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利用者:白駒/整数の性質の興味深さを評価する

このページは、Wikipedia‐ノート:ウィキプロジェクト 数学/数での議論の参考とすることを目的として書かれたものです。内容は、個人のエッセイである en:Wikipedia:Evaluating how interesting an integer's mathematical property is の部分的な翻訳で、#興味深い数のパラドックスの節は書き下ろしです。

概要[編集]

整数論の専門家ではなくとも、1729 に関するハーディラマヌジャンの会話については御存知でしょう[1]

en:Wikipedia:WikiProject Numbers では、自然数[2]についての記事を作成する前に、興味深い性質を少なくとも3つ探すことを求めています。

ある数の数学的な性質が興味深いことは、時には衆目の一致するところであって、この場合は問題ありません。1729 が2つの立方数の和として2通りに書けることは、そのような性質の例でしょう。しかし、時には意見の相違が見られるため、数の性質の興味深さを計るための何らかの方法があると便利です。

以下に示した設問による評価の手順は、そのような場合の手助けになることを願って作成されました[3]。この手順の目的は、ある数の記事の作成基準の提示であることに注意してください。すでに興味深い性質が挙げられて記事が存在する場合に、興味深くはないと判定された性質を加筆することは妥当である場合もあるでしょう。

判定の手順[編集]

自然数 N が P という性質を持つとしましょう。以下の設問にしたがって点数を計算していき、その性質が興味深いかどうかを判定します。

1. 107 未満に、性質 P を持たない自然数は何個ありますか? 正確に数えることが難しければ、大雑把な見積りまたは当て推量でも構いません。その個数を最初の点数としましょう[4]

2. 自然数 N が性質 P を持つことについて、数学の専門家が査読付き論文または著書で言及していますか?

はい: 点数をその数学者のエルデシュ数で割ってください[5]。数学者がエルデシュ自身ならば、0 で割ることを避けるために、1 で割ってください[6]
いいえ: 点数から 107 を引いてください[7]

3. 性質 P を持つ自然数を順番に並べたとき、N は何番目ですか? k番目であるならば、点数から k を引いてください。

4. その性質は基数に依存しますか?[8]

いいえ: そのまま設問5に進んでください。
はい: 2 から 16 までの各基数 b について、N が性質 P を持つかどうか調べてください。持つときの基数 b に対しては点数に b を足し、持たないときの基数 b に対しては点数から bN を引いてください。

5. OEIS(オンライン整数列大辞典)における、性質 P を持つ数の列の項目の冒頭で、N は記載されていますか?

はい: その数列の ID(正確には A-number)を足してください[9]
いいえ: そのまま設問7に進んでください。

6. 数列のキーワードには何がありますか? 各々のキーワードによって、以下の操作をしてください。

core: 最も新しい数列の ID とその数列の ID の差を、点数に加えてください。
nice: その数列の ID を点数に加えてください。
hard: 別途、その数列の ID を点数に加えてください。
more: 別途、その数列の ID を点数に加えてください。
base: 設問4の計算を行ったか確認してください。
less: その数列の ID を点数から引いてください。
それ以外のキーワード: キーワードの個数を点数に加えてください。

7. 点数はいくらになりましたか?

正: 数 N が性質 P を持つことは興味深いです。
0: あなたの気持ち次第です[10]
負: 数 N が性質 P を持つことは興味深くはありません。

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1729[編集]

記事 1729 がまだ存在しないとしましょう。アリスは 1729 の性質をいくつか列挙し、それらの性質が興味深いかどうか、判定してみました。

  • 1729 は奇数である。
1. 5 × 106点。
2. 数学者が偶奇について論文を書いていることは間違いないが、アリスは 1729 が奇数であることに言及した文献があるかどうか分からなかったので、107点を引き、-5 × 106点となった。
3. 1729 は865番目の奇数であるため、-5000865点となった。
4. 1729 が奇数であることに記数法は無関係であるため、この設問はスキップされた。
5. A5408 のリストは 131 で終わっているため、この設問もスキップされた。
6. スキップ。
7. 最終的に-5000865点となったため、1729 が奇数であることは興味深くはないと判定された。
1. 512461 が33番目のカーマイケル数であるため、アリスは 107 未満に約65個のカーマイケル数があると見積もり[11] 、9999935点とした。
2. アリスは、ヴァツワフ・シェルピニスキ の著書 "A Selection of Problems in the Theory of Numbers." ISBN 978-0080107349 の索引から、51ページでカーマイケル数について扱っていることを見つけた。シェルピニスキのエルデシュ数は 2 であるため、点数を 2 で割って4999968点となった。
3. 1729 は3番目のカーマイケル数であるため、4999965点となった。
4. スキップ。
5. 1729 は A2997 に記載されているため、2997点を足して5002962点となった。
6. A002997 はキーワード nice を持つため、さらに2997点を追加。その他のキーワードとして nonn と easy を持つため、さらに2点追加。
7. 5005961点となったため、1729 がカーマイケル数であることは興味深いと判定された。
1. 105 未満に11872個のハーシャッド数があるため、アリスは 107 未満に約1187200個のハーシャッド数があると見積り、8812800点とした。
2. ハーシャッド数や 1729 についての論文はあるが、1729 がハーシャッド数であることに言及した論文はおそらくないだろうとアリスは推測し、-1187200点となった。
3. 1729 は364番目のハーシャッド数であるため、-1187564点となった。
4. 1729 は基数 4, 5, 7, 8, 13, 16 についてもハーシャッド数であるため、-1187511点となったが、基数 2, 3, 6, 9, 11, 12, 14, 15 ではハーシャッド数ではないため、-1291251点となった。
5. A5349 に記載されている最大のハーシャッド数は 204 である。
6. スキップ。
7. -1291251点となったため、1729 がハーシャッド数であることは興味深くはないと判定された。
  • 1729 は立方数の和として2通りに書ける。
1. 105 未満にそのような数は10個あることから、アリスは 107 未満には約100個あると見積り、9999900点とした。
2. ハーディはその著書において、1729 のその性質について言及しており、彼のエルデシュ数は 2 であるため、4999950点となった。
3. 1729 はそのような性質を持つ最小の数であるため、4999949点となった。
4. スキップ。
5. A1235 に 1729 は記載されているため、5001184点となった。
6. キーワード nice により、さらに 1235点追加。nonn により、1点追加。
7. 5002420点となったため、1729 が立方数の和として2通りに書けることは興味深いと判定された。
1. 106 未満にツァイゼル数は24個あることから[12]、アリスは 107 未満に240個ツァイゼル数があると見積り、9999760点とした。
2. ツァイゼル数について書かれた文献でアリスが見つけることのできたのは、エリック・ワイスタイン英語版の "CRC Concise Encyclopedia of Mathematics" のみであった[13]。アリスはワイスタインのエルデシュ数を知らないが、大きく見積もっても 10 であろうと推測した[14]。そこで、点数を 10 で割って999976となった。
3. 1729 は3番目のツァイゼル数であるため、999973点となった。
4. スキップ。
5. A51015 に 1729 は記載されているため、1050988点となった。
6. キーワードは nonn のみである。
7. 1050989点となったため、1729 がツァイゼル数であることは興味深いと判定された。

