コンテンツにスキップ

利用者:伊佐坂安物/sandbox/会計

退職給付会計 (たいしょくきゅうふかいけい、英語:Accounting and Reporting by Retirement Benefit Plans)とは、将来に従業員に支給する退職給付 [1]を負債として計上するとともに、各期の負担額を費用として計上する会計処理のことである。この負債は、連結財務諸表では「退職給付に係る負債」、個別財務諸表では「退職給付引当金」として計上される。

会計制度としては、主に「退職給付に関する会計基準」[2]および「退職給付に関する会計基準の適用指針」[3]によって規定されている。退職給付会計は財務会計における主要な論点の一つである。

背景[編集]

企業会計(財務会計)において、費用の計上は、現金などの支出という事実ではなく、その原因となる事実が発生した時点で行われる(発生主義の原則</ref>。そうすることで、各期の費用と収益を適切に対応づけて利益を算定し、経営成績を適切に表すことができるようになるのである(費用収益対応の原則)[4][5][6][6]

しかし、退職以後に従業員に支給される退職給付をその支出の時点で費用として計上すると、この発生主義会計の原則に反してしまう。なぜなら、退職給付はその従業員に対する長年の労働の対価として支払われるものであり、発生の原因となる労働が行われた各期間に費用(退職給付費用)として損益計算書に計上させるべきだからである[7]

また、将来支払われる退職給付は、条件付債務としての性格をもっているため、負債として貸借対照表に計上するべきである。この債務は、引当金の四要件[8]を満たすため、個別財務諸表上は退職給付引当金として計上される[7][9]

以上のような理由で、退職給付会計が必要とされており、「退職給付に関する会計基準」として企業会計基準委員会によって制度化されている。

会計処理の概要[編集]

以下では、個別財務諸表の場合における退職給付会計の手続について説明する。

退職給付会計の会計処理は、借方に費用として退職給付費用、貸方に負債として退職給付引当金の増加を認識することで行われる。例えば、当期の労働に対して計上される退職給付費用が10,000,000円なら

借方 貸方
退職給付費用 10,000,000 退職給付引当金 10,000,000

仕訳が行われる。 退職給付引当金とは、将来の退職給付額を現在価値に割り引いたもの (退職給付債務)から退職給付のための企業年金に積み立てた額 (年金資産)を控除したものである。一方、退職給付費用は、将来の退職給付にかかる当期の負担額である。その金額は、当期の労働の対価として発生した部分 (勤務費用)から、すでに発生した債務にかかる利息 (利息費用)を加え、年金資産の運用から生じると期待される収益 ((期待運用収益)を控除したものである。

退職給付費用 = 勤務費用 + 利息費用 - 期待運用収益
退職給付引当金 = 退職給付債務  - 年金資産

会計処理は以下の流れで行われる。

  1. 退職後に支払われる退職給付額の見積り
  2. 各期の発生額の算定 - 勤務期間中の各年度に退職給付額を配分して各期の発生額を求める。
    • 方法としては期間定額基準 (退職給付見込額を全勤務期間で割る方法)と給付算定式基準 (給付算定式によって算出する方法)を選択適用できる(後述)。
  3. 勤務費用の算定 - 発生額を割引率で現在価値に割り引く。
  4. 利息費用の算定 - すでに計上された退職給付債務にかかる利息
  5. 退職給付のための外部年金基金への掛け金の拠出額および基金の期待運用収益を控除
  6. 過去勤務費用と数理計算上の差異の遅延認識
    • 過去勤務費用 -
    • 数理計算上の差異 -

連結財務諸表における会計処理[編集]

連結財務諸表においては、以下の点で個別財務諸表とは異なった会計処理が行われる。

  • 過去勤務費用と数理計算上の差異を負債として認識する
  • そのため、負債の勘定科目名も退職給付引当金ではなく退職給付に係る負債とする。

論点[編集]

退職給付見込額の各期の発生額の算定方法[編集]

退職給付見込額の各期の発生額の算定方法については、理論的には期間定額基準給付算定式基準、支給倍率基準平成26年現在、日本の会計基準では、退職給付見込額の各期の発生額の算定方法について、期間定額基準給と付算定式基準との選択適用が認められている。一方、国際会計基準では、給付算定式基準のみしか認められていない。

基本的には、当期における退職給付費用が借方に計上されるとともに、退職給付引当金


監査上の取り扱い[編集]

公認会計士による財務諸表監査上、退職給付会計について慎重な対応が必要とされる。会計上の見積りによる部分が大きく、また割引率などの違いが財務諸表上の金額に大きな影響を与えるからである[10]

具体的には、監査人は次のような点に留意しなければならない[10]

  • 計算対象となる従業員の網羅性
  • 割引率・予想昇給率などの基礎データの妥当性
  • 基礎データの妥当性の検討プロセス・結論の監査調書
  • 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の取り扱い

など

脚注[編集]

  1. ^ いわゆる退職金など
  2. ^ 企業会計基準委員会設定、最終改正2012年5月17日
  3. ^ 企業会計基準委員会設定、最終改正2015年5月17日
  4. ^ 企業会計原則」第二・一・A。
  5. ^ 企業会計原則」第二・一・C。
  6. ^ a b 桜井久勝『財務会計講義 第17版』中央経済社、2016年、pp.75-76。
  7. ^ a b 桜井久勝『財務会計講義 第17版』中央経済社、2016年、pp.241-245。
  8. ^ 企業会計原則」注解18。
  9. ^ 桜井久勝『財務会計講義 第17版』中央経済社、2016年、pp.220。
  10. ^ a b 「会計上の見積り(退職給付)」(南成人中里拓哉高橋和則『財務諸表監査の実務 第2版』中央経済社、2016年)。

関連項目[編集]

[Category:会計]] [Category:]]