利用者:のりまき/白小豆 めんどくさいけどこの上もなく魅力的な栽培植物

備中白小豆

白小豆は文字通り種皮の色が白い小豆の一種です。もともとは和菓子関係者が、まさに珠玉の玉のような持ち上げようをしていた白あんの原料だったのですが、このところその名前を聞くことが多いような気がします。

白小豆のことを記事に書こうと決めたきっかけは、私の場合あるあるなのですが本当に些細なことでした(笑)。職場関係の友人2人(女性)を横浜の野毛にある和菓子屋さんを案内したときのことです。いつも自分一人で買い物をするときは寡黙な店主が、女性客を前に妙に饒舌となり、商品のどら焼きの説明を始めました。中でも白あんのどら焼きを強く推してきて、「うちのどら焼きの白あんは豆が違う!」と話し始めたその時、以前川端道喜の記事を書いた際に参考文献の中で紹介されていた白小豆のことを思い出しました。

当初は比較的気楽に執筆をし始めたのですが……なかなかどうして奥が深く、色々と考えさせられ、いつものことかもしれませんがすっかり夢中になってしまいました(苦笑)。自分の場合、参考文献をざっと読んでテーマのポイントを把握し、そのポイントを中心として記事を書き進めていく場合が多いのですが、白小豆の場合もそのような方式で書いていきました。

群馬県昭和村で栽培される白小豆

白小豆の記事の中で、主執筆者としてポイントとなる点は以下の4点になります。まず作物としての白小豆です。もともと小豆自体、豊作時と不作時では出来の差が大きい作物なのですが、白小豆は通常の小豆以上に育て方が難しい上に、栽培の機械化がしにくい特性もあってとにかく手がかかるのです。その上、白あんの材料としての品質保持が至上命題となっているため、選別を丁寧に行わねばなりません。本当にめんどくさく手がかかる作物なのです。

そんなめんどくさいのなら作らなきゃいいじゃん!!なのですが……白小豆製の白あんは虎屋や川端道喜などといった和菓子界のレジェンド勢が熱烈なラブコールを送る逸品なのです。虎屋は白小豆確保のため長年農家との契約栽培を行っており、自社で『福とら白』という白小豆の品種まで作り出したくらいです。とにかく栽培面ではめんどくさいことこの上ないのですが、品質の高さから和菓子界から熱狂的ともいえる支持を集めているのが白小豆なのです。

育てにくく手がかかるため白小豆の生産量は少なく、その一方で和菓子界から強い支持を受けているため、白小豆は一種のブランド化が進んでいます。ブランド化された結果、皮肉なことに品種改良の動きにブレーキがかかることになります。生産が容易になることで珍しくなくなったらブランドとしての魅力が落ちることのではないかという理由とともに、和菓子界は品種改良後の白小豆がこれまでのものと風味が変わってしまう恐れを抱いているためです。そのような中で行われている品種改良ですが、白小豆の強みを生かした上で、欠点である育てにくさを改善する方向で進められています。

白小豆製の羊羹、虎屋の「月の暁」

そして商品作物の記事として植物学的な側面と、歴史面を含め実際の白小豆の生産について押さえていかねばなりません。これは建物でいえば基礎部分にあたるので、そこがしっかりとしなければ他の記述が生きていきません。白小豆の場合、植物学的な際立った特徴は無く、また歴史的にみても基本的に近世以降であり比較的短く、しかも栽培の絶対量も少なかったため、植物学的な側面、歴史面は軽めにして、現在の生産面を重めに書いてみました。

最後に参考文献ですが、森崎美穂子さんの書籍、論文が特に背景などを知るのに大いに参考となりました。また雑誌文献としては特に『豆類時報』が大変に役に立ちました。