以上により、アリスは 1729 についての興味深い性質を3つ集めることに成功しました。プロジェクトの方針を読みつつ、記事を作成する準備を始めてもよいでしょう。

興味深い数のパラドックス[編集]

一見正しそうな次の議論により、あらゆる自然数は興味深いことが示せます[出典 1]。ある人が、興味深い数をすべて列挙したとすると、興味深くはない最小の数が存在します。そして、その性質によって、その数は興味深いことになりますから、興味深い数のリストに移すことができます。これを延々と繰り返すと、すべての数は興味深いことになります。

「延々と繰り返す」の辺りが胡散臭いと感じる方もいらっしゃるでしょうから、もう少しこなれた「証明」を提示しましょう。背理法で示すことにします。まず、自然数全体の集合を、興味深い数と興味深くはない数に分けます。棄却されるべき仮定として、興味深くはない自然数が存在するとしましょう。すると、その中で最小のものが必ずあり、その数はその性質によって興味深いことになります。その数は、興味深くかつ興味深くはないことになるため、矛盾が生じました。したがって、仮定は棄却され、すべての自然数が興味深いことが「証明」されました。

以上の議論は、結論が明らかに間違っています。解釈の仕方はいろいろとありますが、そもそも「興味深い」とか「興味深くはない」といった概念が曖昧かつ主観的であることが原因のひとつです。記事の作成の際には、自分が興味深いと思った性質が、他人にとっては必ずしもそうではない、という点に留意して頂くとよいかもしれません。

出典[編集]

  1. ^ マーティン・ガードナー著、金沢養訳『おもしろい数学パズル1』社会思想社、1980年、191頁

訳注[編集]

  1. ^ 一般にはそこまで有名ではない気もする。シュリニヴァーサ・ラマヌジャン#タクシー数を参照。
  2. ^ 原文では単に number であるが、文書の意味から自然数を意味していると思われるため、ここではそのように訳した。また、0 も自然数に含めているようである。
  3. ^ あくまで「手助け」に過ぎないが、参考になる部分もある。その一方で、さりげないジョークも含まれている。
  4. ^ レアな性質の方が点数が高いということであろうが、かなりいい加減な採点基準である。
  5. ^ エルデシュ数が小さいほど生粋の数学者という考えなのかもしれないが、この基準はかなり疑問。「数学の専門家」とは何かという問題も残る。
  6. ^ 0 についての注意があるのに、∞ についての注意はない。発表論文に単著しかない真っ当な数学者は相当数いる。後の例を見ると、実質的にその場合は 10 で割ることにするようである。
  7. ^ こうなると、性質 P が興味深いとの判定を得ることは絶望的。これはやや厳しい基準であるように思う。しかし、この基準がなければ、つまらない性質の多くが興味深いことになってしまう。もう少し良い基準が望まれる。
  8. ^ この設問により、パンデジタル数のように、ある記数法にのみ依存する性質を持つ数の多くは排除される。ただし、N が小さければ減点が少なくて済み、生き残る可能性がある。
  9. ^ N が記載されているかどうかは重要なファクターだが、ID の大きさと数列の面白さの間に顕著な相関関係はないと思う。むしろ、次の設問におけるキーワードの方が重要であろう。
  10. ^ こうなることは稀ではあるだろうが、どちらかに決めた方がすっきりとはする。
  11. ^ 蛇足だが、正確には43個。512461 が33番目のカーマイケル数であることは OEIS で確かめられる。
  12. ^ 実際は25個。OEIS でオフセットが 0 であることを見落としたのだと思われるが、この程度の間違いでは大きな影響はない。
  13. ^ この事典では、ツァイゼル数の例として 1885、114985 しか書かれておらず、1729 は出てこない。このあたりの扱いはアバウトのようだ。
  14. ^ 以前はエルデシュ数を調べるサービスは有料であったが、現在は無料で検索でき(アメリカ数学会のページ)、ワイスタインのエルデシュ数は 3 である。なお、2006年に共著を発表する前は ∞ であった。