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利用者:陽寿/イベント記事

千虫譜[編集]

千虫譜

『千虫譜』は、文化8(1811)年に完成したとされる日本初の虫類図譜である。上下2巻からなり紙数は240枚。虫類だけではなく哺乳類爬虫類といった他分類の生物も記載されている[1]。原本は失われているが、30点を超える転写本が残っている[2]

成立年代[編集]

文化8年の序があるためにこの年に完成したと位置づけられることが多いが、この後も丹洲が死去する前年に当たる1833年に至るまで内容が継ぎ足されていることから、文化8年は厳密な完成年とは言えない[2][3]

内容の特徴[編集]

魚介類の図などは、丹洲のオリジナルではなく他図譜からの転写が多い[4]。各転写本においては、図や説明文に重複が多い。理由としては、文化8年以降に継ぎ足されてきた影響[3]や、転写した時期による点数の異同、転写者の興味関心による掲載内容の取捨選択、本書からの転写に自身の写生や他図譜からの転写を加えたなどが考えられている[2]

転写本[編集]

栗氏虫譜

本書の転写本には、転写者の意向や後世の転写、転写部分のタイトルが失われているなどの理由から、『千虫譜』ではない別の書名で流布している場合が多い。それはたとえば、『栗氏虫譜』『丹洲虫譜』といったような丹洲に因む書名が付けられているものから、『虫類図譜』『昆虫魚介図』など、一見すると丹洲とは無関係であると思われてしまうものまで実に様々である[2][5]

  1. ^ 名和靖 (1894). “千蟲譜記載の動物”. 動物学雑誌 6: 144. 
  2. ^ a b c d 磯野直秀 (1998). “日本博物誌雑話(3)”. 日本動物分類学会誌 タクサ 5: 3. 
  3. ^ a b 中村禎里 (1994). “栗本丹洲『千蟲譜』の原初型について”. 科学史研究 33: 85. 
  4. ^ 磯野直秀 (1998). “日本博物誌雑話(3)”. 日本動物分類学会誌 タクサ 5: 6. 
  5. ^ 2023年6月20日から8月20日まで、東京国立博物館にて「虫譜づくりの舞台裏ー栗本丹洲著『千虫譜』とその展開」と題した特集が組まれ、本館に所蔵される『千虫譜』および転写本が展示された。https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=2604(2023年8月17日閲覧)