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利用者:名香野/sandbox

弾詞(だんし)とは、中国の講唱文学、語り物文芸の一種である。明の中葉に流行し、江南地方を中心に各地で広く見られた。「弾」は楽器を弾く、「詞」はお話という意味で、韻文と散文からなる。元々は楽器と共に語ったり歌ったりする大衆演芸で、そこから台本が独立して「弾詞小説」と呼ばれるようになり、良家の子女向けの娯楽小説のジャンルとして成立した。

概要[編集]

元末~明初に成立したと考えられ、明の中葉の16世紀頃に南海沿岸の大都市で流行した。元々は、珍しい故事や歴史伝説、その時代の色恋物語を説話師が琵琶や三弦などの楽器に乗せて歌ったり語ったりした大衆演芸だった。最古の作品としては、明の楊慎の『二十一史弾詞』がある。18世紀に入ると、南部の大都市、特に蘇州で多くの名人が現れ、競い合って多くの新しい台本や音曲が生まれた。ここから台本が独立して「弾詞小説」というジャンルが生まれた。特に清の乾隆年間から民国にかけて、江南地域で大量の作品が刊行されている。テキスト中に登場人物同士の白(せりふ)を多く含む「代言体」、「説唱本」、「土音弾詞」等と呼ばれるものと、七言句を主とする变事体弾詞がある。

テーマは才子佳人・英雄好漢を主人公とするようなありきたりな物語が多いと評されている。弾詞小説の読者の多くは家の外に出られない良家の子女たちで、家に招かれる女説話師によって始めて作品に触れていた。作家は男性が主であった。研究家の方蘭(吉田とよ子)は、男性作家が女性読者を喜ばせようと書いたメロドラマが多かったが、読者の教養レベルは高かったため、男性作家たちは彼女たちに合わせ作品を洗練させた、文芸に近づけたと評している。こうした作品を読んだ読者から女性作家も生まれた。方蘭によると、豊かな知性を持ちながら表現手段のなかった女性たちにとって、詩的才能と思想を表現できる魅力的な新ジャンルだった。女性の手による弾詞小説は、中国史上で初めて女性が女性の世界を描いたフィクションである。それ以前の女性の創作は韻文に限られていた。

明代まで数多くの作品が生まれたが、ほとんど残っておらず、現存するものは270ほどで、ほとんどが清代のものである。作家名のわからない作品も多い。

近代には中国の通俗小説は再評価されるようになり、弾詞小説も注目を集め再版される作品も多く出た。その中には『再生縁』などの女性作家の作品も含まれている。

出典[編集]