利用者:吹雪饅頭/下書き

乳と卵』(ちちとらん)は、川上未映子小説。実質デビュー作の「わたしくし率イン歯−または世界」が芥川龍之介賞候補になったが、『乳と卵』はそれに続く第二作目で芥川龍之介賞受賞となった。

あらすじ[編集]

豊胸手術を受けるため、大阪から母巻子と娘の緑子が東京にやって来た。巻子は40歳目前。醜形恐怖症気味で、出産を経て垂れ下がりえぐれた胸にアメリカンチェリーの様な黒々とした巨大な乳首がついているのをしきりに気にし、どこへ行ってもそのことで頭が一杯だった。そんな病的な巻子と、反抗期の緑子のコミュニケーション手段は「筆談」。緑子は思春期に入り初潮を迎え、胸が膨らみ、陰毛が生えて来る自分の身体への不安や巻子への批判を、日記に書いたり筆談で巻子に伝える。巻子の妹である「私」は、巻子の悩みや、親子の会話を見て心配しつづける。ある日、巻子は豊胸手術のカウンセリングを受けに行き、帰ってこなかった。それがもとで母子間で感情をぶつけあう葛藤劇に発展する。互いに卵を頭にぶつけあい、泣きながら口論する巻子と緑子。ここに来てようやく親子に邂逅があった。

概要[編集]

樋口一葉の影響を色濃く残す改行なしで読点によって区切られえんえんと続く文体が特徴的。織物が際限なしに織られて行く様や文様の様な文体が芸術的であり、評価されたポイントだった。そして、内容的には女の性というものを克明に描き出し、女性性の解放という哲学的テーマにも迫っている。芥川賞選考委員の池澤夏樹氏は『乳と卵』の選評として「文章がよい。読んでいて声が聞こえてくるような、なめらかな大阪弁がらみ、それでいて抑制が効いた文体だった。また、母に対して口を利かない娘、その壊れた母娘が東京に来て母の妹と暮らし、最後は娘が口を利くようになり大阪に帰るというカタルシスにいたるまでの、短編としての構造が巧みだった」とした。単行本の帯には「一夜にして現代日本文学の風景を変えてしまった」と書かれた衝撃作。川上はブログ純粋悲性批判の中で、たびたび緑子や巻子についての説明を追加している。またブログの中で作品タイトルについては「乳と卵といえば、パソコンでえいえいと書いているときにつけるてきとうにてきとうな仮タイトルはたしか「胸と卵と毛の会議」とかだったような気がうっすらとしてるんですが、毛の部分はどこにいったのでしょうか。しかし「乳と卵」というのはケーキとかお菓子づくりにかかせぬポップですてきな食材、でありながら、アレルギーの二大要素でもあったりして、なんともアンビバレンツなことであります!」と述べている。

舞台[編集]

東京、大阪

登場人物[編集]

  • 巻子 緑子の母。自分の胸に強く執着し、豊胸手術を受けようと計画している。
  • 緑子 巻子の娘。思春期を迎え、情緒不安定気味。
  • 私(夏子) 巻子の妹。物語の語り部。

出版[編集]

文芸春秋3月特別号掲載(2008年)

乳と卵 文藝春秋 (2008/2/22)

乳と卵(らん) (文春文庫)文藝春秋 (2010/9/3)

YOUTUBEで川上さんの樋口一葉からの影響を紹介した動画があります。

文芸誌での松浦理英子と川上未映子の対談、大森望と豊崎由美のメッタ斬り芥川賞編から「女性性の解放」を参照し、触れました。

読者からの反響についてはアマゾンレビューを参考にしました。どなたか加筆修正願います。