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利用者:132人目/群の作用

群の作用(ぐんのさよう、group action)とは、集合に対して定められた作用のことである。


概要[編集]

群論代数方程式の根の置換によって始まった。根の集合 A = {x0,x1,…,xn} に対して、置換はその並び方を変える。 m 番目と n 番目の元を入れ替える置換 σm,n を、 xm2 xn という式に施せば

σm,n(xm2 xn) = xn2 xm

という式になる。置換の全体は対称群という群である。根の集合 A そのものよりも、その元の入れ替えという操作に注目して調べられたのが対称群である。したがって対称群は、集合 A の元を A の他の元に変換する群と考えられる。このような群を集合 A変換群という。

群という抽象的な構造を調べて得た結果を、根の集合に適用することで、根の集合そのものを見つめているだけでは分からなかった性質までが明らかになる。

群という構造は、それ自体も非常に面白い数学的対象であるが、元々は数学の問題から特徴的な代数的構造のみを抜き出して得られたものであるから、群を研究して得られた成果は、それぞれ考えていた集合に還元してやることによって初めて群の有用性が確認されるのである。そのような群と集合の関係を記述する言葉が群の作用である。

定義[編集]

G と集合 A に対して、二項演算

・ : G × AA

が与えられているとする。特に誤解が無ければ G に与えられている積も ・ で表すことにする。

任意の g,hG, xA に対して

  • (gh) ・ x = g ・ (hx)
  • 1Gx = x (1GG単位元

が成り立っているとき、群 G は集合 A に(左から)作用しているといい、GA 上の変換群(へんかんぐん、transformation group)、 AG 空間(G-space) であるという。さらにこのとき、任意の xA に対して

g(x) = x

となるような gG は単位元しかないとき、GA効果的(こうかてき、effectively)に作用する、あるいは、忠実(ちゅうじつ、faithful)に作用するという。

すなわち G による作用 G × AA が、単射であるときである。

同様に、右からの作用も考えることができる。二項演算

・ : A × GA

が与えられ、任意の g,hG, xA に対して

  • x ・ (gh) = (xg) ・ h
  • x ・ 1G = x

が成り立つとき、群 G は集合 A右から作用しているという。特に強調する必要が無ければ、左や右などの表現は省略される事が多い。

軌道[編集]

GA 上の変換群とする。 x,yA に対して、ある gG が存在し

gx = y

となるとき、xyG 同値(G-equivalent)であるという。G同値は同値関係になり、この同値類の一つ一つを G 軌道(G-orbit)という。G 軌道の全体を GA と書く。

GA に右から作用している場合は、 AG と書く。

G 軌道が一つしかないとき、つまり、A の任意の元が違いに G 同値であるとき、GA推移的transitive) に作用するという。

GA 上の変換群とするとき、xA に対して

Gx = {gG | g x = x}

G の部分群となり、Gx における等方部分群(とうほうぶぶんぐん、isotoropic subgroup)あるいは固定部分群(こていぶぶんぐん、stabilizer, stability group)という。

等方群あるいは固定群などという事もある。

x,yA に対して、ある gG が存在し

gx = y

であるならば、任意の gyGy に対し

g −1 gygx = g −1 gyy = g−1y = x

となるので

Gx = g−1 Gy g

となる。また、Gx = G すなわちどのような G の元も、x を他の元には写さないとき xG不動点(ふどうてん、fixed point) であるという。不動点の全体は AG などと書かれる。A の全ての点が不動点であるとき、 GA に対する作用は自明(じめい、trivial) であるという。


位相変換群[編集]

G位相群A位相空間GA に作用しているとする。gG, xA を変数とする写像

f : G × AA
f(g,x) = gx

が、 G × A直積位相に対して連続であるとき、GA位相変換群(いそうへんかんぐん、topological transformation group)であるという。離散位相を用いれば、どのような変換群でも位相変換群として見ることができる。