利用者:BabyLightMyWay/sandbox
アヘン根絶プログラム
[編集]麻薬根絶には、(1)麻薬を悪としてその根絶を目指し、密売人や中毒者を厳罰に処す根絶アプローチと(2)持続可能な代替生計手段を提供することで、麻薬の供給を減少させる代替開発アプローチ(Alternative Development:AD)がある。
根絶アプローチ
[編集]ミャンマー政府は伝統的に根絶アプローチを取ってきた。1974年からはアメリカの麻薬戦争の一環として、ロー・シンハンやクン・サなどの「麻薬王」掃討作戦が実施されたが、最終的に失敗に終わった。
その後も幾度となく根絶アプローチは試みられ、 2020年には2,000ヘクタール以上のアヘン畑が破壊されたと報告された。その90%以上はシャン州南部だった。しかしこの根絶アプローチには、代替生計手段を持たない農民を極貧に追い込み、アヘンを栽培する場所が移動するだけで根本的解決にならないという批判がある。
3年前、私たちの村の農民が、警察にアヘン畑を根絶された日に除草剤を飲んで自殺しました。残された彼の妻は2人の幼い子供を抱え、借金を返済するために土地を売らなければなりませんでした。彼女は夫を失い、土地を失い、すべてを失い、今は子供たちを育てるために臨時労働者として働いています。彼女の人生は本当に悲惨です。
それにもかかわらず政府だけではなく、武装勢力もこの根絶アプローチを取るケースがある。
カチン州では、2014年にカチン・バプティスト連盟(Kachin Baptist Convention)が、 カチン独立軍(KIA)の支援も受け、「禁止・除去」という意味の「パット・ジャサン(Pat Jasan)」運動を起こし、ケシ栽培を一掃し、薬物中毒者を時には殴打して私的逮捕し、強制的にリハビリセンターに送った。2016年2月にはケシ農家との間で衝突が起こり、双方で40人の負傷者が出る事件が起きた[1]。
タアン民族解放軍(TNLA)も伝統的に厳しい根絶アプローチを取っている。
代替開発アプローチ
[編集]1992年から1996年にかけて、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)は、シャン州東部で小規模なADプロジェクトを実施した。その後、UNDOCは、1996年からワ州で、2003年からワ州とコーカンでADプロジェクトを実施したが、2005年にUWSA幹部が麻薬密売容疑でアメリカ連邦裁判所に起訴されるに及び、プロジェクトは中止された。
1997年からは国際協力機構(JICA)が、アへンの代替作物としてソバの栽培プロジェクトを実施したが、市場までの距離と採算が合わないことが大きな障害となるという課題が生じ、2009年にコーカンで国軍とMNDAAとの間で戦闘が勃発し、2015年に再び激化したため、プロジェクトは中止に追い込まれた。
タイのメーファールアン財団(MFLF)は、2018年~2025年の予定でシャン州南部ピンラウン郡区でADプロジェクトを実施している。これは99村を対象に道路、灌漑、畜産基金、代替作物(コーヒー、トウモロコシ)などを支援し、麻薬問題解決と生計手段の提供を目指すものである。
ただし、 2013年から2017年にかけての麻薬撲滅に対する世界的支援に関するUNDOCの調査では、ミャンマーは年間340万~560万$を受け取っていたが、これはアフガニスタン(7,700万~9億9,400万$)、コロンビア(7,450万~1億5,360万$)、ペルー(2,600万~3,520万$)、ボリビア(50万~990万$)と比較するとかなり少ない[注釈 1]。その理由は、長年軍事政権が続き、経済制裁を受けてきたこと、1990年代以降、アメリカと欧州の麻薬市場におけるヘロインのほとんどがミャンマー産ではないことである[2][注釈 2]。
名前 | 備考 |
---|---|
①原料化学物質および機械の輸入業者 | 原料化学物質 (主にエフェドリン) および機械を中国またはインドから調達して、ミャンマーに輸送する責任を負う。逮捕される可能性はまずない。②中国人ビジネスマンが調達する。 |
②中国人ビジネスマン | 起業資金を調達し、適切な化学者の選定し、原料化学物質を輸入し、メタンフェタミンを製造し、その流通・販売ルートを確保する。ヘロインや他の合法的な事業を行っている人が多い。中国、タイ、ミャンマーいずれかの出身の比較的裕福な中国人が多い。 |
③保護者 | ②の中国人ビジネスマンに工場の場所と安全を提供して、課税することによ利益を上げる。自身も一定額の資金を投資することがある。各武装勢力がこの役割を担う。タイ側ではタイの軍人・警察幹部、政治家、政府高官らが⑦の宅配業者に輸送の安全を提供して、対価を得る。 |
