利用者:吹雪饅頭/下書き2

特性のない男』は1930年に出版されたロベルト・ムージルによる未完の長編小説。

概要[編集]

マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」や、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」と共に20世紀を代表する小説の一つと言われる。

物語は二部構成からなっている。ムージルはこの物語をプロローグとエピローグの二部に分けて制作するつもりだったが、ナチスの台頭によりスイスに亡命せざるをえなくなり、貧窮に喘ぎながら本作を制作しつづけ、結局1942年に本作は未完のまま脳卒中でこの世を去る。

あらすじ[編集]

第一次世界大戦勃発直前の1913年、場所はオーストリアの首都ウイーン。32才の若き数学者ウルリッヒは、「同じ様な事が何度も起こる」という奇異な現象を体験し、そこから思索に没頭するようになる。この世は諸法則を束ねた大きな法則の上に成り立っているのではないか、そうだとすればその大きな法則とはなにか、についてである。思考の末、彼はエッセイスムスという原理に到達する。この場合のエッセイスムスとは、この世はつくりごとであってエッセイのようなものだと見なす観点である。

ウルリッヒには可能性感覚があった。可能性感覚とは、今ある世界が、別様に展開していたかも知れず、その別様の世界を今ある世界と同等に見なすことにより、現実を虚構化し、異世界への可能性へと自分を投じるユートピア思想を生み出すための感覚である。この感覚があるために、ウルリッヒの眺める世界は幻想的に変容し、彼を悩ませるのだった。

ウルリッヒは、世界の中でもまれ、ユートピアと現実の狭間で苦悩し、その頃ウイーンで進んでいた平行運動へと飲まれて行く。

書誌情報[編集]

  • ムージル著作集 第1巻 特性のない男松籟社 (1992/07)
  • ムージル著作集 第2巻 特性のない男松籟社 (1992/07)
  • ムージル著作集 第3巻 特性のない男松籟社 (1992/07)
  • ムージル著作集 第4巻 特性のない男松籟社 (1992/07)
  • ムージル著作集 第5巻 特性のない男松籟社 (1992/07)
  • ムージル著作集 第6巻 特性のない男松籟社 (1992/07)
  • ムージル著作集 第7巻 特性のない男松籟社 (1992/07)

出典・参考文献[編集]

  • 「ムージル 思惟する感覚」(鎌田道生)鳥影社 1995年4月
  • 「ロベルト・ムージル」(古井 由吉)岩波書店 2008年2月