーの追放を試み続けていることが知られている[3]

経緯[編集]

アンサイクロペディアはウィキペディア内の「削除された悪ふざけとナンセンス」の保管所として、2005年1月にウィキペディアの一部として開始された(アンサイクロペディア内にはこれのパロディである「削除された事実と退屈な文章」が存在する)。しかしながらこの保管所はウィキペディア上でまったく宣伝されず、分類されたトピックによる風刺的な文章の投稿場所として成長した。いうなればウィキペディア版「悪魔の辞典」という性質を有している。

アンサイクロペディアは最初に置かれたホストサーバー以上に急速に巨大化し、2005年5月26日にアンサイクロペディアが(ウィキシティーズ(現:ウィキア)としてではないが)ウィキアのサーバーに置かれると発表された[4]。その結果、アンサイクロペディアのライセンスとドメイン名はそのまま残された。

日本語版アンサイクロペディアの記事はクリエイティブ・コモンズの「表示 - 非営利 - 継承 2.5」のライセンス下に置かれている(フランス語版など一部言語版ではGFDLのライセンス下に置かれている)。他のWikicityのサイトと同様に、すべての記事データがオンラインで利用可能である。2007年12月の時点では英語版アンサイクロペディアには23000項目の記事が投稿されており、Wikiaのサーバーに置かれた6番目に大きいwikiとなっている[5]。また月間5回以上投稿した利用者の数は、2005年3月以降常に1位となっている[6]。ロゴは「ソフィア」と名づけられた、ジグソーパズル模様と記号が書き込まれたポテトであり、ウィキペディアのロゴのパロディとなっている。

記事[編集]

以下の例で特に注記のないものは英語版と日本語版に共通する内容である。

アンサイクロペディアの記事はパロディを目的として現実に緩やかに基づいているが、多くの場合はフィクションである[7]。またアンサイクロペディアの趣旨に合致する、現実の世界での出来事をからかった風刺的な記事も多い。たとえば多くの記事で、マイクロソフトの役員スティーブ・バルマーがその記事の主題を抹殺すると誓ったと引用されているが、これはバルマーによるGoogle抹殺宣言のパロディである。同種のジョークの中には「ジョージ・ブッシュが興味を持たない物」がある。これはアメリカのヒップ・ホップ・ラッパー、カニエ・ウェストによる「ブッシュがいかに黒人に興味を持っていないか」という発言のパロディである。

もともとあるジョーク、の類をシリーズとして拡大化したものもある。たとえば「君は牛を二頭持っている。」や「DHMO」、「風が吹けば桶屋が儲かる」など。

特定の事物に対して固執する傾向も強い。代表的な例がオスカー・ワイルドの偶像視であり、彼からの引用のパロディは頻繁に繰り返されているジョークであるほか、アンサイクロペディア内には「オスカー・ワイルドの架空箴言集」、「オスカー・ワイルド自身のページ」、さらには「ワイルド・プロジェクト」という独立のプロジェクトが存在する。加えて日本語版では「ひよこ陛下」というキャラクターを絶対視している。あるいは違法ドラッグの代替手段である「Kitten Huffing仔猫吸引)」は何度も繰り返されているジョークである。

さらに自己言及的なジョークも豊富である。例えば、日本語版の記事「ニヒリズム」は空白ページである。「モールス信号」の記事はモールス符号で記述されているほか、「読みにくい文章」ではありとあらゆる読みにくい文章で説明が書かれている。「再帰」の記事は自分自身へのリダイレクトとなっており、「冗語法」の記事は非常に冗漫である。英語版でも「リートスピーク」の記事はリートスピークで書かれており、「正しいWiki文法」の記事は文法ミスだらけである。「落書き」のページは、その項目自体が落書きだらけである。ただし、現在はこれらの記事の増加のし過ぎにより、このようなネタの投稿を好まない雰囲気もある。

アンサイクロペディア内には姉妹サイトとしてウィクショナリーのパロディである「アンディクショナリー」やウィキニュースのパロディである「アンニュース」、ウィキブックスのパロディである「アンブックス」が存在する。その他にも英語版ではウィキクォートウィキバーシティのパロディも作られている。

その他のテーマ[編集]

