利用者:Akira YL/社会的スティグマ

社会的スティグマとは、一般と異なるとされる事から差別や偏見の対象として使われる属性、及びにそれに伴う負のイメージの事を指す。社会的スティグマは特定の文化人種ジェンダー知能健康障害社会階級、また生活様式などと関連する事が多い。

概説[編集]

スティグマの語源はギリシア語奴隷犯罪者反逆者などにつけられる烙印の事を指す。烙印を押された人が反道徳的であったり、穢れているという事を明確にする事を目的として押され、烙印を押された人との交流は避けるべきだという社会規範が背景にはあった [1]

スティグマは必ずしも個人の属性を正確に捉えるわけではなく、誤った知識によりレッテルが張られることもある[2] 。例えば、アメリカにおいてイスラム恐怖症とそれに伴う差別の悪化により、他教徒であるシーク教がスティグマ化され迫害されている[脚 1]。スティグマ化された集団の印象はステレオタイプとして拡大解釈され、その集団に属する個人の性質に忠実かどうかに関わらず先入観を持って接せられる。研究によると、「殆どの子供は10歳になる頃には社会に存在する文化的ステレオタイプを認識し、その中でもスティグマ化された文化に属す子供は更に幼い年齢からその影響を認識している」と報告された [3]

スティグマを科されたことにより個人の行動態度、また感情信条にも影響が出る事が報告されている[4] 。研究によると、スティグマを科された人は、社会がそのスティグマから期待するような行動や態度に自ら合わせる傾向があるという[5]。スティグマは偏見や差別に引き起こす事から、躁鬱などの精神病の原因となり得ることも報告されている[5] 。また、自尊心を低下させるなど、スティグマは個人のアイデンティティに大きく影響をもたらす。差別や偏見に対する恐れから、スティグマ化された自身のアイデンティティを隠したり、消そうとする事により差別が内面化される事もある。このようなスティグマとアイデンティティの関連性は社会学ラベリング理論と関連して広く研究されている。

社会的スティグマの事例[編集]

HIV陽性者・AIDS発症者に対するスティグマ[編集]

HIV陽性者やAIDS発症者は社会的スティグマによって、様々な形の差別や偏見、暴力に晒されている[6]。現在では早期に抗レトロウイルス薬治療を受ける事により、感染者は非感染者とほぼ同じ平均寿命を持つと言われている[7]。また治療によりウィルス量が検出限界以下になる事で、コンドームを使わない性交でもHIVの感染はしないとされている[8]。この様なHIV/AIDS治療の進歩の反面、スティグマによる差別や社会的な排除は根強く続いている[6]。2017年には日本の病院が不当にHIV感染者の採用内定取消を行った事例もある。2020年にはHIV陽性を理由に患者の診療を拒否した歯科クリニックに対して、「診療の拒絶は正当な理由がない」として賠償命令を命じる判決が出た[9]。この様なスティグマを科される事を恐れて、HIV検査を受けなかったり、抗ウィルス治療を受けないケースもあり、スティグマによるHIV/AIDSの深刻化やさらなる感染の拡大も指摘されている[10]

また、HIVの主な感染経路は異性間性交渉であるのだが[11]、今でも一部ではHIV/AIDSを同性愛や特定の生活様式と関連して認識される事がある。その事からHIV/AIDSに伴うスティグマは、実状に関わらず、同性愛静注薬物使用者に対するスティグマが複層して科される事がある[12]

HIV/AIDSに伴う社会的なスティグマを解消するための取り組みとして、世界エイズデーなどがある。

2020年から起こった新型コロナウイルスの流行に対するスティグマ[編集]

2020年から起こった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行では、その感染初期、まだ中国武漢や日本でのダイヤモンドプリンセス号に留まっていた時期、ヨーロッパアメリカではアジアからの旅行者に対する拒否反応があらわれ、それは旅行者に留まらず、アジア系住民に対してまで広まった。

日本で市中感染が広まると、教員の感染が判明した学校の生徒たちが嫌がらせを受けるようになった[13]

新型コロナウイルス感染症の患者と対応している医療機関や医療従事者がその対象となった。さらにはその家族や子供が、自宅周辺や、学校から、患者扱いされる事態が起きた[13]


もう少し、具体的に。

コロナウィルスに関連して、スティグマ化されやすい人たちに

  • 職業(配達員、医療従事者、飲食業、セックスワーカー)
  • アジア圏の人
  • 旅行から帰った人


表現の問題。拡散源などと表現される事によるスティグマ化(ユニセフ)https://www.unicef.org/documents/social-stigma-associated-coronavirus-disease-covid-19 感染した人に非がある表現。


Main theories and contributions[編集]

以下編集中

Émile Durkheim[編集]

フランス人社会学者Émile Durkheimは社会においてのスティグマ(烙印)について1895年の著書にてこう書いている。 聖人からなる共同体,例えば修道士などの模範的な個人だけからなる非のうちどころない僧院において「通常の,いわゆる犯罪はそこではおこらないであろう。しかし,俗人たちには許されるにちがいないさまざまな過ちが,そこでは普通の法律違反か通常の意識にたいしてよび起こすようなスキャンダルを生じることであろう。(中略)この社会はそれらの行為を犯罪として定義し,そのようなものとして扱うであろう。(『社会学的方法の基準』,p68, 邦訳155ページ)

Erving Goffman[編集]

