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利用者:佐藤行夫/sandbox

佐藤硯湖(誠)

(さとうけんこ、1831年(天保2年)7月10日ー1890年(明治23年)6月20日) は福井藩士及び明治新政府宮内庁に仕えた官僚。漢詩、篆刻に通暁していた。幕末、明治の文人と深く交流した。

著作は、陪輦集として明治天皇の東北巡行を漢詩文で表現、橘曙覧20年祭歌会の詩、橘曙覧との書簡、日常の事柄を詩文に綴った硯湖詩草、がある。

篆刻は、多くの蔵書印が国会図書館に残されている。早稲田大学に残る書簡の中には、篆刻印を作成頂き感謝云々の礼状が多く見られる。

中国金石学に倣い、日本の金石学を確立すべく、多くの文献、金石、拓本を蒐集、書写した。彫虫居写本、金石文叢稿本がその代表である。

1886年(明治19年)宮内庁を退職した後、嘱託として殉難書類取調を任された。

称は鍋九郎、實吉、内記、実吉、誠。字は思誠。号は硯湖、尚古齊、彫虫居。


1、生涯(松平文庫資料に基づく)


1-1,越前福井藩士時代


1831年 7月10日(天保2年)福井藩の下級武士(切米15石3人扶持)である佐藤幸右衛門(後に恒右衛門と改名)の子として生まれる。幼少期より学を好み、福井藩の儒学者高野真齊から漢学を習う。橘曙覧、井上文雄から漢詩、和歌を習う。

26歳(1857年11月9日)(安政4年)藩校明道館幹事局手伝いに任命される。

27歳(1858年 ㋆29日)刻量の研究を命ぜられる。篆刻の研究。


1-2,京都にて山階宮晃親王お付き時代


33歳(1864年6月)(元治元年)山階宮の付け人取り次ぎ方を命ぜられ京都に派遣される。

35歳(1866年11月)山階宮付き人の任を解かれる。

36歳(1867年8月)福井に帰郷。10月17日松平春嶽の祐筆を命ぜられる。11月2日春嶽のお供で京都に上る。

37歳(1868年1月)大政奉還後 山階宮の付き人に再び命ぜられる。宮の計らいで内記に改名。8月福井に帰郷。10月27日東京赴任を命ぜられ出立

京都滞在中、羽倉可亭に篆刻を学ぶ。 


1-3,東京宮内省時代


38歳(1869年10月)(明治2年)飛脚便で、福井へ帰郷後東京へ戻る。11月25日太政官書記に任命。同時に市谷仲の町に居を構える。             40歳(1871年 2月)誠と改名。11月14日権大主記に任命。

45歳(1876年)  明治天皇東北巡行に供する。

48歳(1879年)  宮内省文学御用掛に任命。11等出仕。

55歳(1886年)  宮内省退職。引き続き嘱託として殉難書類取り調べを任される。

59歳(1890年6月2日)(明治23年) 病没 墓は東京四谷の東長寺にある。

東京時代に大沼沈山、廣瀬清邨の私塾に通い交流を深める。


2、人物、逸話


1)硯湖曰く”小生も侍従の末席に列し、二三の同僚と記録を司ることとなり、視聴きしたこと、行ったところ、ことごとく記しておいた。それとは別に個人的に詩文として残す。これは陪輦集と名付けた。”(陪輦集より抜粋)

2)硯湖曰く”若いころから貯えてきた書物を売ろうとしたところ、買値の十分の一を提示された。(省略)時代の変化を悟らされた。・・・”(越前人物誌/売書辞より抜粋)

3)”国会図書館の蔵書の50点以上に硯湖の蔵書印を確認しており、(省略)旧蔵書の大半は明治30年に購入されたものである。(国会図書館月報No448より抜粋)

4)”狸庵が鈴ヶ森に建てた筆塚のことが、帝国図書館の金石文叢稿本という書の第十五冊にある由の控えがあったので、(省略)その第三十九冊の長門の国の部の中に、松本杢堂の逸文正義霊社碑が写されているのを見て私は驚喜した。”(森銑三読書日記より抜粋)

5)”彫虫居写本は紀行、歌書、詩文、伝記、系譜、目録、金石文などすこぶる多岐にわたっている。”(学習院大学図書館「来ブラリ」No5より抜粋) 

6)”「本好きで弁当を持って神保町の本屋を廻って歩いたという方です。また本もよく買われましたが、僅か一部分が必要のものは、主人に話して、書き抜きしたそうです。」”(紙魚の昔語り明治編より抜粋)


3、著作


彫虫居写本 全160冊 (学習院大学図書館)

金石文叢稿本 全45冊(国会図書館古典籍室)

聖賢歯譜草木 (国会図書館古典籍室)

硯湖詩草 上巻、下巻(東北大学附属図書館狩野文庫)

陪輦集(明治9年天皇東北巡行詩文日記)(硯湖詩草下巻内)

志濃夫の露(橘曙覧20年祭歌会)編 (国会図書館)

日本金石集     (旧東京図書館蔵 現在不明)

金石拓本雑巻    (旧東京帝国大学図書館蔵 現在不明)


4、参考文献


福井藩松平文庫 新番格以下の資料 (福井県立図書館)

書簡(硯湖宛て50通余り)(早稲田大学古典籍総合データベース)

書簡(橘曙覧から佐藤硯湖へ)(天理大学付属天理図書館)

橘曙覧書簡集P138~145 永井環、島崎圭一編 岩波書店(橘曙覧記念文学館)

越前人物誌P106 (国会図書館)

紙魚の昔がたりP130  反町茂雄著(国会図書館)

読書日記P86,P180   森銑三著 (国会図書館)

国会図書館月報No448P1 (国会図書館)

学習院大学図書館「来ブラリ」No5 P3 (学習院大学図書館)

日本人名大辞典     平凡社

国書総目録       岩波書店

国書人名辞典      岩波書店

和学者総覧       國學院大學日本文化研究所

福井藩士事典      歴史図書社

橘曙覧門人列傳     橘曙覧記念文学館