本来は風刺的な観点から記事が作成されていたが、ほかにも様々なユーモア表現の試みがなされている。以下の例で特に注記のない物は日本語版の記事である。

ウィキペディアの模倣[編集]

アンサイクロペディアの様々な個所ででウィキペディアの模倣が見られる。日本時間の2007年4月1日午前0時頃に、メインページがウィキペディアを参考にしたものに変わっている。また、メッセージを模倣するために、アンサイクロペディアではMediaWikiが使われている。あるいは一般スタブテンプレートでは「この項目は執筆者がクラックをキメていた可能性もありますが、今はまだクソの山です。より愉快にして下さる協力者を求めています」というメッセージが表示される。これはウィキペディアのスタブメッセージ 「この節は、書きかけです。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。」 のパロディである。

更に、アンサイクロペディア上で使われている画像やその説明ページはアンサイクロメディア・コモンズに登録されており、これはロゴも含めて、ウィキメディア・コモンズを模倣したものとなっている。

一方でアンチウィキペディアがひとつのテーマとなっている。ウィキペディアンを「ユーモア欠落症患者」と見なしているほか、ウィキペディアの記事ではウィキペディアを徹底的に批判している[8]

日本語版の特徴[編集]

日本語版アンサイクロペディアは2007年11月1日現在で登録ユーザー数3,000人以上(うち管理者22人)で運営され、約8,400項目の記事が存在している。

記事のテーマ[編集]

英語版とは共通するテーマも多く存在し、あああああああああ!ニヒリズム君は牛を二頭持っている。1=2など多くの他言語版UCPで受け入れられている記事は日本語版利用者にも広く受け入れられている。一方で、日本語版独自のユーモアも数多く投稿されている。風が吹けば桶屋が儲かるなどは日本の文化を利用しつつ、多くの利用者によって加筆されるジョークといえる。オスカー・ワイルドのほかに織田信長足利義昭の語録も多用されている。

一時期話題になった一般人や犯罪者を扱った記事、公開されていない芸能人のプロフィールなどを扱った記事も存在する。このようなウィキペディアに書くと削除される記事は内輪ネタではあるが、UCP内のメタユーモアにまで昇華されている。ウィキペディアのマスコットであるウィキペたん記事女装した男性であるとされ、これを模倣したアンサイクロペたんはユーザーより数多く案が出たものの結局「正式な姿は決めず放置したほうがUCPらしい」というコンセンサスがとられている。

アニメや漫画、パソコンゲームなどに対して半分まじめに説明しながらも、細部でユーモアを膨らませるようにした手法がよく使われている。このような記事はアクセス数も多く、2007年8月26日現在でのアクセス回数の1位は魔法少女リリカルなのはの約169,340 回であり、メインページの131,246 回を大きく超える日本語版の名物ページとされている[9]

エクストリームスポーツも頻繁に使われるジョークである。アンサイクロペディア内では理系のエクストリームスポーツとして扱われる栗まんじゅう問題、企業や官庁の不祥事を皮肉ったエクストリーム・謝罪のようにスポーツにすら当てはまらない記事も多数存在する。その多くは「エクストリーム+単語」という形式の題名で作られる事が多い。

架空の国家や組織などは日本語版においてもよく使われるユーモアの手法である。アニメ『ローゼンメイデン』ファンの間で用いられる用語の蒼星会のような記事、大和民国名古屋共和国などの実在のものを揶揄した記事、全く架空の設定で作られたでたらめな国家の記事など挙げられる。ただし現在ではこれらの記事の乱立により、あまりこのような記事を好まれない雰囲気もある。

サーバーの問題[編集]

日本語版アンサイクロペディアの存在するサーバーは他の言語版複数と同じサーバーに置かれていたため、ページを開くのに時間が掛かったり、エラーで開かなかったりすることが多く、それに対しての批判も多かった。非常にサーバーが不安定になった場合には、英語版アンサイクロペディアの利用者でありサーバー管理者のCarlb氏に一部の日本語版の管理者が不具合などを報告することもあった。現在のアンサイクロペディアでは多少改善されたようである。またこれに対して日本語版では重いという記事で揶揄されている。

管理[編集]

