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法学民事法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文

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w:債務不履行によるw:損害賠償

第415条
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

解説

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債務者が債務を履行しないときの損害賠償について定める。客観的要件として債務不履行の事実と、それと因果関係ある損害の発生、主観的要件として債務者の帰責事由を要求する。効果は損害賠償請求である。不法行為による賠償請求よりも時効が長いというメリットがある。

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときとは

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例えば、AとBが売買契約(民法第555条)を結んだとき、それによって発生する債務は次のようになる。

「債務者である小売商Aは、平成10年10月10日までに債権者Bに対し米10キロをBの住所において引き立たさなければならない」

そこで具体的な内容となるのは「いつ(=平成10年10月10日まで)」「どこで(=Bの住所)」「誰が(=小売商A)」「何を(=米10キロ)」「誰に(B)」「どうする(渡す)」か、というものである。無論日時や場所については契約で詳細に定めないこともあるだろう。その場合は当事者の合理的意思を解釈したり、法律によって補充・規定したりするわけである(目的物について401条402条482条483条、時期について412条、履行者について446条474条、履行の相手方について478条479条480条、場所について484条485条但書等)。債務者がこの債務内容を満たさないとき債権者には損害賠償請求権という新たな債権が発生する。しかしながら、例えば本事例において精米していないゴキブリ入りの米8キロを平成10年の10月5日に債務者の事務所に持参したところで、直ちに損害賠償請求ができるようになるわけではない。債権者が受領を拒絶してまともな米(本事例で当事者の合理的意思解釈としては精米された清潔なものを対象とするのは当然である)をよこせと催告すれば、債務者としてはなお、期日までに債務の内容通りの履行をするかもしれず、この未精米の米8キロを持参するという行為によって債権者に損害生ずるとは限らないからである。しかし、Aが任意に受け取ってしまえばこれによって余計な手間や金銭的損害(買い主側の代金支払い債務が当然に消滅ないし縮減されるわけではないため)を発生させるであろうし、履行期が到来していなくともその米が特殊な高級品であり、市場からの調達が不可能になったような場合にはその時点で債務不履行が確定し、債務者にはそれによる損害が発生する場合がありうる。このことから、学説及び判例は415条における損害を発生させるべき債務不履行の態様を履行期に履行がなされなかったという履行遅滞、履行自体はなされたが時期・場所・方法・目的物につき債務内容に適合していなかったという不完全履行(民法は誰が誰にという問題については弁済の有効性の問題として扱う)、そして履行不能(415条後段)という三つに分類して考察する。確かに415条の文言上は履行不能を他と区別するに止まるが、民法の他の条文においては「履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う」(民法第412条3項)などとしており、履行遅滞と他の債務履行との条文上の区別はなされているとも言える。

履行遅滞

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履行期を過ぎていること

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履行が可能であること

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同時履行の抗弁権や留置権が無いこと

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伝統的には、違法性が無いことと言い換える。

不完全履行

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引渡債務の場合

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欠陥あるものを引き渡した場合
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引き渡したものから損害が他へ拡大した場合
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行為債務の場合

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結果債務
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手段債務
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契約上の義務の拡大

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契約に直接含まれない安全配慮義務

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不法行為との違い
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契約プロセスにおける当事者間の注意義務

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契約締結前
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契約終了後
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履行をすることができなくなったときとは

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履行不能

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債務者の責めに帰すべき事由によってとは

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これによって生じた損害とは

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発生した損害と債務不履行の事実との間に因果関係があることが要件となる。

この点につき、民法第416条が債務不履行時の損害賠償の範囲について定めている。

損害賠償要件の例外

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金銭債務の特則

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当事者の特約

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賠償を請求とは

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損害賠償の方法

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民法第417条が金銭賠償の原則を定める。

損害賠償の減額

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過失相殺

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民法第418条が損害賠償の減額について定める。

損益相殺

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  • 建築業者であるAはSとの間に建物の建築w:請負契約を結んだが、注文者Sの責めに帰すべき事由によって工場に着工できなくなったため契約を解除し報酬を得ることはできなかったものの、材料費などのコストは支出せずに済んだ。

債務不履行によって債権者がα損害のみならずβ利益(消極的利益を含む)をも得た場合、全ての損害分を債務者に賠償させるのは当事者の公平に反するので、利益分は差し引いた分だけを賠償の対象とすべきという原則がある(民法第536条2項類推)。損益相殺といい実務上確立している。

脚注

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参考文献

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  • 内田貴「民法Ⅲ 債権総論・担保物権」

参照条文

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判例

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