④ミャンマーの運送業者 | ミャンマー国内の精製所から泰緬国境へのメタンフェタミンを輸送する。②の中国人ビジネスマンが調達する。 |
⑤ミャンマーの卸売業者 | ミャンマー側で卸売レベルでメタンフェタミンを売買する。利益率は高い。②の中国人ビジネスマンが調達する。 |
⑥運び屋 | 泰緬国境地域を越えてメタンフェタミンを輸送する。タイ北部に住む貧しい山岳少数民族や中国人が多く、時に彼らが住む村の村長が統括している。彼らにとっては大金に釣られてやるが、時に摘発され、命の危険を伴う。当局が摘発するのは彼らだけで、それより上の人々には捜査の手は及ばない。 |
⑦タイの運送業者 | 国境を越えたところでメタンフェタミンを輸送する。飛行機ではなく車を利用することが多い。タイ側の中国人ビジネスマンが調達する。 |
⑧タイの卸売業者 | タイ国内で卸売レベルでメタンフェタミンを小売業者に販売する。タイ側の中国人ビジネスマンが調達する。 |
⑨小売業者 | メタンフェタミンの錠剤をユーザーに販売する。小売業者はミャンマーとタイの双方にいる。利益率は高い。タイ側の中国人ビジネスマンが調達する。 |
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 資金の大部分はアメリカから提供され、ドイツとEUがそれに続く。
- ^ かつてはアメリカにあるヘロインのほとんどが黄金の三角地帯から密輸されているとされたが、1990年代にほとんどコロンビア産に取って代わられた。
- ^ 農家が外れている以外は、以前の登場人物と実質変化はない。
出典
[編集]- ^ “カチン州・麻薬撲滅団体のケシ畑撲滅活動 栽培者らの襲撃受け活動断念 ミャンマーニュース”. www.myanmar-news.asia. 2024年12月21日閲覧。
- ^ TNI 2021, pp. 55-58.
- ^ Bertil Lintner 1999, pp. 348–351.
参考文献
[編集]- Bertil Lintner『The rise and fall of the Communist Party of Burma (CPB)』Southeast Asia Program, Cornell Univ、Ithaca, NY、1990年。ISBN 9780877271239。
- Bertil Lintner (1999). Burma in Revolt: Opium and Insurgency since 1948. Silkworm Books. ISBN 978-9747100785
- Merchants of Madness: The Methamphetamine Explosion in the Golden Triangle, Silkworm Books, (2009), ISBN 978-9749511596
- The Golden Triangle Opium Trade: An Overview. Asia Pacific Media Services. (2000)
- The United Wa State Army and Burma's Peace Process. アメリカ平和研究所
- Bertil Lintner (2021), The Wa of Myanmar and China's Quest for Global Dominance, Silkworm Books, ISBN 978-6162151705
- Smith, Martin (1999). Burma: Insurgency and the Politics of Ethnicity. Dhaka: University Press. ISBN 9781856496605
- Ko-Lin Chin (2009). The Golden Triangle: Inside Southeast Asia's Drug Trade. Cornell Univ Pr. ISBN 978-0801475214
- Poppy Farmers Under Pressure. Transnational Institute. (2021)
- Ong, Andrew (2023). Stalemate: Autonomy and Insurgency on the China-Myanmar Border. Ithaca, NY: Cornell University Press. ISBN 9781501769139
- 鄧賢 著、増田政広 訳『ゴールデン・トライアングル秘史 ~アヘン王国50年の興亡』NHK出版、2005年。ISBN 978-4140810217。