記事の管理に対しては管理者を中心として精力的に行われている。ただしユーモアを扱う以上、対象を存続させるべきかどうかを見極めるのは非常に難しく、最終的には会話ページでの多数決で決めることが多い。

管理者の選出は、初期においてはビューロクラットに一任されていたが、現在では自薦・他薦によるものとなっている。

外部からの評価と批判[編集]

アンサイクロペディア英語版の記事は、有名無名を問わずさまざまな新聞・雑誌等で取り上げられている。たとえば2005年には、空飛ぶスパゲッティ・モンスター教の記事がニューヨーク・タイムズ紙の「Pastafarianism」を扱ったコラムで紹介された。このコラムは台北タイムズなど他紙でも掲載された。さらにウィキのみならずウェブサイト一般を扱った記事においても、技術やウェブといった括りで紹介されている。ボストン・ヘラルドガーディアンがその例である。アンサイクロペディアの記事が取り上げられることがある一方で、単にアンサイクロペディアという名前が記載されるに過ぎない場合もある。たとえばジョン・シーゲンソーラー ウィキペディア経歴論争を取り上げた「The Register[10]」においても、アンサイクロペディアは名前だけが紹介された。また「PC Magazine[11]」でも未発掘のサイトベスト100に選出されている。

2006年、ニュージーランド・ヘラルドは、中等教育学校のひとつキングス・カレッジの校長を含む教育関係者の話として、「アンサイクロペディアとbebo[12]はサイバーいじめを助長する脅威だ」と紹介している。それによると、Epsom女子グラマースクールの学生の名前と携帯電話の番号が、本人の知らないところで下劣なメッセージとともにアンサイクロペディアに書き込まれた。

2007年6月には、湖水地方の記事が評議員や観光会社の経営者から「不快」だと評され、同時に彼らはより厳しい規制を求めた。この一件はイギリスの地方紙North-West Evening Mailにも取り上げられたが、アンサイクロペディアの方針は結局変わらなかった。これと似た事件が2007年11月にも発生しおり、北アイルランドを扱った記事が地元政治家のJames McCarryによって「恥さらし」と批判され、さらに彼は問題の記述を除去させると宣言した。なおこの北アイルランドの一件では、地元評議員のConor Maskeyや「Portadown News[13]」編集長のNewton Emersonが、もっとリラックスしてウェブサイトと接するべきだとMcCarryの姿勢に反論している。

注釈[編集]

  1. ^ 面白さを理解するには、読み手に相応の知識が求められるような記事もある。たとえば朱元璋は伏字だらけになっているが、朱元璋文字の獄を行った事を知らなければ、その面白さが分からない。
  2. ^ 悪意や害意で記事を作らない
  3. ^ とくに短い記事の投稿が非常に多いという問題がある。How To Be Funny And Not Just Stupidによれば、1日に約300の記事が作成され、そのうち290の記事が削除されるという。
  4. ^ ウィキシティーズによる発表(英語)
  5. ^ Wikiaのランキングによる(2007年12月現在)。2006年12月の時点ですでに約2万項目を有し、当時その規模は3位であった。
  6. ^ Wikiaのランキングによる(2007年11月現在)。
  7. ^ とは言え事実とまったく無関係の記事を好まない傾向もある。英語版では、まったくの虚偽記事はたとえユーモラスであっても削除される傾向にある。
  8. ^ ただしこれもアンサイクロペディアにおけるユーモアの一種であることに留意する必要があろう。
  9. ^ 2007年12月現在におけるアクセス数はメインページが1位となっている
  10. ^ 技術に関する話題を扱うイギリスのウェブサイト。1994年に前身のChip Connectionが立ち上げられ、1998年にThe Registerとなった。詳しくはen:The Registerを参照のこと。
  11. ^ アメリカのZiff-Davisが発行するコンピュータ雑誌。1982年に前身のPC誌が発刊され、1986年にPC Magazineとなった。くわしくはen:PC Magazineを参照のこと。
  12. ^ オンラインSNSのひとつ。詳しくはen:Beboを参照のこと。
  13. ^ 北アイルランドの政治や文化を風刺的観点で扱ったオンライン新聞。政治評論家のNewton Emersonにより執筆されている。詳しくはen:Portadown Newsを参照のこと。