20世紀で最も影響力のある社会学者Erving Goffmanはスティグマについて、社会において非常に不名誉で好ましくないと考えられる属性を持つ個人が、その属性ゆえにその社会から排除される現象としている。ゴッフマンはスティグマを、他者の否定的な反応によって、中立であるはずの個人的な性質が汚される過程であると考えた。 更に、スティグマとされる好ましくない属性は時代とともに変化するとし、スティグマはある属性のみを表現する言葉ではなく、そこにある社会的関係性を表す言葉だとしている。すなわち、ある属性を否定的に見る事は、同時に異なる属性を正常だとする事である。 http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~slogos/archive/16/enomoto1992.pdf 参考『スティグマの社会学』 ──烙印を押されたアイデンティティ──有 里 典 三 ゴッフマンの理論において、社会的スティグマはある固有の形で社会的に排除された属性、行動、もしくは評判であるとする。スティグマを科された個人は、否定的なステレオタイプに嵌められ、社会的に受け入れられる属性と区別される。ゴッフマンはスティグマを対他的な社会的アイデンティティ(a virtual social identity)と実質的な社会的アイデンティティ(an actual social identity)の狭間にあるとした。


スティグマとは社会において非規範的、劣等性、不完全性、穢れとみなされる徴(しるし)によって、否定的なステレオタイプ

スティグマ化された人、常人、事情通. (、わけしり)[編集]

ゴッフマンは個人のスティグマとの関係性を三つに分けた。 1. スティグマ化された人(The stigmatied)はスティグマを社会に科された人である。 2. 常人(the normal)はスティグマを科されていない人である。 3. 事情通(the wise)は常人の中で、スティグマ化された人たちから理解者として受け入れられている人である(注釈:わけしりとも訳される。直訳は博識のある人という意。同性愛コミュニティで理解者のことを指した言葉を借用。)。 事情通は単にスティグマ化された人たちを受け入れているだけではない。ここで事情通と呼ばれるグループはある特殊な状況により、スティグマ化された人について深い理解を持つことになり、同情することによって、スティグマを持った人たちのグループの身内となっている人たちである。スティグマを持たずとも、スティグマを持つグループのメンバーとして存在し、スティグマを持つ人は事情通に対して、恥を感じたりや自重をする必要がない。ゴッフマンは事情通も場合によっては


原注[編集]

  1. ^ Goffman, Erving (2009). Stigma: Notes on the Management of Spoiled Identity. New York: Simon and Schuster. p. 1. ISBN 978-0-671-62244-2. https://archive.org/details/stigmanotesonman00goff_0/page/1 
  2. ^ “Epilepsy and Social Identity: the Stigma of a Chronic Neurological Disorder”, Lancet Neurology 4 (3): 171–8, (2005), doi:10.1016/s1474-4422(05)70020-x, PMID 15721827 
  3. ^ Brenda Major; Laurie T. O'Brien (2005). “The Social Psychology of Stigma”. Annual Review of Psychology 56 (1): 393–421. doi:10.1146/annurev.psych.56.091103.070137. PMID 15709941. https://semanticscholar.org/paper/56558accf86b595a7fe999e902b909587fa13a6d. 
  4. ^ Brenda Major; Laurie T. O'Brien (2005). “The Social Psychology of Stigma”. Annual Review of Psychology 56 (1): 393–421. doi:10.1146/annurev.psych.56.091103.070137. PMID 15709941. https://semanticscholar.org/paper/56558accf86b595a7fe999e902b909587fa13a6d. 
  5. ^ a b Cox, William T. L.; Abramson, Lyn Y.; Devine, Patricia G.; Hollon, Steven D. (2012). “Stereotypes, Prejudice, and Depression: The Integrated Perspective”. Perspectives on Psychological Science 7 (5): 427–49. doi:10.1177/1745691612455204. PMID 26168502. 
  6. ^ a b “The impact of AIDS on people and societies”. 2006 Report on the global AIDS epidemic. UNAIDS. (2006). ISBN 978-92-9173-479-5. http://data.unaids.org/pub/GlobalReport/2006/2006_GR_CH04_en.pdf 
  7. ^ “HIV感染者の平均余命、今では一般とほぼ変わらず=英研究”. BBC news Japan (BBCワールドジャパン). (2017年5月11日). http://www.bbc.com/japanese/39880346 2020年5月11日閲覧。 
  8. ^ Undetectable=Untransmittable(検出限界以下なら感染しない) (PDF) (Report). UNAIDS. 2018. 2020年3月7日閲覧
  9. ^ 岩永直子 (2020年3月23日). “「HIV感染を理由に歯科診療拒否は不法行為」東京地裁が判決 歯科クリニック側に賠償命令”. BuzzFeed News (BuzzFeed Japan). https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/hiv-dental-hanketsu 2020年5月11日閲覧。 
  10. ^ Common at its core: HIV-related stigma across contexts”. International Center for Research on Women (2005年). 2007年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年2月15日閲覧。
  11. ^ “The evolving epidemiology of HIV/AIDS”. AIDS 26 (10): 1205–13. (June 2012). doi:10.1097/QAD.0b013e328354622a. PMID 22706007. 
  12. ^ “HIV-related stigma and knowledge in the United States: prevalence and trends, 1991–1999”. American Journal of Public Health 92 (3): 371–77. (March 2002). doi:10.2105/AJPH.92.3.371. PMC 1447082. PMID 11867313. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1447082/. 
  13. ^ a b 教員が感染した大学の付属高生徒に「コロナ」 言われなき差別、偏見 ヨミドクター/読売新聞 (2020年4月1日)

脚注[編集]

関連項目[編集]


Category:ステレオタイプ Category:社会学用語 Category:アイデンティティ・ポリティクス